外国人アルバイトに関する法令上の注意点。日本人アルバイトとの違いとは
※2024年12月25日更新
少子高齢化が進む日本では、さまざまな企業が人手不足の課題を抱えています。そうしたなか新たな働き手として外国人労働者を雇用する企業が増えています。
しかし、外国人労働者をアルバイトとして受け入れるにあたっては、労働時間の制限や税金の控除などの労務管理の扱いに注意する必要があります。
人事・労務部門の担当者やシフト管理者のなかには「外国人アルバイトの労働条件は日本人とどのような違いがあるのか」「賃金や税金などに規定はあるか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、外国人アルバイトと日本人アルバイトにおける労働条件の違いや、雇用する際の注意点について解説します。
なお、外国人アルバイトを採用する際の注意点については、こちらの記事をご確認ください。
外国人アルバイトと日本人アルバイトにおける労働条件の違い
外国人アルバイトと日本人アルバイトでは、就労可能な時間や所得税の扱い、雇用時の手続きなどに違いがあります。
就労可能な時間
外国人の在留資格によっては、就労可能な時間が日本人アルバイトよりも短くなることがあります。
日本人アルバイトの場合、雇用形態にかかわらず法定労働時間の原則が1日8時間・週40時間と定められています。労使協定を締結していれば、一定の限度内で時間外労働を行うことも可能です。
これに対して外国人アルバイトは、原則として就労が認められていない在留資格があります。しかし、資格外活動の許可を取得することによって、一定の労働時間の範囲内で就労が可能になります。
▼労働時間が制限されている在留資格
在留資格 |
就労可能な時間(原則) |
留学 |
1週28時間以内 |
家族滞在 |
1週28時間以内 |
外国人アルバイトを雇用する際は、在留カードや資格外活動の許可書などを提出してもらい、就労可否と就労可能な時間を確認しておくことが重要です。
なお、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の在留資格を持つ外国人には、就労活動の制限はありません。
労働基準法に基づく法定労働時間については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:厚生労働省『外国人の方を雇い入れる際には、就労が認められるかどうかを確認してください。』『労働時間・休日』
所得税に関する扱い
外国人が日本に滞在する留学生の場合には、給与に対する所得税が免除になるケースがあります。
日本人アルバイトの場合、雇用形態にかかわらず年収103万(月収8万8,000千円)を超えた金額に対して所得税がかかります。
外国人アルバイトにおいても、原則として支払う給与は課税対象となります。しかし、日本と租税条約を結んでいる国から来日した留学生については、所得税の源泉徴収が免除される措置が適用されます。
▼租税条約を結んでいる主な国
- 中国
- タイ
- インドネシア
- インド など
国によっては日本での滞在期間や収入金額について制限が設けられているため、注意が必要です。また、租税条約による免除措置を適用するには、給与の支払者となる企業から所轄の税務署に届出を行う必要があります。
出典:厚生労働省『年収の壁について知ろう』/国税庁『No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか』『学生のアルバイト代』
雇用時の届出義務
外国人を雇用する事業者には、正規雇用やアルバイトなどの雇用形態にかかわらず、ハローワークに外国人雇用状況の届出を行うことが義務づけられています。
日本人アルバイトの場合では、雇用保険の適用対象となる労働者を雇用する際にハローワークへの届出が必須となります。
外国人アルバイトにおいては、日本国籍を持たない人のうち、在留資格が“外交”“公用”以外の労働者が届出の対象となります。雇用保険の適用対象となるか否かによって届出を行う様式や方法、提出期限などが異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
出典:厚生労働省『事業主の行う雇用保険の手続き』『外国人雇用はルールを守って適正に』
外国人アルバイトを雇用する際の注意点
外国人アルバイトを雇用する際は、賃金の設定や源泉徴収、所得控除などに注意する必要があります。
➀外国人も最低賃金法の対象となる
日本では『最低賃金法』第4条において、企業が労働者に支払う賃金の最低額が定められています。国籍や在留資格にかかわらず、最低賃金以上の賃金を支払うことが義務づけられています。
▼最低賃金法第4条
第四条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『最低賃金法』
