コンプライアンス違反の事例から考えるリスクと3つの防止策
※2018年8月29日公開の記事に修正を加えています。
企業の社会的評価・信頼を得るには、コンプライアンス強化を図ることが必要不可欠であるといっても過言ではありません。
企業に対して、遵守が求められるコンプライアンスにはさまざまな種類があるなか、それらの内容について正しく理解して、適切な防止策を講じることが重要です。
この記事では、コンプライアンスとは何か、企業におけるコンプライアンス違反の事例と3つの防止策について解説します。
コンプライアンスとは
コンプライアンス(Compliance)とは、日本語で“法令遵守”を意味します。ビジネスにおいては、企業が法令に従いつつ、利潤を追求していくことを指します。
日本でも広く浸透している代表的な仕組みには、以下が挙げられます。
▼企業の法令順守をシステム化する仕組み(一例)
コーポレート・ガバナンス(企業統治)
会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。
引用元:金融庁『コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について 』
インターナル・コントロール(内部統制)
基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。
引用元:金融庁『I. 内部統制の基本的枠組み(案) 』
現在広く使われるコンプライアンスという言葉は、法令遵守はもちろん、社内規定や企業倫理、さらには社会倫理といった法律の枠を超えた意味を持つようになっています。
コンプライアンス違反の事例とそのリスク
コンプライアンスに違反してしまうと、消費者だけではなく、社会的信用が失われるおそれがあります。特に、コンプライアンスという概念が浸透した現代では、違反による問題がマスメディア・SNSで拡散されるリスクもあります。
ここでは、企業におけるコンプライアンス違反の事例を3つ取り上げます。
①社内・顧客情報漏洩
コンプライアンス違反として代表的なのが、個人情報の漏洩です。
社内で取り扱っている従業員の個人情報が漏洩すると、刑事上の罰金刑を科せられたり、従業員から損害賠償請求が行われたりするリスクがあります。
個人情報が漏洩する原因は、盗難やハッキングといった外部からの攻撃だけとは限りません。従業員による書類の持ち出し、USBメモリへのコピーなどのように、内部から漏洩することもあります。
個人情報の漏洩に関する事例には、以下が挙げられます。
▽従業員の個人情報を第三者に漏洩しそうになった事例
職場にクレジットカード会社に対し、カードホルダーから「請求に誤りがあるようなので確認して欲しい」との照会があり、クレジットカード会社が調査を行った結果、処理を誤った加盟店があることが判明した。クレジットカード会社は、当該加盟店に対し、直接カードホルダーに請求を誤った経緯等を説明するよう依頼しようと、カードホルダーの連絡先を伝えそうになった。従業員の親を名乗る人物から電話があり、子ども(従業員)と連絡を取るために携帯電話番号を教えてほしいと連絡があった。従業員が外出中であったことから、携帯電話番号を教えてしまいそうになった。
引用元:個人情報保護委員会『個人情報保護法 ヒヤリハット事例集』
従業員の個人情報をExcelやシステムなどで管理している場合、アクセス制限、ログ管理などのセキュリティ管理を行うことが重要です。
また、従業員の故意・過失による情報漏洩を防ぐために、個人情報の取扱いについて社内ルールを定めて、従業員への周知・意識強化を行うことも大切です。
出典:個人情報保護委員会『個人情報保護法 ヒヤリハット事例集』
②ハラスメント
職場でセクシャルハラスメント(セクハラ)・パワーハラスメント(パワハラ)・マタニティハラスメント(マタハラ)など、ハラスメントが発生するケースがあります。ハラスメントが発生した場合、被害者から損害賠償を請求されたり、裁判を起こされたりする可能性があるほか、企業の信頼性やイメージの低下につながるリスクもあります。
▼ハラスメントを行った上司に従業員が損害賠償を求めた事例
Y1社の労働者であったXが、上司であったY2からパワハラを受けたことにより精神疾患等を発症したとして、Y1社及びY2に対し、不法行為(民法709条、715条、719条)に基づき、損害の賠償を求めるとともに、Y1社がXにした休職命令及びその後の自然退職扱いは無効であるなどとして、Y1社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び自然退職後の賃金の支払を求めた。
一審は、Y1社及びY2のXに対する慰謝料70万円。控訴審においては、一審判決が変更され、慰謝料が増額(150万円)。その他の原告の請求については、一審の判決が支持され、原告の控訴が棄却。
(2013年2月27日 東京公判の内容)
引用元:厚生労働省雇用環境・均等局『パワーハラスメントの定義について』
職場でハラスメントを起こさせないためには、上司・管理者・従業員といった組織全体の意識強化が必要です。また、トラブルが大きくなる前に手を打てるように、日頃から従業員が相談しやすい環境をつくることも重要といえます。
出典:厚生労働省雇用環境・均等局『パワーハラスメントの定義について』
③長時間労働
従業員の労務管理で起こりやすいコンプライアンス違反には“長時間労働”も含まれます。
従業員に過度な長時間労働を行わせたり、残業代を支払わなかったりすることで、企業が労務違反に問われるケースがあります。
