
労働基準法とは? 賃金・労働時間・時間外労働のルールを分かりやすく解説
※2019年1月7日公開の記事に修正を加えています。
従業員を雇用する際は、労働基準法を厳守する必要があります。
労働基準法には、労働時間や休日、賃金の支払いなどに関するさまざまなルールが定められており、原則すべての労働者に適用されます。
法令違反をはじめ、労働契約や雇用をめぐる従業員とのトラブルを防ぐためにも、労働基準法のルールを把握したうえで、適切な労務管理を行うことが大切です。
本記事では、労働基準法の概要とともに、法律で定められた労働時間や残業、休日のルールなどについて分かりやすく解説します。
目次[非表示]
労働基準法とは
労働基準法とは、労働条件に関する最低基準を定めた法律です。使用者が遵守する事項や罰則について規定されており、労働基準監督機関によって監督されています。
労働基準法で定められている規定には、主に以下が挙げられます。
▼労働基準法の規定内容
- 賃金支払いの原則
- 労働時間の原則
- 時間外労働・休日労働
- 割増賃金
- 解雇予告
- 有期労働契約
- 年次有給休暇
- 就業規則 など
これらの規定は、国家公務員などの一部の労働者を除いて、日本国内におけるすべての労働者に原則適用されます。
労働に関するルールを適切に遵守することで、従業員にとっても安心して働きやすい職場となり、早期退職や労使間トラブルを防止することにもつながります。
出典:厚生労働省『労働基準法はどのような場合に適用されるのですか。』『労働基準に関する法制度』
賃金の支払いに関するルール
『労働基準法』第24条では、賃金の支払いに関する5つの原則として以下のルールを定めています。
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
引用元:e-Gov検索『労働基準法』第24条
▼賃金支払いの5原則
- 通貨
- 直接労働者へ
- 全額
- 毎月1回以上
- 一定の期日を定める
この5原則には、賃金支払いに関する労働者の生活上の不安や、計画的生活が困難になることを防ぐ目的があります。本人が認めた場合や源泉徴収などを除いて、労働者本人以外に賃金を支払うことも原則認められておらず、実際に働いた人に全額支払う必要があります。
また、給与の支払いを一部保留にしたり、現金の代わりに物品を支給したりすることは、原則法律で禁止されています。
ただし、同法第24条には、特段で定めがある場合において、通貨以外で給与を支払ったり、賃金の一部を控除して支払ったりできる場合もあると記されています。
出典:厚生労働省『賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。』/e-Gov法令検索『労働基準法』
労働時間・休日・休憩に関するルール
労働基準法では、労働時間・休日・休憩についてそれぞれ規定があります。
▼労働時間・休日・休憩の原則
労働時間 |
1日に8時間、また、1週間に40時間以内 |
休日 |
毎週1日、もしくは4週間を通じて4日以上 |
休憩時間 |
6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上 |
厚生労働省『労働時間・休日』を基に作成
上記のうち、労働時間に関する原則を“法定労働時間”、休日に関する原則を“法定休日”と呼びます。
また、労働基準法で定められている労働時間には、通常の法定労働時間のルールとは異なる労働時間制があります。
①変形労働時間制
変形労働時間とは、一定期間を平均して、その期間内の労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、特定の日・週に法定労働時間を超えて労働できる制度です。
ここでいう一定期間とは、1週間・1ヶ月・1年を指します。変形労働時間制は、シフト制勤務や繁閑期によって業務量に差がある場合に採用されています。
②フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、一定期間の総労働時間を定めて、その範囲内で始業・終業時刻を労働者が自主的に決定できる勤務制度です。
総労働時間については、労使協定において、1ヶ月以内を平均して1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内で定めなければなりません。
また、フレックスタイム制を採用する場合は、就業規則に規定することに加えて、労使協定で以下の事項を定める必要があります。
▼労使協定で定める事項
①対象となる労働者の範囲
②清算期間
③清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
④標準となる1⽇の労働時間
⑤コアタイム(※任意)
⑥フレキシブルタイム(※任意)
引用元:厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』
出典:厚生労働省『労働時間・休日』『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』『労働時間制度の概要』
③みなし労働時間制
みなし労働時間制度とは、実際の労働時間数とは関係なく、労使協定で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。
3種類にわけられて、それぞれ業務内容や職種などによって異なります。
▼みなし労働時間制の種類
種類 |
職種例 |