最低賃金が適用される賃金は、基本給や諸手当が対象となります。ただし、通勤手当や割増賃金、皆勤手当などは含まれません。
なお、海外では最低賃金制度が存在しない国もあります。労働条件の理解を得てもらうために、最低賃金制度や対象となる賃金などを説明しておくことが重要です。
出典:e-Gov法令検索『最低賃金法』/厚生労働省『外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集』
②居住者と非居住者で源泉徴収額が異なる
所得税の源泉徴収に関して、雇用する外国人アルバイトが居住者と非居住者のどちらに該当するかによって税率が異なります。
▼居住者と非居住者の区分
区分
|
所得税法における規定 |
居住者 |
国内に住所(※1)を有している、または現在まで引き続き1年以上の居所(※2)を有している個人 |
非居住者 |
居住者以外の個人 |
居住者に該当する外国人は、日本人と同様に『給与所得の源泉徴収税額表』に基づいた税額で源泉徴収を行います。
一方の非居住者に該当する外国人の場合には、原則として給与に一律20.42%の税率を乗じて源泉徴収する所得税の額を算出します。居住者に該当するか否かは客観的な事実に基づいて判定されるため、税務署に確認しておくことが必要です。
※1…生活の本拠としている場所。
※2…生活の本拠ではないものの、実際に居住している場所。
出典:国税庁『No.2875 居住者と非居住者の区分』『日本における給与に係る源泉徴収制度の概要』
③勤労学生の場合は所得控除の対象となる
雇用する外国人アルバイトが留学生の場合には、一律27万円の所得控除が適用される可能性があります。これを“勤労学生控除”といいます。
国との租税条約によって外国人労働者の所得税が減免される制度とは異なり、日本人労働者にも適用されます。勤労学生控除が適用されるのは、その年の12月31日において次に挙げる3つの要件をすべて満たす人が対象です。
▼勤労学生控除の対象となる範囲
- 勤労による所得があること
- 合計所得金額が75万円以下で、かつ勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
- 特定の学校の学生・生徒であること
上記3の“特定の学校”とは、学校教育法に規定される学校のほか、国・地方公共団体・私立学校法に規定する学校法人、職業能力開発促進法に基づいた認定職業訓練を行う法人を指します。
どの学校に当てはまるか分からない場合には、外国人アルバイトが通う学校の窓口に確認することが必要です。
出典:国税庁『No.1175 勤労学生控除』
④10人以上を雇用する場合は雇用労務責任者の選任が必要
外国人アルバイトを常時10人以上雇用する場合には、原則として人事課長・労務課長などの管理職から“雇用労務責任者”を選任する必要があります。
雇用労務責任者には、外国人労働者が安心して働き、その能力を十分に発揮できる人事制度と就労環境を整備するための雇用・労務管理を行う役割が求められます。
出典:厚生労働省『外国人雇用はルールを守って適正に』
外国人アルバイトの労務管理を効率化するシフト管理ツール
外国人アルバイトを雇用する際には、就労可能な時間や所得税の控除などのさまざまな規定を考慮する必要があり、労務管理が複雑になりやすいといえます。
法令に沿って労務管理を行うには、アルバイト一人ひとりの労働時間を管理できるシフト管理ツールを活用することが有効です。
『シフオプ』には、労働条件が異なるアルバイトが在籍している職場の労務管理に役立つ機能が備わっています。人事・労務担当者の負担を削減するとともに、コンプライアンスの徹底につながります。
▼労務管理に役立つ機能
- 労働時間の上限を設定して、シフト作成時にアラートを表示する
- シフト作成時に労働時間を見ながら人員調整を行う
- シフトデータを出力して給与管理システムに取り込む など
詳しくは、こちらをご確認ください。
まとめ
この記事では、外国人アルバイトの雇用について以下の内容を解説しました。
- 日本人アルバイトとの労働条件の違い
- 外国人アルバイトを雇用する際の注意点
外国人は、人手不足の課題解消につながる貴重な働き手といえます。アルバイトとして雇用する際は、就労可否や就労時間の制限、所得税の控除などが適用されるか、事前に確認しておくことが重要です。
また、在留資格によって日本人アルバイトと労働条件が異なる場合があるため、労務管理も複雑になりやすいといえます。法令を遵守して適正な労務管理を行うには、シフト管理ツールの活用が有効です。
シフト管理ツールの『シフオプ』を導入すると、外国人アルバイトの労働条件に沿って労働時間の調整や給与計算を行いやすくなります。
詳しくは、こちらの資料をご確認ください。
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