
【2021年4月全面施行】パートタイム・有期雇用労働法の目的や改正内容とは
※2019年1月28日公開の記事に修正を加えています。
働き方改革関連法の施行により、『短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下、パートタイム労働法)』が、『パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)』(以下、パートタイム・有期雇用労働法)に改正され、2020年4月1日に施行されました。
猶予期間が設けられていた中小企業においても、2021年4月1日から全面施行されています。従業員を雇用している事業主の方は、改正内容について把握しておくことが重要です。
この記事では、パートタイム・有期雇用労働法の目的や改正内容などについて解説します。
なお、パートタイム労働者の休日出勤に関する賃金や手当などについては、こちらの記事で解説しています。
目次[非表示]
パートタイム・有期雇用労働法とは
パートタイム・有期雇用労働法とは、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との不合理な待遇差をなくして、雇用形態にかかわらず働きやすい環境をつくるための法律です。
従来のパートタイム労働法では、多様化する雇用形態とともに、非正規社員に対する待遇が必ずしも働きに見合っている状態ではないという問題がありました。
このような問題を解消するために、働き方改革によってパートタイム・有期雇用労働法に改正されました。
この法律の対象者には、パートタイム労働者だけでなく、有期雇用労働者も含まれます。
パートタイム労働者とは、1週間の所定労働時間が正社員に比べて短い労働者のことです。また、有期雇用労働者とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者を指します。
以下に当てはまる労働者は、『パートタイム・有期雇用労働法』の対象です。
▼パートタイム・有期雇用労働法の対象者
- パートタイマー
- アルバイト
- 嘱託社員
- 契約社員
- 臨時社員
- 準社員
出典:厚生労働省『パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために』『パートタイム・有期雇用労働法が施行されます』『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
パートタイム・有期雇用労働法の目的
近年、少子高齢化に伴い労働力人口が減少しているなか、パートタイム労働者や有期雇用労働者の数は増加傾向にあります。
パートタイム労働者は雇用者全体の約3割、有期雇用労働者は4分の1程度を占めており、国の経済活動を担う重要な働き手となっています。
また、パートタイム労働者・有期雇用労働者のうち、女性が約6~7割、65歳以上の高齢者が約2割を占めている状況です。このような非正規社員は、育児や介護などの多様なニーズ・事情を抱えているケースも多く、労働時間の制約から正社員として働く機会を得られない方もいます。
パートタイム・有期雇用労働法は、多様な雇用形態・就業形態で働く労働者が、個々の能力・意欲を最大限に発揮して、働きや貢献に応じた待遇を得られるような雇用環境を整備することを目的としています。
従業員を雇用する事業主は、正社員との不合理な待遇差が生じないように、法令に基づいた適切な雇用管理を行うことが必要です。
出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法が施行されます』『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
パートタイム・有期雇用労働法の内容
パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイム労働者や有期雇用労働者の雇用にあたって、事業主にさまざまな義務や取組みを定めています。
ここでは、パートタイム・有期雇用労働法で定められている基本的な法令内容について解説します。
労働条件の明示・説明義務
パートタイム労働者・有期雇用労働者を雇い入れる際は、文書の交付や電子メールなどによって労働条件を明示する義務があります。
▼明示が義務づけられている内容
- 契約期間
- 有期労働契約を更新する場合の基準
- 仕事の場所・内容
- 始業・終業の時刻、時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇
- 賃金の決定、計算、支払い方法
- 賃金の締切、支払い時期
- 昇給、賞与の有無
- 退職に関する事項
- 退職手当の有無
- 相談窓口
また、雇用管理の改善措置や、待遇の決定にあたって考慮した事項などについても、従業員に説明する義務があります。パートタイム労働者・有期雇用労働者から求められた場合は、正社員との待遇差の内容や理由などについても説明が必要です。
出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
均等・均衡待遇の確保
企業・事業主は、正社員との働き方の違いに応じて、均等・均衡な待遇を確保する必要があります。
パートタイム労働者・有期雇用労働者の職務内容・配置変更の範囲などが正社員と同一の場合には、給与や賞与などのすべての待遇において差別的な取扱いをしてはいけません。
出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
正社員への転換の推進
事業主は、パートタイム労働者や有期雇用労働者に対して、正社員への登用制度を整える義務があります。
▼正社員への転換措置
- 社内公募や求人で正社員を募集する場合、すでに雇っているパートタイム労働者・有期雇用労働者にその旨を周知して、応募機会を与える
- 正社員転換のための試験制度を設ける
このような措置は、パートタイム労働者・有期雇用労働者のモチベーションを高めて、その能力を有効に発揮できるようにすることが目的です。
出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
苦情・紛争に対する援助
パートタイム労働者・有期雇用労働者から苦情の申出を受けた場合には、労働者と事業主の間で自主的な解決を図るよう努める必要があります。
