
パートタイマーの休日出勤が発生したら? 割増賃金のルールを解説
※2023年5月30日更新
急な欠員でシフトに穴が開いたとき、パートタイムで働く従業員(以下、パートタイマー)に休日出勤を依頼することがあります。
このとき、「休日出勤手当の計算方法について知りたい」「振替休日や代休を付与する場合はどうなるのか」など、賃金の計算方法に疑問を持つ人事・労務担当の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、パートタイマーに休日出勤をしてもらった際の割増賃金のルールと計算方法、振替休日・代休の取り扱いなどを、労働基準法に基づいて解説します。
目次[非表示]
パートタイマーの休日出勤とは
休日出勤とは、労働基準法で定められた法定休日に働くことを指します。
一般的に休日出勤と聞くと、企業が定める所定休日に働くイメージがありますが、法定休日と所定休日は明確に区別されています。
『労働基準法』第35条では、原則として1週間に1日または4週間で4日以上の休日を与えることが義務づけられており、この休日を法定休日といいます。
▼労働基準法 第35条
第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
これに対して所定休日は、企業が任意で設定する法定休日以外の休日のことをいい、法律による定めはありません。
例えば、土日が休みの週休2日制を導入している企業において、労働契約や就業規則などで日曜日を法定休日と定めている場合、土曜日は法定休日には該当しません。そのため、割増賃金について考える際は「法定休日に働かせたかどうか」がポイントになります。
なお、アルバイトの法定休日については、こちらの記事で解説しています。
出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』/e-Gov法令検索『労働基準法』
パートタイマーに休日出勤を依頼した場合の割増賃金のルール
法定休日に休日出勤をしてもらった場合には、割増賃金の支払いが必要です。このルールは雇用形態に関係なく、正社員やパートタイマー、アルバイトなどのすべての従業員に適用されます。
パートタイマーに休日出勤を依頼した際は、通常の35%以上の割増賃金を休日手当として支払います。
▼休日出勤の割増賃金
休日労働に対する割増賃金は、通常の賃金の3割5分以上です。
引用元:厚生労働省『法定労働時間と割増賃金について教えてください。』
法定休日に勤務させた場合の計算方法は以下になります。
▼支給額の計算方法
法定休日の賃金=1時間あたりの賃金×勤務時間×1.35(以上) |
例えば、時給1,000円で労働時間が8時間のパートタイマーが法定休日に勤務した場合は、次のように計算します。
▼例:時給1,000円、8時間勤務、割増率35%の場合
1,000円×8時間×1.35=10,800円 |
なお、労働基準法第37条では、休日出勤や時間外労働、深夜労働に対して一定以上の割増賃金を支払う義務が定められています。
▼割増賃金の種類と割増率
種類 |
割増率 |
休日手当 |
35%以上 |
時間外手当(残業手当) |
25%以上
※1ヶ月60時間を超える場合は50%以上
|
深夜手当 |
25%以上 |
休日出勤の際に深夜労働が発生する場合には、深夜労働に対する25%以上の割増賃金もプラスして支給する必要があります。ただし、休日出勤時に残業をした場合についての時間外手当は発生しません。
▼休日手当と深夜手当の計算例
画像引用元:厚生労働省 東京労働局『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編』
出典:厚生労働省『法定労働時間と割増賃金について教えてください。』/厚生労働省 東京労働局『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編』/e-Gov法令検索『労働基準法』
振替休日や代休を付与する場合はどうなる?
