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労働基準法で定められている労働時間と多様な勤務制度

※2018年8月29日公開の記事に修正を加えています。


労働基準法という言葉は知っているものの、すべては把握しきれていないというシフト管理担当者の方も多いのではないでしょうか。

従業員を雇用するにあたり、労働基準法で定められている内容をきちんと理解しておくことが欠かせません。なかでも、従業員のシフト管理に深く関係しているのが“労働時間”についてです。

「正確に給与が支払われていない」「残業時間が上限を超えている」といったトラブルを防ぐために、法令に基づいて労働時間を適切に管理する必要があります。

この記事では、労働基準法で定められた労働時間と、多様な勤務制度における労働時間の規制について解説します。


目次[非表示]

  1. 労働基準法で定められている労働時間
  2. 所定外労働・法定外労働の定義
  3. 多様な勤務制度と労働時間の規制
  4. 労働時間に含まれるケース
  5. まとめ



労働基準法で定められている労働時間

労働基準法では実際に労働する時間はもちろん、従業員に付与する休日や休憩時間についても定められています。


労働時間

使用者は、原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させることはできません。この時間を超えて働かせる場合、“残業”という扱いになるため、割増賃金率に基づいて残業代を支払う必要があります。


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休憩時間

労働者には、原則として労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけないと定められています。


また、労働基準法では“休憩時間の三原則”が定められており、企業はこれを守る義務があります。休憩時間の三原則については、こちらの記事で詳しく解説しています。


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休日

使用者は、少なくとも毎週1日の休日、または4週間のうち4日以上の休日を与えなければなりません。

法定休日に従業員を働かせる場合には、行政官庁に届け出て、労働を認めてもらう必要があります。なお、休日労働できる時間には上限があることにも注意が必要です。

出典:厚生労働省『労働時間・休日



所定外労働・法定外労働の定義

企業によっては、繁忙期に時間外の労働時間も発生します。上述したように、1日に8時間・1週間に40時間を超えて労働させる場合は“残業”扱いになります。残業は、所定外労働と法定外労働の2つに分けられます。


所定外労働

所定外労働とは、法定労働時間内において、所定労働時間を超えた残業のことを指します。

所定労働時間は就業規則で定めた勤務時間のことで、始業時刻から就業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた労働時間にあたります。企業によって所定労働時間は異なるため、残業の取扱いについても注意が必要です。

所定外労働が発生した場合は、法令上の時間外労働にあたらないため、使用者が割増賃金を支払う義務はありません。ただし、従業員が働いた分の賃金については、適切に支払う必要があります。

所定外労働にあたるのは、以下のようなケースです。


▼所定外労働の例

会社規定の勤務時間が、午前9時~午後3時(5時間労働1時間休憩)の場合において、午後4時まで労働させる


このケースでは、規定の勤務時間より1時間多く働いていますが、トータルの勤務時間は6時間です。1日8時間という法定労働時間を超えないため、法令違反にはならず、所定外労働という扱いになります。

出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制


法定外労働

法定外労働とは、法定労働時間を超えた残業のことです。

法定労働時間は、“1日8時間・1週間40時間”という労働基準法で定められた労働時間のことを指します。法定外労働に該当するケースには、以下が挙げられます。


▼法定外労働の例

会社規定の勤務時間が午前10時~午後7時(8時間労働1時間休憩)の場合において、午後9時まで労働させる


このケースでは、トータルの勤務時間が10時間となり、法定労働時間を2時間超えているため、法定外労働という扱いになります。

しかし、臨時的な特別な事情があり、労使が合意する場合は法定労働時間を超えて働かせることが可能です。

法定外労働時間については1.25倍以上割増した賃金を従業員に支払う必要があります。法定外労働が1ヶ月で60時間を超えた場合には、1.5倍以上の割増賃金が必要です。1.5倍以上の割増賃金に関して、中小企業は2023年4月1日から適用になります。

また、2019年4月に施行された労働基準法改正によって、法定外労働の上限規制が設けられました。従業員に法定外労働をさせる場合には、原則月45時間・年360が上限となっています。

繁忙期など特別な事情があり、労使間が合意する場合であっても、以下の時間を超えることはできません。


▼法定外労働の上限

  • 月100時間未満(時間外労働・休日労働の合計)
  • 年720時間以内
  • 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
    (2ヶ月平均・3ヶ月平均・4ヶ月平均・5ヶ月平均・6ヶ月平均)

出典:厚生労働省『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編』『法定労働時間と割増賃金について教えてください。』『時間外労働の上限規制



多様な勤務制度と労働時間の規制

決まった就業時間に労働する働き方のほかにも、多様な勤務制度があります。

多様な勤務形態を導入する際は、労働時間の管理が複雑になりやすいため、それぞれの規制についてしっかり理解しておくことが重要です。

ここからは、多様な勤務制度とその制度に対する労働時間の規制について解説します。


変形労働時間制

変形労働時間制とは、一定の期間内において、1日8時間・週40時間という法定労働時間の例外を認める勤務制度です。1年単位・1ヶ月単位・1週間単位の期間があるほか、次に挙げるフレックスタイム制も変形労働時間制の一種となっています。