画像引用元:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
たとえば、事業所内の苦情処理機関を活用するほか、人事担当者が苦情処理を担当するなどの方法が挙げられます。また、自主的な解決が難しい場合は、都道府県労働局長へ援助を求めて助言や指導、勧告などを受けることが可能です。
出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
厚生労働大臣による助言・指導・勧告
パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイム労働者・有期雇用労働者の雇用管理の改善が必要と認められる場合に、事業主に対して報告を求めたり、助言・指導・勧告を行ったりできることが規定されています。
事業主が報告の求めに応じない、または虚偽の報告を行った場合には、20万円以下の過料が発生する恐れがあります。
また、厚生労働大臣による勧告に従わなかった場合には、企業名が公表される可能性があるため注意が必要です。
出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
【2021年4月全面施行】法改正のポイント
働き方改革関連法の施行に伴い、2021年4月1日から施行されたパートタイム・有期雇用労働法の改正ポイントについて解説します。
①均衛待遇規定・均等待遇規定の整備
正社員と非正規社員との間で不合理な待遇差を設けることを禁止するために、判断基準となる均衛待遇規定・均等待遇規定が法整備されました。
▼均衛待遇規定・均等待遇規定の内容
均衛待遇規定(法第8条) |
以下の内容を考慮して不合理な待遇差を禁止する
|
均等待遇規定(法第9条) |
以下が同じ場合において、差別的な取扱いを禁止する
|
また、どのようなケースが不合理な待遇差にあたるのかを具体的に示した『同一労働同一賃金ガイドライン』が策定され、取扱いの判断基準がより明確化されています。
なお、各規定の法改正前・法改正後の適用範囲は、以下のように変わっています。
▼均衛待遇規定・均等待遇規定の適用範囲
画像引用元:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法が施行されます』
出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法が施行されます』『同一労働同一賃金ガイドライン』
②説明義務の強化
法改正によって、事業主による待遇に関する説明義務がさらに厳しく規定されています。
▼説明義務の適用範囲
画像引用元:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法が施行されます』
これまでは、パートタイム労働者や派遣社員に対してのみ、雇入れ時の労働条件の説明義務、待遇決定に関する考慮事項の説明義務が定められていました。
改正後は、有期雇用労働者に対しても上記の説明義務が加えられています。また、非正規社員から求めがあった場合には、正社員との待遇差の内容・理由についても説明義務を果たす必要があります。
さらに、説明を求めた非正規社員に対して、不利益な取扱いを禁止する法律も新たに規定されているため注意が必要です。
出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法が施行されます』
③行政ADR、行政による助言・指導の整備
改正されたパートタイム・有期雇用労働法では、行政ADR(※)をはじめ、行政による助言・指導の整備範囲が拡大されています。
法改正前までは、行政ADRはパートタイム労働者のみが対象となっており、部分的な規制に限られていました。
今回の法改正では、有期雇用労働者や派遣社員などの非正規社員に対しても、行政ADRの対象に加えられています。また、行政による助言・指導については、新たに有期雇用労働者にも適用されます。
▼行政ADRの適用範囲
画像引用元:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法が施行されます』
このような法整備によって、労使間の紛争が発生した場合に円滑な解決を図ることが期待できます。
※行政ADRとは、行政が事業主への助言・指導を行い、労働者と事業主の紛争を裁判することなく解決する裁判外紛争解決手続きのこと。
出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法が施行されます』
多様な働き方の実現応援サイトを活用した情報収集
事業主が改正後のパートタイム・有期雇用労働法に対応するために、政府のポータルサイトの活用がおすすめです。
厚生労働省では、パートタイム・有期雇用労働法に関する取組み事例やチェックツールなどをまとめた『多様な働き方の実現応援サイト』を運用しています。
法改正に関する分かりやすい解説をはじめ、以下のような情報が掲載されているため、非正規社員への雇用管理に役立てられます。
▼多様な働き方の実現応援サイトの内容
- 公平な待遇確保に向けた企業の取組み事例
- 法対応チェックツール
- 職務分析・職務評価サイト
- 多様な正社員制度の導入事例
多様な働き方の実現応援サイトは、自社での待遇が公正に整備されているかを確認するとともに、従業員の能力・貢献度に応じた適切な職務評価を行うための手助けとなります。従業員の雇用管理の適正化に向けて、積極的な活用を検討されてはいかがでしょうか。
まとめ
この記事では、パートタイム・有期雇用労働法について以下の内容を解説しました。
- パートタイム・有期雇用労働法の概要
- パートタイム・有期雇用労働法の目的
- パートタイム・有期雇用労働法の内容
- 法改正のポイント
- 政府ポータルサイトの活用について
働き方改革関連法の施行に伴ってパートタイム・有期雇用労働法が改正され、2021年4月1日から中小企業を含むすべての企業で適用されています。
正社員と非正規社員の公平な待遇を確保することは、従業員のモチベーション向上を図るとともに、人材採用の促進や定着化などの企業全体のメリットにもつながると期待できます。
企業の担当者は、法改正に関する知識をしっかりと身につけて、従業員が納得して働ける環境を整備することが大切です。
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