労働基準法では、週に1日以上の休日を与えることが義務づけられているため、休日出勤で失った休日を別の日に付与することは違法とはなりません。ただし、付与する休日が振替休日なのか、代休なのかによって割増賃金の支払い有無が異なります。
振替休日とは、法定休日に出勤する前に労働日と休日を入れ替えることです。
例えば、日曜日が法定休日の場合、「今週の日曜日に出勤してもらう代わりに、今週の木曜に休みを取って欲しい」とあらかじめ調整するのが振替休日に当たります。
もともと休日だった日曜日を事前に労働日の木曜日と入れ替えているため、日曜日の労働は休日出勤とはならず、休日出勤に対する割増賃金も発生しません。
一方の代休は、休日出勤をしたあとに、その代償としてもともとの労働日を休みにすることです。「先週の日曜日に休日出勤してもらったから、今週の火曜に休みを取って欲しい」という場合は代休に当たります。
この場合、日曜日に出勤する時点で休日を振り替えていないため、休日出勤にあたり、割増賃金を支払う必要があります。
▼振替休日と代休の違い
- 振替休日:前もって休日と労働日を振り替えた場合
- 代休:休日出勤をさせたあとに代償として休日を付与する場合
▼振替休日と代休に関する割増賃金の発生ルール
- 法定休日に出勤した場合の振替休日には、割増賃金が発生しない
- 法定休日に出勤した場合の代休には、割増賃金が発生する
なお、法律で定められている年間休日については、こちらの記事で解説しています。
出典:厚生労働省『振替休日と代休の違いは何か。』/厚生労働省 山梨労働局『代休?振替休日?』
休日出勤以外にも手当が発生する場合がある
ここまで休日出勤の割増賃金について解説してきましたが、休日手当以外にもパートタイマーに適用される手当があります。
通勤手当
自宅から職場までの交通費として支給するのが通勤手当です。多くの企業では、従業員が通勤にかかる交通機関の定期代や車のガソリン代などを支給しています。
通勤手当は法律で義務づけられていないため、支給の有無および支給額については、企業が定めることができます。
ただし、正社員に通勤手当を支給している場合、職務内容や人事異動の有無などが正社員と同等のパートタイム従業員に対しては、同様に通勤手当を支払わなければならないとされています。そのため、パートタイマーへの待遇の取り扱いについては注意が必要です。
出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
傷病手当
傷病手当は、万が一の病気やケガで働けなくなってしまったときに、従業員の生活を保障するために支給する手当です。
パートタイマーであっても、一定の条件を満たすことで会社の健康保険への加入が可能になります。会社の健康保険に加入している場合には、傷病手当の対象者となります。なお、家族の扶養に入っているパートタイマーの場合は、支給対象とはなりません。
出典:政府広報オンライン『パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入により手厚い保障が受けられます。』/全国健康保険協会『傷病手当金』
急な休日出勤の要請を防ぐには、シフト管理の徹底が大切
シフト制でパートタイマーを雇用する企業において、シフト管理は欠かすことができません。適正なシフトになっていない場合、長時間労働や休日出勤につながり、割増賃金の支払いによる人件費の増加が懸念されます。
また、休日出勤によるシフト変更が頻繁に起きると、管理者の業務負担が増えるほか、法律に抵触するリスクも高まります。
長時間労働や休日出勤を防ぎ、割増賃金を適切に支払うためには、従業員のシフト管理を徹底して、勤務状況を把握することが重要です。
シフト管理システムの『シフオプ』は、シフトの収集・作成・共有を行えるシステムです。従業員一人ひとりの勤務状況を可視化できるため、急な休日出勤が発生した場合のシフト調整もしやすくなります。
そのほか、シフオプの導入によって得られるメリットには、以下が挙げられます。
▼シフオプを導入するメリット
- 労務規定に違反しないシフト作成ができる
- 人件費予算とシフト人件費を比較して、人件費の超過を防げる
- 適切な人員配置によって、人員不足を防げる
- 紙のシフト作成と比べて効率的になる
シフト管理方法の見直しは、管理者の業務負担が削減されるだけでなく、従業員にとって働きやすい職場環境を作ることにもつながります。
まとめ
この記事では、パートタイマーの休日出勤について以下の内容を解説しました。
- 休日出勤の意味
- 割増賃金のルール
- 振替休日と代休の違い
- そのほかの手当
パートタイマーに法定休日での出勤を依頼する場合には、35%以上の割増賃金を支払う必要があります。ただし、事前に振替休日を付与する場合は、休日出勤日は法定休日にあたらないため、割増賃金の支払いは必要ありません。
労働基準法に沿った正しい休日管理や賃金支払いを行うには、日頃のシフト管理が欠かせません。効率的かつ労務コンプライアンスを徹底したシフト管理を行うには、『シフオプ』の活用がおすすめです。
シフオプを活用すると、以下を実現できます。
- アルバイト・パートタイマーの人件費の最適化
- シフト管理時の負担削減
- 欠員可視化で採用の最適化
- 労務コンプライアンスの強化
- ヘルプの活用によって労働力を確保
具体的な活用シーン・導入メリットについては、こちらの資料をご確認ください。
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