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時間外手当とは? 法律で定められている計算方法や注意点について

※2023年4月25日更新

労働基準法で定められた法定労働時間を超えて発生した労働時間を“時間外労働”といいます。また、時間外労働に対して発生する賃金を“時間外手当”といいます。

時間外手当にはさまざまな種類があり、発生する要件や割増率などに違いがあるため、人事労務担当者はその仕組みを正しく理解しておくことが重要です。

今回は、時間外手当とは何か、基礎知識や発生する条件、計算方法などについて分かりやすく解説します。


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目次[非表示]

  1. 時間外手当とは?
  2. 時間外手当と一緒に知っておきたい36協定(労使協定)
  3. 働き方改革による時間外労働の上限規制について
  4. 時間外労働で間違いやすい“法定内残業”と“法定外残業”
  5. 時間外手当が発生する条件と計算方法
  6. 時間外手当の支給が特殊なケース
  7. 時間外労働を増やさないためのポイント
  8. 未払いの残業代に対して企業が受けるペナルティ
  9. シフト制の残業はシフト作成段階で防げる
  10. まとめ


時間外手当とは?

時間外手当とは、法定労働時間を超えた際に発生する割増賃金のことを指します。

労働基準法で定められている法定労働時間を超える労働は、通常賃金の125%以上の時間外手当を支払う必要があります。例えば、時給が1,000円の場合の時間外手当は1,250円となります。

また、1ヶ月に60時間以上の時間外労働があった場合には、使用者は通常賃金の150%以上の金額を支払うことが義務づけられています。

月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率については、これまで大企業のみが対象となっていました。しかし、労働基準法の改正によって2023年4月1日から中小企業にも適用されます。


▼法定の労働時間・休憩・休日

使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

引用元:厚生労働省『労働時間・休日


▼労働基準法第37条

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

引用元:e-Gov法令検索『労働基準法


なお、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客業(特例措置対象事業場という)などの分野において、労働者が10人未満の場合については週の法定労働時間は44時間までとなります。


▼労働基準法施行規則第25条の2

使用者は、法別表第一第八号、第十号(映画の製作の事業を除く。)、第十三号及び第十四号に掲げる事業のうち常時十人未満の労働者を使用するものについては、法第三十二条の規定にかかわらず、一週間について四十四時間、一日について八時間まで労働させることができる。

引用元:e-Gov法令検索『労働基準法施行規則


出典:厚生労働省『労働時間・休日』『2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます』/e-Gov法令検索『労働基準法』『労働基準法施行規則



時間外手当と一緒に知っておきたい36協定(労使協定)

職務の性質上、どうしても法定労働時間を超える業務が発生することがあります。法定労働時間を超えて働かせる場合は、使用者と労働者が双方合意のうえで協定を結び、行政官庁に届け出ることが義務づけられています。

このような使用者と労働者の協定は“時間外労働協定”といい、『労働基準法』第36条に定められていることから“36(サブロク)協定”と呼ばれています。

36協定は、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者と、使用者(企業)の間で締結します。36協定を締結していない場合、法定時間外の労働は法律違反になります。

なお、36協定には時間外労働や休日労働の限度時間などを明記する必要があり、これを超える時間外労働はできません。 また36協定さえ結べば、無制限に労働時間を延ばせるわけでもないため注意が必要です。

36協定の時間外労働には限度があり、原則として1ヶ月で45時間、1年で360時間を超える時間を働かせてはいけないと定められています。


36協定のポイントや注意点については、こちらの記事で解説しています。

  36(サブロク)協定とは? 押さえておきたい残業時間の上限や注意点 2019年4月からスタートした働き方改革の一環として、『労働基準法』が改正されました。これにより、36協定の締結方法が変わり、残業時間の上限が規定されました。「36協定に関する知識があやふやになっているため一度見直したい」「法令に違反していないか心配」といった人事・労務担当者の方もいるのではないでしょうか。今回は、36協定について、締結時のポイントや時間外労働の上限規制、法改正に伴う様式変更とともに解説します。 シフオプ


出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』/e-Gov法令検索『労働基準法



働き方改革による時間外労働の上限規制について

これまでは、36協定に基づいた残業であれば時間外労働に上限がなく、違反した場合も使用者は行政指導を受けるのみにとどまっていました。

しかし、2019年4月から順次施行されている“働き方改革”によって、時間外労働の上限規制が導入されました。 時間外労働の上限は、原則として月45時間・年間360時間までとなっています。使用者は、働き方改革のルールに則った“臨時的な特別の事情”がなければ、これを超えて働かせることはできません。 

また、臨時的な特別の事情があり、労使が合意している場合であっても、以下の労働時間を遵守する必要があります。


▼時間外労働の上限規制(特別条項)

時間外労働が年720時間以内
 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2か⽉平均」「3か⽉平均」「4か⽉平均」「5か⽉平均」「6か⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6か⽉が限度

引用元:厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説


上記に違反すると、使用者には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される場合があります。


出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説



時間外労働で間違いやすい“法定内残業”と“法定外残業”

