有期雇用契約に関する3つの禁止事項と締結時の注意点

有期雇用契約に関する3つの禁止事項と締結時の注意点

従業員を雇用する選択肢の一つとして、有期雇用契約という形態があります。有期雇用契約を締結するケースとしては、職場の人手不足への対応や事業拡大、繁忙期における増員対応などが挙げられます。

有期雇用契約には、労働契約法やパートタイム・有期雇用労働法においてさまざまな禁止事項があります。法令違反や従業員とのトラブルを防ぐために、人事・労務部門では、有期雇用契約で定められている禁止事項、注意点について確認しておくことが重要です。

この記事では、有期雇用契約の概要をはじめ、契約に関する禁止事項や注意点について解説します。


目次[非表示]

  1. 有期雇用契約とは
  2. 有期雇用契約に関する禁止事項
  3. 有期雇用契約の注意点
  4. まとめ


有期雇用契約とは

有期雇用契約とは、半年や1年など、契約期間を定めて締結する労働契約のことです。有期雇用契約で働く従業員は、有期雇用労働者や契約社員、嘱託社員とも呼ばれています(以下、有期雇用労働者)。

有期雇用契約の期間は、『労働基準法』第14条において原則3年と定められています。ただし、専門的な知識を有する労働者や、満60歳以上の労働者との契約の場合は、契約期間の上限は5年とされています。


▼労働基準法 第14条

第十四条 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。
一 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第四十一条の二第一項第一号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
二 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)

引用元:e-Gov法令検索『労働基準法


契約期間が満了するまでの間、やむを得ない事情がない限りは、労働者を解雇することはできません。

出典:e-Gov法令検索『労働基準法』/厚生労働省『労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール』『無期転換ルール』/政府広報オンライン『2021年4月1日からパートタイム・有期雇用労働法が中小企業も適用に。



有期雇用契約に関する禁止事項

有期雇用契約には、無期雇用契約への転換や雇い止め()、待遇などに関する禁止事項があります。

※雇い止めとは、有期雇用契約の期間が満了した際に、使用者が更新を拒否して雇用契約を終了させること。


①無期雇用契約への転換制限の禁止

労働契約法』第18条では、有期雇用契約が通算5年を超えた場合に、従業員の申し込みによって無期雇用契約への転換が定められています。

無期雇用契約は、契約期間の定めがない労働契約のことで、いわゆる“正社員”として雇用する形態です。

今日では、有期雇用労働者の約3割が通算5年を超えて契約を更新しており、実質的に会社の恒常的な労働力として定着していると考えられます。

有期雇用労働者を無期転換することは、事業場の実態に合った措置といえるほか、長期的かつ持続的な視点で人材育成につながるという利点があります。

また、有期雇用労働者にとっても、雇用の安定化によって意欲的かつ安心して働ける環境が構築されます。無期転換への申し込みがあった場合には、その時点での有期雇用契約が終了する日の翌日から無期雇用契約に転換されることになります。


▼無期転換の仕組み

無期転換の仕組み

画像引用元:厚生労働省 『無期転換ルールの概要


なお、使用者が無期転換の申し込みを断ることはできません。

出典:厚生労働省『無期転換ルールについて』『無期転換ルールの概要』『メリットと意義』『無期転換ルールハンドブック


②合理的理由のない雇い止めの禁止

労働契約法』第19条では、有期雇用労働者に対する合理的理由のない雇い止めを禁止すると定められています。

労働者保護の観点から、下記のケースに該当する場合には、使用者による雇い止めは認められません。従来と同一の労働条件で、有期労働契約の更新が必要です。


▼雇い止めが認められないケース

  • 過去に繰り返し更新されており、実質的に無期雇用契約と変わらない
  • 雇用の継続を期待することが合理的と考えられる
  • 客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当であるといえない


出典:『労働契約の終了に関するルール』『Ⅱ「雇止め法理」の法定化(第19条)』/e-Gov法令検索『労働契約法


③不合理な待遇差の禁止

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』第8条では、有期雇用労働者と正社員との間に不合理な待遇差を設けることが禁止されています。

正社員との賃金や福利厚生などの待遇差に不合理な差がある場合には、改善が必要です。待遇差が不合理かどうかについては、業務内容や責任の程度、配置変更の範囲などの事情を考慮して、待遇差が適切と認められるかによって判断されます。

不合理な待遇差が禁止される項目には、以下が挙げられます。


▼待遇差が禁止される項目例

  • 基本給、賞与(ボーナス)
  • 役職手当、食事手当などの手当
  • 福利厚生(給食施設、休憩室、更衣室、慶弔休暇など)
  • 教育訓練


また、従業員から説明を求められた場合には、正社員との待遇差の内容・理由について説明することも義務づけられています。


出典:政府広報オンライン『2021年4月1日からパートタイム・有期雇用労働法が中小企業も適用に。』/厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』/e-Gov法令検索『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律



有期雇用契約の注意点

有期雇用契約を締結する際は、いくつか注意点もあります。ここでは、そのうちの2つを例に挙げて紹介します。


①雇い止めの予告

有期雇用契約において、雇い止めが認められる場合であっても、30日前までに従業員に予告しなければなりません。

基本的に、契約期間が終了すれば自動的に雇い止めとなります。ただし、3回以上契約更新している場合や、1年を超えて継続勤務している従業員に対しては、契約更新をしない旨について事前の予告が必要です。

出典:厚生労働省『労働契約の終了に関するルール


②社会保険への加入

有期雇用契約で従業員を雇用する場合、一定の雇用見込みがあり、所定労働時間や賃金などの要件を満たす場合には、社会保険への加入が必要です。

社会保険(厚生年金保険や健康保険)の加入対象となるのは、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上の従業員です。

ただし、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満であっても、以下の条件を満たす場合には、社会保険への加入が必要です。また、従業員数101人以上で働く事業場が対象です。


▼社会保険の加入が必要な従業員の要件

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上
  • 2ヶ月を超える雇用見込みがある
  • 学生ではない


出典:政府広報オンライン『パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入により手厚い保障が受けられます。』/日本年金機構『令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大



まとめ

この記事では、有期雇用契約について以下の内容を解説しました。


  • 有期雇用契約の概要
  • 有期雇用契約に関する禁止事項
  • 有期雇用契約の注意点


有期雇用契約は、契約期間に定めのない労働契約のことで、契約期間は原則3年とされています。ただし、更新によって通算5年になる場合は、従業員からの申し込みによって、正社員への無期転換を行う必要があります。

また、使用者による不合理な雇い止めをしてはならない、正社員との待遇差を設けてはならないといった禁止事項も設けられています。有期雇用契約をこれから締結する、または有期雇用労働者がいる会社では、法律を踏まえて、自社の運用体制を整備することが重要です。

なお、有期雇用労働者の労務管理にあたっては、契約期間や労働時間、賃金などを正確に把握しておくことが欠かせません。

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パートタイム・有期雇用労働法についてはこちらの記事で解説しています。併せてご一読ください。

  【2021年4月全面施行】パートタイム・有期雇用労働法の目的や改正内容とは 働き方改革関連法の施行により、『短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下、パートタイム労働法)』が、『パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)』(以下、パートタイム・有期雇用労働法)に改正され、2020年4月1日に施行されました。 猶予期間が設けられていた中小企業においても、2021年4月1日から全面施行されています。従業員を雇用している事業主の方は、改正内容について把握しておくことが重要です。 この記事では、パートタイム・有期雇用労働法の目的や改正内容などについて解説します。 シフオプ


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