
企業コンプライアンスを強化するポイント。注目される背景や重要性も解説
※2024年6月7日更新
近年、コンプライアンスという概念が企業や国民にとって当たり前のこととして捉えられるようになりました。一方で、長時間労働による過労死や職場におけるハラスメントなどの企業によるコンプライアンスの問題がメディアで取り上げられることも少なくありません。
社会的責任(CSR)に対する関心が高まるなか、コンプライアンスは企業の価値に大きく関わります。人事・労務部門においては、働きやすい職場づくりや安定した事業活動の継続に向けてコンプライアンスの強化に取り組むことが重要です。
この記事では、コンプライアンスの重要性や代表的な違反例、企業がコンプライアンスを徹底するポイントについて解説します。
なお、サービス残業に関するコンプライアンス違反については、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。
また、コンプライアンス違反の原因や事例については、こちらをご一読ください。
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コンプライアンスとは
コンプライアンスとは、“法令遵守”を意味する言葉です。法律を守ることに加えて、倫理・道徳・常識といった社会的規範に照らし合わせて、それに反する行動を取っていないかという意味も含まれます。
なかでも企業に対しては、事業活動による利益だけを追及するのではなく、従業員や地域社会、環境などに配慮して責任ある行動をとることが求められます。このように企業が守るコンプライアンスは“企業コンプライアンス”とも呼ばれます。
▼企業コンプライアンスの領域
領域 |
対象 |
1.法規範 |
労働基準法や民法、刑法などの法律・条例 |
2.社内規範 |
社内規定や業務マニュアル |
3.倫理規範 |
職務上守らなければならない企業倫理・道徳規範 |
企業コンプライアンスの領域は法律の遵守にとどまらず、社内規範や倫理規範まで広がっており、対応が求められる範囲は多岐にわたります。
企業コンプライアンスが注目される背景
企業コンプライアンスが注目される背景には、以下が挙げられます。
▼企業コンプライアンスが注目される背景
- 社会的責任に対する意識の変化
- 法規制の厳格化
- 社会のグローバル化 など
近年、組織ガバナンス(※1)の在り方を疑われる不正・不祥事の発生をはじめ、環境問題の深刻化、労働時間や職場環境に関するトラブルなどが見られており、企業の社会的責任に対する意識が高まっています。
企業がステークホルダー(※2)からの信用を獲得して事業の成長を図るためには、社会的な公正に配慮した責任ある行動が求められています。
また、労働基準法の改正による働き方改革や内部統制基準の改訂によるITに関するセキュリティ管理体制の強化など、企業に対する法規制が厳格化されたことで、これまで以上に幅広い法令への対応が必要になっています。
さらに、企業のグローバル化によって多種多様な価値観が取り入れられたことにより、世界的な環境問題や人権問題への配慮も求められています。企業が健全で安定的な経営を続けるには、社会性・人間性を重視する新たな社会との関係構築を目指していくことが欠かせません。
※1・・・組織ガバナンスとは、健全で公正な組織運営が成されるための、統制する仕組みのこと。
※2・・・ステークスホルダーとは、企業の運営に関して直接的・間接的に影響を受ける利害関係者のこと。
出典:厚生労働省『「働き方改革」の実現に向けて』/金融庁『財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)』
企業コンプライアンスの重要性
企業の経営に対する信頼性を高めて持続的な成長につなげるために、企業コンプライアンスを徹底することが重要です。
企業コンプライアンスに違反すると、社会的信用の失墜やイメージの低下につながる可能性があるほか、損害賠償請求が求められたり、刑事罰で起訴されたりするリスクがあります。内容によっては企業の存続に関わる事態となる可能性もあり、企業とステークホルダーにとって大きな影響が及ぶことがあります。