一般的に使われる“残業”という言葉は、法律では“時間外労働”といいます。この時間外労働は、2つに分けられます。


法定内残業

法定内残業とは、法定労働時間内の範囲で、企業が任意で定めた所定労働時間を超えて働いた労働時間のことを指します。

仮に1日の勤務時間を9:00~17:00まで、休憩1時間の7時間と所定労働時間を定めている企業の場合を例に出します。


▼法定内残業の例
09:00~17:00 所定労働時間
17:00~18:00 法定内残業


退勤時間が18:00になり、8時間の勤務となった場合、超過となった1時間は法定労働時間内の残業に当たります。法定内残業にあたる部分については、就業規則で定めのない限り、割増賃金を支払う義務はありません。


出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説


法定外残業

法定外残業とは、法定労働時間を超えて働いた労働時間のことを指します。
所定労働時間が9:00~17:00までで、9:00~20:00までの勤務となった場合には、18:00以降の労働時間が法定外残業に当たります。


▼法定外残業の例
09:00~17:00 所定労働時間
17:00~18:00 法定内残業
18:00~20:00 法定外残業


法定労働時間は1日8時間以内・週40時間以内と定められているため、1日の労働時間が8時間を超えたとき、超過部分は法定外残業になります。法定外残業が発生した場合、使用者は労働者に割増賃金を支払う必要があります。


出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説



時間外手当が発生する条件と計算方法

時間外手当はさまざまなケースで発生します。ここでは、時間外手当が発生する条件と、手当の計算方法について解説します。


①法定外残業

1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた残業をした場合は、残業手当が発生します。残業手当は、通常の賃金の25%以上と定められています。


▼残業手当の計算方法
残業手当=1時間当たりの通常賃金×法定外残業を行った時間×1.25


出典:厚生労働省『法定労働時間と割増賃金について教えてください。』/厚生労働省 東京労働局『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編


②休日労働

使用者は、労働者に対して少なくとも週1日、もしくは4週間に4日の休日を与えることが法律で定められています。法定休日に労働させた場合には、休日手当として通常賃金の35%以上の賃金を支払う義務があります。 


▼休日手当の計算方法
休日手当=1時間当たりの通常賃金 × 休日労働時間 × 1.35


出典:厚生労働省『法定労働時間と割増賃金について教えてください。』/厚生労働省 東京労働局『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編


③深夜労働

22時から5時までの時間帯は深夜労働に当たり、深夜手当の支給対象となります。 深夜手当では、使用者は通常賃金の25%以上の賃金を支払う義務があります。


▼深夜手当の計算方法
深夜手当=1時間当たりの通常賃金 × 深夜労働時間 × 1.25


出典:厚生労働省『法定労働時間と割増賃金について教えてください。』/厚生労働省 東京労働局『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編


アルバイトに適用される手当や、日給制・月給制などの時間外手当の計算方法は、こちらの記事で解説しています。

アルバイトに適用される手当は?その種類や金額
時間外手当の計算方法。日給制や月給制、計算率について



時間外手当の支給が特殊なケース

これまで、法定労働時間を超える労働は、法定外残業として割増賃金が発生することを解説してきました。しかし、法定労働時間を超えた労働でも、時間外手当の対象とはならないケースがあります。

ここでは、その具体的な例を5つ紹介します。


管理職(管理監督者)に就いている場合

労働基準法では、管理監督者は使用者であると考え、割増賃金を払わなくてもよいとされています。

そのため、人件費を削減したい経営者が、管理監督者は労働時間規制の適用を除外されることを悪用しているケースが発生しています。一般従業員を管理職に昇進させ、割増賃金の支払いを逃れようとする行為で、大きな社会問題となっています。

労働基準法の管理監督者とみなされるには条件があり、すべての管理職が管理監督者ではないことも覚えておきましょう。


固定残業制を適用している場合

“固定残業代”、“みなし残業代”などと呼ばれる制度があります。時間外手当があらかじめ給与に含まれているため、一定の残業時間(みなし残業)までは時間外手当は発生しません。

固定残業制度を導入している場合、企業は以下の点を従業員に明示する義務があります。


▼固定残業制度で従業員に明示する内容

  • 基本給
  • みなし残業時間の上限と固定残業代
  • 実際の残業代が固定残業代を超える場合は時間外手当を追加して支払うこと


みなし残業時間を実際の労働時間が超えた場合には、使用者は労働者に対して、追加の時間外手当を支払う必要があります。 

なお、月の固定残業時間を45時間以上に設定すると、年間では法定労働時間を超えてしまい、労働基準法違反となる場合があります。


裁量労働制を適用している場合

固定残業制は、一定時間までの時間外労働のみを“みなし残業”とするのに対して、裁量労働制では時間外労働ではなく、時間内労働を“みなし労働”と考えます。

裁量労働制では、使用者と労働者の間で取り決めた時間を労働時間とみなします。
例えば、労使間の取り決めで1日の労働時間を8時間とした場合、実際の勤務時間が6時間でも10時間でも、1日の労働時間は8時間として扱われます。

