深刻な保育士人材不足の原因とは?雇用側ができる対策を紹介
日本の社会問題のひとつとして、「保育所の待機児童問題」が挙げられます。
子どもを保育所に預けて働きに出たいという家庭が増えるなかで、保育所に応募しても当選せず、子どもを預けられなくて困っているというニュースも耳にします。
待機児童が発生してしまう原因のひとつが、保育士の人材不足です。
では、保育業界を活性化・発展させるためには、どのような対策が必要となってくるのでしょうか。
今回は、保育士が人材不足になる原因と、雇用者ができる対策について考えてみました。
保育士の人材不足が深刻に
夫婦の共働きがスタンダードになりつつある現代社会では、子どもを保育所に預けたいと希望する家庭が増えてきています。
政府は2019年10月から、「幼児教育・保育の無償化」を実施することを正式に発表しています。この施策により、幼稚園や保育所に通う3才から5才の子どもと、保育所に通う0才から2才の住民税非課税世帯の子どもについて、利用料が無料になる予定です。
子どもを持つ家庭には喜ばれる政策でしょうが、一方で気になるのは「保育士の人材不足」です。
無償化になるとしても、保育士の人材が不足していては、保育所になかなか入所ができないというケースが想定されます。
厚生労働省によると、2018年の待機児童数は全国で約2万人近くいるとされています。加えて、公にされていない「隠れ待機児童」の数も含めると、全国で約7万1千人いることが朝日新聞によって発表されています。
(出典:朝日新聞DEGITAL「待機児童問題「見える化」プロジェクト」)
待機児童問題にも関わる「保育士の人材不足」は、どういったことが原因で起きているのでしょうか。
保育士の人材不足の原因とは
保育士の資格を取得しても、実際に現場で働いている人は少ないというのが現状です。
保育士が人材不足に陥る原因として、「就業希望者の停滞」と「離職率の高さ」が挙げられます。
就業希望者の停滞
厚生労働省の発表データによると、保育士資格を持つ人のなかで実際に就業する人の割合は約50%となっています。つまり、日本で保育士資格を持つ人の50%は保育所に就業していないことになります。
なぜ、有資格者の就業希望者が増えないのでしょうか?
その理由として、「賃金が希望と合わない」「休暇が取りにくい(少ない)」といったことが挙げられています。
離職率の高さ
保育士の仕事は、子どもたちのお世話をする楽しいイメージがありますが、実際は楽しいことばかりではありません。
多くの子どもたちに目を配りながら、事務処理や保護者への対応など、日々たくさんの業務に追われます。そのため、身体的にも精神的にもストレスが溜まりやすいといえるでしょう。
厚生労働省の発表によると、就業を希望しない理由には「責任の重さ」「事故への不安不満」「保護者や同僚との人間関係のストレス」などが挙げられています。
そして、保育士として働く人のうち半数は、勤続5年未満で退職をしていることが分かっています。保育士として就業する人が少ないうえ、半数の人が5年以内に辞めてしまう現状では、人手不足に拍車がかかってしまいます。
複数の子どもたちの保育を一人で担当することは簡単ではありません。小さなミスで大きな事故に発展してしまう恐れもあります。一瞬でも気が抜けないため、精神的にも疲れやすいと考えられます。
このように精神面の負担の大きさから、保育士を辞めてしまったり、再就職を望まなかったりする人も少なくありません。
(出典:厚生労働省「保育キャンペーン資料」保育分野における人材不足など)
保育士の人材不足解消のために雇用側ができることは
保育士の人材不足を解消するためには、「待遇面の改善」と「職場環境の改善」が重要です。
対策として、次の3点が挙げられます。
・賃金の改善
・勤務体制や休暇の見直し
・再就職しやすい職場づくり
保育士で就業を望まない理由のひとつが「低賃金」であるとされています。保育士としての経験値は積んでいるにも関わらず、給料がなかなか上がらないままでは、保育士のやる気も低下してしまいます。そのため、キャリアアップ制度や昇給制度を設けるなどして、賃金制度の改善を図ることも重要です。
さらに、職場環境の改善には「勤務体制の見直し」が挙げられます。
保育業界では、長時間労働や持ち帰り残業が問題視されており、退職理由のひとつとなっています。
人員を適切に配置し、一人あたりの負担が大きくなりすぎないようにする工夫が大切です。保育所で必要な制作物を外部へ依頼するといった方法もあります。
また、保育士の人材を増やすためにも、「再就職制度」を手厚くすることも方法のひとつでしょう。
女性で働く人のなかには、結婚や出産などのライフステージで退職する人もいます。そのため、家庭と仕事が両立しやすいパートタイム勤務を導入するのも改善案ではないでしょうか。
まとめ
保育士の人材が不足する原因には「責任が重い」「休みが取りづらい」「給料が安い」といった不安が関係しているといわれています。
こうした不安を少しでも解消していくには、雇用者が職場環境や待遇について振り返り、改善をしていくことが重要です。
長時間労働や持ち帰り残業などの過剰労働が起きないように勤怠管理をし、また、勤務形態を多様化することで、就業率や再就職率が高まると予想できます。
過剰労働を防ぐためには、シフト管理システムの導入が効果的です。
「シフオプ」は、労務規定に違反しているシフトに対してアラートを発信する機能が搭載されているため、労務規定に沿った、保育士に無理のないシフトを管理・作成することが可能です。
厚生労働省は、保育士の人材確保のために待遇面の改善や再就職支援の強化に力を入れています。現場の雇用者も、積極的に労働環境の改善に取り組んでいきましょう。
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