このようなリスクを防ぐためには、法律や社会規範、社内規程などのルールに沿って企業活動を維持できる体制を整備することが必要です。企業コンプライアンスを守ることは、リスクマネジメントの観点だけでなく、社会的評価の向上や人材採用の促進などにもよい影響をもたらします。
企業コンプライアンスの違反例
企業コンプライアンスの代表的な違反例には、次の3つが挙げられます。
➀経営・会計に関する違反
経営・会計に関するコンプライアンス違反には、組織内部あるいは関係者による法令違反や不正行為などが挙げられます。
▼経営や会計に関する違反例
- 脱税
- 粉飾決算
- 横領
- 不正会計 など
経営・会計に関する法令違反や不正行為を防ぐには、職責の分担と監視活動などによって業務の透明性を確保することが必要です。
②社会的信用に関する違反
企業や従業員の人的ミスまたは故意によって社会的信用が失われるようなコンプライアンス違反を招くケースもあります。
▼社会的信用に関する違反例
- 談合
- 機密情報・個人情報の漏えい
- 偽装表示
- 製品不良 など
このようなリスクを防ぐには、情報資産やセキュリティに関するリスク管理を徹底するとともに、内部の不正行為を防ぐために社内の規則や監視の仕組みを整備することが重要です。
③雇用・労働に関する違反
雇用契約や労働時間、職場環境などに関するコンプライアンス違反があります。
▼雇用・労働に関する違反例
- 賃金や残業代の不払い
- 年次有給休暇の未付与
- 上限を超える時間外労働
- 職場でのハラスメント
- 年少者の深夜労働
- 就労が認められていない外国人労働者の雇用 など
労働契約の内容と実際の労働条件に相違があったり、労働基準法で規定された残業代を支払わなかったりすると、法令違反となります。また、性別や人格などの業務上必要のない言動、不当・不平等な扱いをすることはハラスメントに当たります。
雇用・労働に関するコンプライアンスは、現場の管理体制を強化したり、企業風土を改善したりする取り組みによって防止できるケースもあります。
なお、そのほかの違反例やリスクについてはこちらの記事で解説しています。
残業時間や有給休暇、有期雇用契約に関するルールについては、こちらの記事をご確認ください。
企業コンプライアンスを徹底するためのポイント
法令違反によるリスクを防いで、企業価値の向上や職場環境の改善を図るには、企業コンプライアンスを徹底するための対策が必要です。
①コンプライアンス規程を作成する
企業コンプライアンスに関する行動指針や具体的な実務規定などをまとめた規程を作成します。
経営者がコンプライアンスの重要性を認識していても、取り組みの方針や行動規範が共有されていない場合、組織全体でリスク管理を行うことが難しくなります。
遵守事項や責任の範囲などを規程にまとめて明文化すると、コンプライアンスの共通認識を高め、リスク管理の徹底につなげることが可能です。
▼コンプライアンス規程で定める事項
- コンプライアンス規程を設ける目的
- 適用される従業員の範囲
- 遵守事項(実務規定、違法行為の禁止、情報取り扱いのルール)
- 違反が発生した場合の報告者と責任者 など
②組織全体の意識を高める
企業コンプライアンスを徹底するには、経営陣が主体となって組織全体の意識向上を図ることが重要です。
人的ミスによる法令違反や不正行為は、従業員の企業コンプライアンスに対する意識の低さから引き起こされる場合があります。組織内でコンプライアンスの重要性や違反した場合のリスク、ペナルティなどについて組織内で共有することで、違反行動の抑止につながります。
▼組織の意識向上を図る方法
- コンプライアンス管理体制を示したフレームワークを作成して、社内で共有する
- 過去の不祥事や同種事案を社内で共有して、継続的な注意喚起を行う
- 役職や業務内容に応じたコンプライアンス研修を定期的に実施する など
最近ではコンプライアンス研修を実施する企業も増えています。従業員を集めて学ぶ機会を設けることで意識の底上げを図れます。
