労働基準法で定められた減給の限度額とは? 減給を行えるケースも解説

労働基準法で定められた減給の限度額とは? 減給を行えるケースも解説

企業では、人事評価や就業規則の違反などによって、従業員の給与を減給するケースがあります。

労働基準法では、減給できる金額の限度が定められており、これに反して給与を大幅に下げた場合には、罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。

また、減給は従業員とのトラブルにもつながりやすくなります。企業の人事・労務部門では、減給できる限度額・条件について理解したうえで、労働条件や就業規則に規定しておくことが重要です。

この記事では、労働基準法における減給の定義をはじめ、減給の限度額や減給を行えるケースについて解説します。


目次[非表示]

  1. 減給の定義
  2. 懲戒処分による減給の限度額
  3. 減給を行えるケース
  4. まとめ


減給の定義

減給にはさまざまな理由がありますが、限度額が法律によって規制されているのは、懲戒処分による減給です。

減給は、無条件かつ企業が一方的に行うことはできません。『労働基準法』第91条では、減給の制裁を定める場合の限度額が規制されています。

また、懲戒処分による減給を行うには、就業規則への記載があること、労使間で合意している状態であることが条件となります。従業員が何らかの行為を働き、あらかじめ定めている就業規則の懲戒事由に該当した場合には、限度額の範囲内で減給することが可能です。

このような限度額の規制は、懲戒処分による制裁として減給を実施する場合のみ適用されます。減給する理由が懲戒処分以外の場合は、限度額の規制は適用されません。

出典:e-Gov法令検索『労働基準法



懲戒処分による減給の限度額

懲戒処分による減給の限度額は、『労働基準法』第91条において、以下のように定められています。


第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』第91条


これは、1回の懲戒処分に対する減給は平均賃金の1日分の半額以下にして、減給理由が複数ある場合は、減給の総額は1回の賃金支払いにおいて10分の1を超えないようにします。

減給の限度額は次のように計算します。


▼減給の限度額の計算(月給20万円の従業員に対して減給処分をした場合)

月末締めの翌月10日に給与を支払う場合に、7月25日に減給処分した。


▽平均賃金の計算
平均賃金は、減給処分直前の賃金締め切り日から3ヶ月間(4月1日~6月30日)の賃金総額を総日数で割る。


①賃金総額:20万円×3ヶ月=60万円


②総日数:30日+31日+30日=91日


③平均賃金:60万円÷91日=6,593円


▽平均賃金の最低額と比較する

平均賃金の最低額は、賃金総額を出勤日数(62日)で割り、0.6を掛ける。


④平均賃金の最低額:60万円÷62日×0.6=5,806円


この場合、③で算出した平均賃金6,593円は、④平均賃金の最低額5,806円を上回っているため、③の6,593円を平均賃金として計算する。


▽限度額の計算

減給の限度額は、③平均賃金を2で割る。


⑤減給の限度額:6,593円÷2=3,297円



減給を行えるケース

懲戒処分以外で減給を行えるケースには、以下の2つが挙げられます。

なお、前述した限度額の規制は適用されませんが、減給後の賃金が最低賃金法で定める最低賃金を下回らないように注意します。


①労使間の合意がある

労使間の合意が成立している場合は、減給が可能です。

労働契約法』第8条では、労使間の合意によって労働条件を変更できると定められています。また、同法第9条では、労使間の合意を得ていれば、給与に関する就業規則を変更することも可能だとされています。


第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

引用元:e-Gov法令検索『労働契約法』第8条


第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

引用元:e-Gov法令検索『労働契約法』第9条


ただし、同法第10条において、就業規則の変更は、従業員との合意がなくても、やむを得ない事情があり社会通念上相当であるとされる場合には、減給が認められています。


第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

引用元:e-Gov法令検索『労働契約法』第10条


出典:e-Gov法令検索『労働契約法


②就業規則に規定している

就業規則に減給に関する規定がされている場合、その規定に沿って減給を行うことが可能です。

就業規則に定める減給に関する規定には、以下が挙げられます。


▼就業規則での減給規定の例


規定の例
人事評価規定
一定の評価基準に満たない場合に規定に基づいた減給を行う
降格
職務等級ごとに賃金・手当の金額を設定して、等級に基づいた給与を支払う
業績給
業績に対する評価基準に基づいて給与を決定する



まとめ

この記事では、減給について以下の内容を解説しました。


  • 減給の定義
  • 懲戒処分による減給の限度額
  • 減給を行えるケース


事業者は、懲戒処分による減給だけでなく、労使間の合意・就業規則の規定に沿って減給できます。ただし、減給は従業員とのトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。

企業の人事・労務部門が減給を行う際は、労働条件や就業規則、限度額について確認しておくことが重要です。なお、法令に則った減給を行う際は、賃金総額や平均賃金の算出が必要になります。

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