
労働基準法における休憩時間のルール|三原則・罰則・テレワーク対応まで徹底解説
※2026年7月13日更新
シフト管理や人事・労務の担当者にとって、従業員の「休憩時間」を法令通りに管理することは、コンプライアンス遵守の第一歩です。
しかし、「残業が発生したときの休憩はどう追加すればいい?」「テレワーク中の中抜けはどう処理すべき?」など、実務における判断に迷うシーンは少なくありません。
労働基準法における休憩時間には、守るべき「三原則」や、労働時間に応じた厳格なルールが存在します。万が一、これらに違反した場合は、企業側に厳しい罰則を科されるほか、企業イメージの低下や未払い賃金請求などのリスクが生じることもあるため注意が必要です。
本記事では、労働基準法が定める休憩時間の基礎知識から、残業時・テレワーク時の具体的な対応、管理監督者の扱いまで、実務に直結するポイントを解説します。
目次[非表示]
労働基準法で定められる休憩時間とは
労働基準法で定められた休憩時間とは、“労働者が権利として労働から離れることを保証された時間”を指します。
休憩時間を十分に設けることで、長時間労働による以下のリスクを回避しやすくなると考えられます。
▼長時間労働によるリスク
心身に疲労が蓄積する
生産性が低下する
労働災害が発生する など
休憩時間の決まり方
各従業員に対して設ける休憩時間の基準については、労働基準法 第34条で規定されています。
▼労働基準法 第34条
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
② 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
③ 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
労働時間が6時間を超え、8時間以下であれば45分以上、8時間を超える場合は60分以上の休憩時間を付与する義務が使用者に生じます。ただし、労働時間が6時間に満たない場合には休憩を付与する義務はありません。
出典:e-Gov法令検索『労働基準法』
休憩時間の三原則
労働基準法で定められた休憩時間を運用するにあたって、絶対に外せない「三原則」があります。
途中付与の原則
休憩時間は、必ず「労働時間の途中」に与えなければなりません。
例えば、労働時間が7時間の場合、「3時間労働 → 休憩45分 → 4時間労働」のように、勤務の合間に休憩を挟むのが正しい運用です。
以下のようなケースは、いずれも「途中付与の原則」に反するためルール違反となります。
7時間連続で労働させたあと、最後に45分の休憩を設けてそのまま帰宅させる
始業時間前に45分の休憩を取らせたあと、7時間連続で労働させる
一斉付与の原則
休憩時間は、原則として「事業場の従業員に一斉に」与えなければならないというルールです。しかし、シフト制を採用している職場やテレワーク環境などでは、全員が一斉に休憩を取ることが難しいケースが多いでしょう。
そこで労働基準法では、「労使協定」を締結しておくことで、従業員ごとに異なる時間帯で個別に休憩を付与すること(一斉付与の適用除外)を認めています。交代制のシフトを組む場合は、労使協定を締結しておきましょう。
なお、『労働基準法施行規則』第31条により、以下のような一部業種については、法律上、最初から一斉付与の原則が除外されています。
▼一斉付与の適用が除外される業種例
運輸交通業
商業
金融・広告業
映画・演劇業
通信業
保健衛生業
接客娯楽業
官公署
▼労働基準法施行規則 第31条
第三十一条 法別表第一第四号、第八号、第九号、第十号、第十一号、第十三号及び第十四号に掲げる事業並びに官公署の事業(同表に掲げる事業を除く。)については、法第三十四条第二項の規定は、適用しない。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法施行規則』
出典:e-Gov法令検索『労働基準法施行規則』/厚生労働省 兵庫労働局『労働時間』
自由利用の原則
休憩時間は、従業員が「自由に利用できなければならない」という原則です。
休憩時間中の外出を一律に禁止したり、休憩場所や過ごし方を過度に制限したりすることは、原則として認められません。例えば、「昼休みに私用で外出してはいけない」「休憩中も常に電話に対応できるよう席を離れてはいけない」といった制限は、自由利用の原則との関係で問題となる可能性があります。
一方で、事業場内の規律や秩序を維持するために必要な最小限の制限(例:危険区域への立ち入り禁止や会社の施設を著しく汚損する行為の禁止など)は、合理的な範囲であれば就業規則で定めることが可能です。
残業時の休憩はどうなる?