変形労働時間制を導入すると、業務の繁閑に応じて従業員の労働時間を柔軟に配分できるため、残業時間の短縮や従業員のゆとりの確保につながります。


▼変形労働制における労働時間の規制

一定期間を平均して、1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えないこと


上記の条件を満たす場合には、特定の日または週に法定外労働をさせることが可能です。

出典:厚生労働省『労働時間・休日』『1年単位の変形労働時間制


フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、一定期間の総労働時間をあらかじめ設定して、その枠内で従業員が始業・終業の時刻を自由に決定して働く勤務制度です。

従業員が自律的かつ効率的に働ける環境をつくれるため、生産性やモチベーション向上が期待できます。


▼フレックスタイム制における労働時間の規制

1ヶ月以内の一定期間(清算期間)を平均して、1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えないこと


なお、フレックスタイム制を導入する際は、労使協定の締結と就業規則への規定が必要です。

出典:厚生労働省『労働時間・休日』『2 フレックスタイム制を採用するには、次の2点が要件となります。


みなし労働時間制

みなし労働時間制とは、労使協定で定めた時間を労働したものとみなす勤務制度です。一般的に、特定の事情によって労働時間の算定が困難な場合や専門性が高い業務に従事する場合に導入されます。

みなし労働時間制には、3つの種類があります。


▼みなし労働時間制の規制と主な職種

                  
制度

労働時間のみなし方


対象となる主な職種

事業場外
みなし労働時間制

  1. 原則として所定労働時間を労働したものとみなす
  2. 当該業務を遂行するために、通常所定労働時間を超えて労働することが必要である場合には、当該業務の遂行に通常必要な時間労働したものとみなす
外回り営業、訪問販売等
専門業務型
裁量労働制
労使協定で定めた“みなし労働時間”を労働したものとみなす
商品・技術の研究開発、情報処置システムの設計、デザイナー、税理士、新聞記者等
企画業務型
裁量労働制
労使委員会の決議(4/5以上の多数決)で定めた“みなし労働時間”を労働したものとみなす
企業の企画部門、経営調査・分析を行う職業


なお、法定労働時間を超える“みなし労働時間”を設定する場合には、労使協定の締結および労基署への届出、割増賃金の支払いが必要です。

出典:厚生労働省『現行の労働時間制度の概要



労働時間に含まれるケース

従業員のシフト管理において、労働時間を算出するときに悩みがちなのが「どのような時間が労働時間に含まれるのか」という点です。

ここからは、シフト管理担当者が悩みがちなケースにおいて、労働時間として含まれるのかどうかを解説します。


始業前・始業後

始業前に行う朝礼や点呼を使用者が命じて行っていれば、労働時間に含まれます。

終業後に行う点検作業や仕事の引継ぎなども同様です。使用者が業務として定めているものであれば、実業務以外でも労働時間として扱う必要があります。

また、業務のために着替えをする時間については、社内で行うものは労働時間とみなされます。


始業前後の清掃

始業前後の清掃については、従業員に対して掃除をするよう指示している場合には、労働時間に含まれます。

ただし、当番制や業務の一部ではなく、自発的に行うものは労働時間には含まれません。労働者の任意で行っているか、それとも使用者の指揮命令下で行っているかによって労働時間に含まれるか否かを判断します。


研修時間

研修を受ける時間も労働時間に含まれます。たとえ研修であっても、使用者の指示である以上は、きちんと労働時間として扱わなければなりません。

ただし、研修が自由参加の場合には、労働時間に含まなくてもよいケースがあります。実質的に強制されている場合にはその限りではありません。


仮眠・待機時間

夜勤の際に付与される仮眠時間や業務を行っていない待機時間も、使用者の指揮下にあると判断できる場合であれば、労働時間に含まれます。

実際に業務を行っていない時間であっても、労働の役務が義務付けられているとみなされるためです。

なお、労働基準法で定められている休憩は、“従業員が労働から離れていること”が条件となります。仮眠時間や待機時間において、電話・来客対応が発生する場合には休憩にあたらないため、労働時間として扱う必要があります。



まとめ

この記事では、労働基準法で定められている労働時間に関して、以下について解説しました。

  • 労働基準法で定められている労働時間
  • 所定外労働・法定外労働の定義
  • 多様な勤務制度と労働時間の規制
  • 労働時間に含まれるケース

従業員の労働時間は、労働基準法によって細かく定められています。従業員とのトラブルを発生させないためにも、使用者はしっかりとルールを把握しておくことが重要です。

また、2019年4月からは残業時間の上限規制が設けられたため、労使間の合意がある場合でも、上限を超えて働かせることはできません。

シフトを管理する際は、従業員の労働時間を適切に把握して、法令違反や長時間労働を未然に防ぐことが大切です。適切な労務管理によって、使用者と従業員の双方が気持ちよく働ける環境をつくりましょう。

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