労務違反が発生すると、企業に罰則を科せられる可能性があるほか、従業員の離職や社会的信頼の失墜につながるリスクがあります。
▼労務違反によって企業名が公表された事例
違反法条:労働基準法第32条
労働者1名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせたもの
引用元:厚生労働省労働基準局監督課『労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和3年3月1日~令和4年2月28日公表分)』
労務違反を回避するためには、従業員の勤務時間を正確に把握するとともに、シフト作成時に違反リスクがないか確認できる体制が必要です。
労務コンプライアンスについては、こちらの記事もご覧ください。
出典:厚生労働省労働基準局監督課『労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和3年3月1日~令和4年2月28日公表分)』
コンプライアンス違反を回避するための3つの防止策
企業のコンプライアンス違反は、法的責任の追及だけではなく、企業イメージの低下による客離れなどの影響をもたらすリスクがあります。
特に、インターネットの利用が当たり前となった現代では、SNSの浸透によって、小さな事件でも情報が拡散されやすくなりました。
これらのリスクを防ぎながら、従業員が快適に働ける環境を整えるには、コンプライアンス違反を未然に防ぐための体制づくりが必要です。ここからは、コンプライアンス違反を回避する3つの防止策を紹介します。
①社内ルールの作成・周知
コンプライアンスを強化するために、社内ルールを作成してすべての従業員に周知する必要があります。
企業としてコンプライアンス遵守の重要性を周知することで、社員の意識形成につながり、問題発生の抑制につながります。
また、コンプライアンス遵守の意識が社内全体に根付けば、違反が発生した場合に周囲からの相談・報告を促す効果も期待できます。問題の初期段階で対処することで、裁判に移行したり、情報が拡散されたりするのを防げることもあります。
▼社内ルールを作成・周知する方法
- コンプライアンスのテーマごとに社内ルールをマニュアル化する
- コンプライアンス違反者への措置を就業規則に定める
- 被害者への相談窓口について書面で周知する
- ルールが適正に運用されているか、従業員や管理者へのアンケート・ヒアリングを通じて調査を行う
②属人化の解消
従業員に不正行為・ハラスメント行為を働かせないため、また、業務負担の偏りをなくすために、風通しのよい職場をつくることが重要です。
業務が属人化してしまうと、周囲が行動を把握しづらくなることから、ミスや不正行為の隠ぺいが起こりやすくなります。そのほか、担当者間でフォローし合える体制が整っていないことにより、長時間労働につながるリスクもあります。
これらのリスクを防ぐために、社員・部署間で業務を可視化したり、情報を共有できる体制を構築したりして、属人化を解消することが重要です。
業務内容や従業員の行動が社内で共有されることで、ミス・不正行為をチェックする体制を構築できるため、問題を早期発見できます。さらに、部署やチームで仕事量を適正に分配できるようになることで、長時間労働の防止にもつながります。
▼属人化を解消する方法
- 業務フローをマニュアル化して、メンバー間でチェックする体制を整備する
- 業務に必要なデータをITツールで一元管理して、社内で共有する
③社内教育の実施
従業員一人ひとりのコンプライアンスに対する意識を高めるためには、社内教育を実施することも一つの方法です。
社内教育によって企業のコンプライアンス指針や行動規範などを認識してもらうことで、従業員に適正な判断・行動を促す効果が期待できます。
コンプライアンスの違反事例を基に教育を行うことにより、第三者の目線に立って問題を捉えること、自分の行動を見直すきっかけになります。
社内研修を実施する際は、法令遵守に関する内容だけではなく、個人情報の保護や人権の尊重など、テーマごとに教育するのが有効です。
▼社内教育の実施方法
- 入社時の研修に、eラーニングによるコンプライアンス基礎学習を取り入れる
- 社内報でコンプライアンスのテーマに関するリーフレットを配布する
- 定期的に上司・管理者向けのコンプライアンス教育を実施する
まとめ
この記事では、コンプライアンス違反とその防止策について、以下の項目で解説しました。
- コンプライアンスとは何か
- コンプライアンスに違反した場合のリスク
- コンプライアンス違反の事例とそのリスク
- コンプライアンス違反を回避するための3つの防止策
コンプライアンスに違反すると、法令上の罰則・罰金に加えて、社会的信用の低下や売り上げの落ち込みなどのリスクが伴います。
これらのリスクを避けるには、企業と従業員が一体となってコンプライアンスの意識を高めるとともに、違反を発生させない風通しのよい職場環境づくりが必要です。
コンプライアンスにはさまざまな種類がありますが、特に、従業員のシフト管理に関わるものが労務コンプライアンスです。
長時間労働や残業を防ぎ、労務コンプライアンスを強化するには、従業員一人ひとりの労働時間を把握して、シフト作成時の労務違反がないかチェックできる体制が求められます。
シフト作成・管理システムの『シフオプ』では、法定労働時間や残業ルールに違反したシフトに対して警告が表示されるため、労務違反を未然に防止できます。シフト管理で労務コンプライアンスを強化したい場合は、ぜひ一度シフオプまでお問合せください。
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