実務で特にトラブルになりやすいのが、「残業が発生した日の休憩時間の扱い」です。パターン別に整理して解説します。
実働時間が8時間を超えた場合の休憩ルール
休憩時間はその日の「実働時間の合計」で判断します。そのため、残業によって1日の労働時間が8時間を超えた場合は、合計で60分以上の休憩を確保しなければなりません。
例えば、所定労働時間が8時間・休憩45分の従業員が残業する場合、
定時通りに退勤すれば45分の休憩で合法ですが、1分でも残業をすると「実働8時間超」となり、法律上は60分の休憩が必要になります。
したがって、残業に入る前などに「追加で15分以上」の休憩を付与し、1日のトータル休憩時間を60分以上に補正する必要があります。
すでに1時間以上の休憩を付与している場合
もともとの就業規則で「1日60分(1時間)」以上の休憩が設定されている企業であれば、残業によって実働時間が8時間を超えたとしても、追加で休憩を付与する必要はありません。
労働基準法における上限は「8時間超に対して60分」であり、それ以上の労働(例:10時間労働や12時間労働)になったとしても、法的に60分を超える休憩を与える義務は定められていないからです。
企業があらかじめ60分休憩を設定する理由
実働8時間ちょうどの勤務であれば、法律上は45分の休憩でも問題ありません。しかし、多くの企業では、あらかじめ「60分休憩」を採用しています。
その大きな理由は、運用を簡素化できるためです。45分休憩のままでは、わずかでも残業が発生した場合、対象者に追加で15分の休憩を付与する必要があり、シフト管理や勤怠確認の負担が増加します。最初から60分休憩としておけば、残業時の追加休憩を管理する必要がなくなるため、実務上のミスや管理工数の削減につながります。
また、従業員の健康管理やリフレッシュによる業務効率の向上を目的として、法定基準を上回る休憩時間を設定している企業も少なくありません。
管理監督者・適用除外者の休憩
労働基準法第41条では、業務の性質や職務内容を踏まえ、一部の労働者については「労働時間・休憩・休日に関する規定」の適用が除外されています。
▼労働基準法 第41条
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
出典:e-Gov法令検索『労働基準法』
労働時間・休憩・休日に関する規定の適用除外となる労働者
労働基準法第41条などでは、一部の労働者について、休憩に関する規定の適用が除外されています。ただし、対象となるのは限定的であり、「管理職」という肩書だけで適用除外になるわけではありません。
▼対象となる労働者
農業・畜産業・水産業などの従事者(林業を除く)
管理監督者
機密の事務を取り扱う者
監視・断続的労働従事者(労働基準監督署長の許可が必要)
宿日直勤務者(労働基準監督署長の許可が必要)
高度プロフェッショナル制度適用者
なお、管理監督者や高度プロフェッショナル制度適用者であっても、すべての労働基準法の規定が適用除外となるわけではありません。深夜労働に対する割増賃金や年次有給休暇、安全配慮義務などは、引き続き適用されます。
適用除外者にも適用される労働基準法上のルール
注意しなければならないのは、休憩や休日の規定が除外されるからといって、「すべての労働基準法が適用除外になるわけではない」という点です。
例えば、管理監督者であっても、以下のルールは一般の従業員と同様に適用されます。
深夜労働(22時〜翌5時)に対する割増賃金の支払い
年次有給休暇の付与義務
安全配慮義務(過重労働による健康障害の防止)
「管理職だから休憩を与えなくてもよい」として過重な勤務を命じた場合、安全配慮義務違反などに問われる可能性があります。管理監督者であっても、労働者の健康に配慮した労務管理が求められます。
出典:厚生労働省 東京労働局『しっかりマスター労働基準法 管理監督者編』
管理監督者の判断基準
実務上、特にトラブルになりやすいのが「管理監督者」の範囲です。社内で「課長」「マネージャー」といった役職名がついているからといって、自動的に労働基準法上の管理監督者になるわけではありません。適切な判断基準として、以下の要素を総合的に考慮する必要があります。
職務内容、責任と権限
経営者と一体的な立場にあり、採用や人事考課、業務執行の決定権を持っているか。
勤務態様
自身の出退勤について厳格な制限を受けず、時間の裁量があるか(遅刻・早退による減給がない等)。
待遇面
その地位と責任にふさわしい、十分な基本給や役職手当が支給されているか。