出典:金融庁『コンプライアンス・リスク管理に関する傾向と課題』
③内部統制を強化する
内部統制とは、健全な経営活動を行うための社内ルールや仕組みを整備して、有効に機能するように運用することです。
経営陣のコンプライアンスに関する方針・対策を組織全体に浸透させるためには、役職員や中間管理職の姿勢が重要となります。
内部統制を強化して、役職員と中間管理職による社内の指揮・監督機能を整備することで、不祥事の防止やリスク管理の徹底につながります。
▼内部統制を見直す方法
- 役職や部署、業務内容に応じて適切な人事・報酬制度を策定する
- コンプライアンス違反行為に対する減点評価・罰則を設ける
- 内部通報制度を導入する(人事部所轄の窓口、外部有識者の窓口)
- 社内のチェック体制、内部監査役によるモニタリングを実施する など
④従業員の情報を一元管理する
雇用契約や労働時間、人事評価などに関するコンプライアンス違反を防ぐには、従業員の情報を一元管理できる体制をつくることも有効です。
▼従業員管理の項目
項目 |
概要 |
雇用管理 |
雇用形態や労働契約の内容、入社・退社の手続き、社会保険などを管理する |
人事管理 |
採用時期や所属部署、役職、異動履歴、人事評価などを管理する |
勤怠管理 |
シフトの内容や出勤・退勤の時刻、残業時間、有給休暇などを管理する |
給与管理 |
給与の計算や支払いの処理、明細の作成、各種手当の付与などを行う |
スキル管理 |
保有資格や研修の実施状況、人材育成の進捗管理などを行う |
雇用契約や人事制度に関する法律は、改正によって内容が変わる可能性があります。改正が行われるたびに各従業員の対応を見直すのには労力がかかるほか、漏れ・ミスが発生することも考えられます。
従業員の情報を一元管理できるシステムを活用することで、最新の法律に基づいて各従業員の手続きや事務処理、対象者への連絡などを行いやすくなります。
⑤シフト管理体制を見直す
労務管理に関するコンプライアンスを徹底するには、紙媒体や表計算ソフトで行っていたシフト管理の体制を見直すことが有効です。
従業員の労務管理では、労働時間や休日、賃金の支払いなどを法令に基づいて管理する必要があります。しかし、勤務時間・曜日が変動するシフト制を採用している職場では、従業員一人ひとりの労務管理が煩雑化しやすくなります。
コンプライアンス違反を未然に防ぐには、労働時間の可視化や法令違反のチェックが行えるツールを活用して労務管理を行うことがポイントです。
シフト管理システムの『シフオプ』は、シフトの収集・作成・共有をオンラインで行えます。シフトの作成をスムーズに行えるほか、労務管理に役立つ機能が備わっており、企業コンプライアンスの徹底につながります。
▼シフト作成・管理システムのシフオプ
シフトを作成する段階で、法定労働時間の超過や休日数の不足などの法令違反に対してアラートが表示されるため、長時間労働を未然に防止できます。また、個別のシフト条件を設定することで、従業員一人ひとりの働き方や事情に配慮した人員配置を行いやすくなります。
詳しくは、こちらをご確認ください。
まとめ
この記事では、コンプライアンスについて以下の内容を解説しました。
- コンプライアンスの概要
- 企業コンプライアンスが注目される背景と重要性
- 企業コンプライアンスの代表的な違反例
- 企業コンプライアンスを徹底するためのポイント
社会全体でコンプライアンスへの意識が高まるなか、企業には法令遵守はもちろんのこと、社内規範の遵守や社会的責任を果たすための行動が求められます。
企業コンプライアンスを徹底するには、コンプライアンス規程の作成や内部統制の強化、研修の実施などによって組織全体の管理体制を強化することが重要です。
また、従業員の情報を一元管理したり、システムを活用してシフト管理を行ったりすることで法令への対応がしやすくなり、漏れ・ミスの防止につながります。
シフト管理システムの『シフオプ』を活用すると、シフトを作成する段階でコンプライアンス違反を発見して修正を行えるようになり、労務管理体制の強化を図れます。詳しくは、こちらの資料をご覧ください。