ただし、みなし労働時間を法定労働時間である1日8時間を超える時間に設定した場合、超過時間に対して25%の割増賃金を支払う必要があります。休日手当や深夜手当も、一般労働者と同様の扱いです。


年俸制の場合

契約社員や嘱託社員などで見られるケースに、年俸制の給与と固定残業制度を組み合わせて人件費の変動を抑えようとする賃金体系があります。

“年俸に○○時間分の時間外手当が含まれる”という規定がある場合、残業時間は給与(年俸)に含まれているとみなされ、時間外手当の対象にはなりません。

年俸制の場合でも、基本給部分と時間外手当部分の労働時間および賃金は、労働者に対してあらかじめ書面等で明示する必要があります。明示した労働時間を超えて残業が発生する場合は、時間外手当の対象となります。


フレックスタイム制を適用している場合

企業が指定する条件内で、労働者が出社・退社時間を自由に決められるのがフレックスタイム制です。ある日の労働時間は5時間、別の日は9時間など、状況に応じて労働時間を変えられます。

フレックスタイム制では、労働時間の計算を1日で締めずに、週ごと、月ごとなどの清算日を設けて、その期間の労働時間をベースに時間外労働が発生したかどうかを算定します。

労働時間を週ごとに清算する場合、1日の労働時間が8時間を超えても、ただちに法定時間外労働とはなりません。週の総労働時間が40時間以内で収まっているなら、時間外手当の支払い義務は発生しません。しかし、週の労働時間が40時間を超えた場合は、その時間に対して時間外手当を支払う必要があります。



時間外労働を増やさないためのポイント

長時間労働や残業代の支払い負担を減らすためには、時間外労働を増やさない体制づくりが必要です。ここからは、時間外労働を増やさないためのポイントを解説します。


①ノー残業デー・ノー残業ウィークの導入

ノー残業デー・ノー残業ウィークとは、1日単位や週単位で残業をしない日を定める制度です。企業が残業をしない日を設定することで、定時で帰宅する意識が生まれて、「仕事をしている人がいるから帰りにくい」といった理由で起こりやすい残業を防止できます。

導入する際は、別の日に業務の負担が増えないように作業を分担したり、業務の効率化やフローの改善を図ったりして生産性を高める工夫が必要です。


②残業の事前申請制度の導入

残業の事前申請とは、従業員が残業をするときに上司や管理者に申請を行い、承認した場合のみ残業を認める制度です。

残業の理由や業務内容などを事前に確認することで、別の従業員に業務を割り振ったり、長時間労働となっている従業員の業務内容を見直したりするなど、時間外労働を減らすための対策を講じられます。


③業務の平準化

各従業員の業務を平準化することも、時間外労働を減らすポイントの一つです。

従業員によって業務量や業務負担が偏っている場合、特定の従業員のみ時間外労働が発生するといった問題につながりやすくなります。

時間外労働を減らすためには、従業員ごとの業務量を把握したうえで、必要な作業時間に応じて業務の割り振りや人員配置を見直して平準化を図ることが重要です。



未払いの残業代に対して企業が受けるペナルティ

未払いの時間外手当について従業員から請求を受けた際、企業は未払い分の賃金以外に所定の費用をあわせて支払わなくてはいけない場合があります。

例えば、支払いが遅れたことによる遅延損害金や遅延利息、調停や裁判となった場合は未払い金と同額の付加金などが挙げられます。 こうしたリスクを回避するためにも、労働時間の管理と正しい賃金計算・支払いが求められます。



シフト制の残業はシフト作成段階で防げる

時間外労働は人件費を増大させるだけでなく、従業員との信頼関係にも影響を及ぼし、ときには経営自体のリスクを増大させる可能性があります。

シフト制の職場では、従業員の労働時間を把握したうえで人員を調整することによって、時間外労働を防ぎやすくなります。

シフト管理システムの『シフオプ』なら、状況に応じた理想的なシフト体制を提示するモデルシフト表示機能や、コンプライアンスリスクの高い時間外労働に対するアラート機能などで、違反を未然に防止したシフトを作成できます。

シフト作成段階で時間外労働や連続勤務を把握できるため、法令遵守のシフトを作成できるほか、管理者の負担を大きく減らすことも可能です。


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まとめ

この記事では、時間外手当について以下の内容を解説しました。


  • 時間外手当とは
  • 36協定について
  • 時間外労働の上限規制
  • 法定内残業と法定外残業の考え方
  • 時間外手当が発生する条件と計算方法
  • 時間外手当の特殊なケース
  • 時間外労働を増やさないポイント
  • 未払いの残業代に対するペナルティ


法定労働時間を超える労働については、時間外手当の支給が必要です。また、休日労働には休日手当、深夜労働には深夜労働手当が発生します。それぞれ計算方法が異なるほか、時間外労働には上限規制が定められているため、法令に基づいた管理が求められます。

従業員の労働時間をシフト段階で把握して、時間外労働を防ぐためには、シフト管理システムの活用が有効です。シフト管理システムのシフオプには、以下の機能が備わっています。


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