実態が伴っていないにもかかわらず、残業代や休憩の適用を除外する「名ばかり管理職」の運用は、労働基準監督署からの是正勧告や、将来的な未払い残業代の遡及請求といった大きな経営リスクに直結します。
休憩時間に違反した場合の罰則
休憩時間の付与義務を怠った場合、企業や労務管理の責任者は法律に基づき処罰される可能性があります。
休憩時間の違反となる主なケース
休憩時間に関する違反は、「休憩を与えているつもり」でも、労働基準法上の要件を満たしていないことで発生するケースが少なくありません。
法定休憩時間の不足
実働時間が8時間を超えているにもかかわらず、45分しか休憩を与えていない
休憩中の業務対応(名ばかり休憩)
「休憩室で待機し、電話が鳴ったら対応する」「来客があれば受付対応をする」といった指示を出している
一斉付与の原則違反
労使協定を締結していないにもかかわらず、店舗運営などの都合で従業員に交代で休憩を取得させている
途中付与の原則違反
業務が忙しく休憩を取れなかったため、「その分早く退勤してよい」として、休憩時間を勤務終了後に振り替える
これらの違反が認められた場合、労働基準法違反として是正勧告や罰則の対象となる可能性があります。日頃から休憩時間の運用ルールや勤怠管理の方法を見直しておくことが重要です。
休憩時間の違反が企業にもたらすリスク
労働基準法第119条に基づき、労働時間・休憩・休日に関する規定に違反した者には「6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」という刑事罰が科される可能性があります。
▼労働基準法 第119条
第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第六項、第三十七条、第三十九条(第七項を除く。)、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
ただし、いきなり刑事罰が科されるケースは多くありません。一般的には、従業員の申告や立ち入り調査によって発覚し、労働基準監督署から「是正勧告(行政指導)」を受けることになります。
是正勧告を受けると、企業には以下のようなリスクが発生します。
企業イメージ・採用力の低下
コンプライアンス体制への評価が下がり、求職者から「ブラック企業」と敬遠されるリスク
未払い残業代の遡及請求
「休憩中に電話番をさせられていた時間」が労働時間として再計算され、過去にさかのぼって多額の割増賃金の支払いを命じられるリスク
日頃から「形だけの休憩」になっていないか、打刻実態と照らし合わせて運用ルールを徹底することが重要です。
出典:e-Gov法令検索『労働基準法』
テレワーク時の休憩時間
場所を選ばない働き方であるテレワークであっても、労働基準法をはじめとする労働関係法令はすべてそのまま適用されます。
テレワークでも休憩付与は必要
企業は、テレワーク勤務者に対してもオフィス勤務者と同じ基準(実働6時間超なら45分以上、8時間超なら60分以上)で、労働の途中に休憩を与えなければなりません。労働者が「労働から完全に離れる権利」を、会社として仕組み上保障する必要があります。
一斉付与の原則は適用除外にできる
テレワークでは、それぞれの家庭環境や業務のリズムに合わせて柔軟に働けることがメリットの一つです。そのため、オフィスのように全員が一斉に同じ時間帯で休憩を取ることがなじまない場面も多くあります。
この場合も、事前に「一斉付与の適用除外に関する労使協定」を締結しておくことで、従業員個々の裁量やライフスタイルに応じたタイミングでの休憩取得が可能になります。
中抜け時間の取り扱い
テレワーク中に「子どもの保育園の送迎」「通院」「急な家事」などのために、一時的に業務を離れる「中抜け時間」が発生することがあります。中抜け時間の管理方法は、企業があらかじめルールを定めておく必要があります。
一般的な処理方法としては、以下の2パターンが挙げられます。
中抜け時間を「休憩時間」として扱う
中抜けした時間分、終業時刻を後ろ倒しにして所定労働時間を満たす方法です。全体の労働時間は変わりません。
中抜け時間を「時間単位の年次有給休暇」として処理する
終業時刻を後ろ倒しにせず、中抜けした時間を有給休暇として相殺する方法です(※事前に時間単位有給の労使協定が必要です)。
テレワーク運用時のトラブルを防ぐためにも、中抜け時の「チャットツールでの連絡方法」や「勤怠システムへの打刻・申請ルール」を就業規則(テレワーク勤務規程など)に明記しておきましょう。
休憩時間を従業員に付与する際のポイント
休憩時間を従業員に付与する際は、労働基準法が労働者全員に適用されることを押さえておく必要があります。また、忙しい業務のなかで法令に沿った休憩時間を確保するには、休憩時間の分割やシフト管理システムの導入などの施策が有効です。
①雇用形態による差を設けない
労働基準法は正社員だけでなくパート・アルバイトにも適用されるため、休憩時間の付与についても雇用形態による差が生じないようにする必要があります。
ただし、正社員とパート・アルバイトで労働時間が異なる場合には、労働基準法第34条1項により付与する休憩時間に違いが生じるケースもあります。
出典:e-Gov法令検索『労働基準法』
②まとまった時間を確保できない場合は分割して付与する
休憩時間は分割して付与することが認められているため、業務上まとまった時間を確保できない場合には休憩時間の分割が有効です。
ただし、分割した時間が短すぎると自由利用の原則に事実上反するとみなされ、休憩時間と認められない可能性があります。
③シフト管理システムを導入する
従業員に付与する休憩時間を管理するには、シフト管理システムの導入が有効です。パート・アルバイトなど勤務時間が異なる従業員がいる場合、それぞれの労働時間に合わせた休憩時間の管理が煩雑になりやすいといえます。
シフト管理システムを導入して各従業員の勤怠状況を可視化することで、従業員の休憩時間を効率的に管理できるようになるほか、法令違反のリスクを軽減できます。
なお、勤怠管理における休憩時間の把握についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
労働における休憩時間に関するよくある質問
Q. 6時間ちょうどの勤務で休憩は必要ですか?
A. 法律上、休憩を与える義務はありません。
労働基準法では「6時間を超える」場合に休憩が必要とされているため、6時間ジャストであれば休憩なしで勤務させても違法にはなりません。ただし、業務が長引いて6時間を超える見込みがある場合は、労働時間の途中で45分以上の休憩を確保する必要が出てくるため、実務上はあらかじめ休憩時間を設けておく運用としている企業も少なくありません。
Q. 休憩時間中に電話番をさせることは問題ありますか?
A. 明確な労働基準法違反(休憩の自由利用原則の違反)となります。
「電話が鳴らなければ休んでいていいよ」という状態であっても、それはいつでも対応しなければならない「手待時間(労働時間)」とみなされます。もし電話番をさせた場合は、その時間は労働時間として扱い、賃金を支払う必要があります。さらに、法定休憩時間が不足する場合は、労働時間の途中に別途休憩を与える必要があります。
Q. テレワーク中の休憩時間は、オフィス勤務と同じ時間帯にする必要がありますか?
A. 必ずしも同じにする必要はありません。
一斉付与の適用除外に関する労使協定を締結していれば、テレワーク従業員ごとに柔軟な時間帯に休憩を設定・取得させることが可能です。オフィス勤務者と完全に同期させる必要はありませんが、会社として「何時から何時まで休憩を取ったか」をチャット等で報告させ、客観的に把握できるようにしておく仕組みは不可欠です。
Q. テレワーク中に子どもの送迎で30分離席した場合、どう扱えばよいですか?
A. 会社のルール(就業規則)に基づき、「休憩時間の追加・分割」か「時間単位の有給休暇」などで処理します。
あらかじめ就業規則に「中抜け時はその分終業時刻を繰り下げる」と定めてあれば、30分間を休憩として扱い、その日の定時を30分後ろにずらして所定労働時間を消化させます。突発的な離席で終業時刻を後ろ倒しにできない場合は、事後申請等で「時間単位の年次有給休暇」に振り替えるなどの運用が一般的です。
まとめ
この記事では、労働基準法に規定された休憩時間について解説しました。
労働基準法に沿った休憩時間の運用では、実働時間に応じた休憩時間の付与や、残業発生時の対応、テレワーク勤務者を含めた休憩管理など、日々のシフト・勤怠管理が重要になります。従業員数が多い職場や勤務形態が多様な職場では、手作業による管理では対応漏れや法令違反のリスクが高まることもあります。
『シフオプ』は、シフト作成から勤怠管理までを一元化できるシフト管理システムです。勤務時間や休憩時間を可視化しながら運用できるため、法令を意識したシフト管理の効率化にも役立ちます。休憩時間を含めたシフト・勤怠管理の見直しを検討している方は、ぜひシフオプの導入をご検討ください。
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