事業場外みなし労働時間制 |
直行・直帰が多い営業職や労働時間の計算が難しい職種 |
専門業務型裁量労働制 |
デザイナーやシステムエンジニアなどの職種 |
企画業務型裁量労働制 |
事業運営の企画・立案・分析を行う職種 |
時間外労働・休日労働に関するルール
労働基準法には、法定労働時間を超える時間外労働や休日労働に関するルールも定められています。
時間外労働
労使協定を締結することで、⽉45時間・年360時間という限度時間の範囲内で時間外労働が認められています。
臨時的に限度時間を超える時間外労働をさせる際に、特別な事情がある場合は、特別条項付きの労使協定を締結します。
ただし、特別条項付きの労使協定を締結した場合でも、以下の時間を超えて時間外労働をさせることはできないため注意が必要です。
▼時間外労働の上限
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
- 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは年6ヶ月まで
従業員と労使協定を締結する際のポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』『時間外労働の上限規制』
休日労働
休日は、原則として毎週1日、もしくは4週間を通じて4日以上の休日を与えることが義務づけられています。この法定休⽇に働かせる場合には、労使協定の締結が必要です。
時間外労働と同じく、労使協定を締結すれば休日労働させることが認められますが、休日労働できる日数には上限が定められています。
臨時的、または特別な事情があって、特別条項付きの労使協定を締結した場合でも、以下を超えて休日労働をさせることはできません。
▼休日労働の上限
- 時間外労働・休⽇労働の合計が複数月平均で80時間以内(2ヶ月・3ヶ月・4ヶ月・5ヶ月・6ヶ月平均)
- 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
なお、“複数月の平均が月80時間”とは、1日あたり約4時間程度の残業に相当します。
出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』『労働時間・休日』
割増賃金に関するルール
使用者は、法定労働時間を超えた労働に対して割増賃金の支払いが必要です。
割増賃金には、時間外労働・休日労働・深夜業に対するものがあり、それぞれ割増率賃金率が異なります。
▼割増賃金率
種類 |
割増率 |
時間外労働 |
1.25倍以上 |
休日労働 |
1.35倍以上 |
深夜業 |
1.25倍以上 |
厚生労働省『法定労働時間と割増賃金について教えてください。』を基に作成
なお、時間外労働・休日労働が深夜業となる場合、割増賃金を重複して支払います。ただし、休日労働の場合は、時間外労働に対する割増賃金とは重複しません。
▼割増賃金の算出例(時給1,200円で10時から21時まで労働した場合)
実働時間10時間・休憩時間1時間、時間外手当は2時間分になる。
|
割増賃金の詳しい内容については、こちらの記事をご確認ください。
出典:厚生労働省『法定労働時間と割増賃金について教えてください。』
年次有給休暇に関するルール
年次有給休暇は、雇入れの日から6ヶ月間継続勤務して、全労働時間の8割以上出勤した労働者に対して最低10日を付与することが定められています。
アルバイト・パートタイム労働者などの労働時間が少ない従業員については、勤務日数に応じて付与される仕組みです。
また、2019年の労働基準法改正によって、年次有給休暇が10日以上付与される労働者には年5日間を確実に取得させることが義務づけられました。
年次有給休暇の請求権には2年の時効があり、前年度に取得されていない日数は翌年度に繰り越して与える必要があります。有給休暇を取得した従業員に対して、不利益となる取扱いをすることも禁止されています。
出典:厚生労働省『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』
労働契約・就業規則に関するルール
労働基準法では、労働契約の締結・変更について、以下の原則に基づくことが定められています。
▼労働契約の基本原則
(1)労使の対等の立場によること
(2)就業の実態に応じて、均衡を考慮すること
(3)仕事と生活の調和に配慮すること
(4)信義に従い誠実に行動しなければならず、権利を濫用してはならないこと
引用元:厚生労働省『労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール』
そのほか、労使間のトラブルを防止するために、契約期間や就業規則、解雇についてのルールが定められています。
出典:厚生労働省『労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール』
労働条件の明示
使用者が労働者と労働契約を締結するにあたっては、労働時間や賃金などの労働条件を書面などで明示する必要があります。
▼絶対的必要記載事項
労働時間関係 |
始業・終業時刻、休憩時間、休日などに関する事項 |
賃金関係 |
賃金の決定、計算方法、支払い方法、賃金の締め切りや支払時期、昇給などに関する事項 |
退職関係 |
解雇の事由を含む退職に関する事項 |
出典:厚生労働省『モデル就業規則』
契約期間
契約期間が定められている有期労働契約を締結する場合は、原則として上限3年までとなります。ただし、専門的な知識を有する労働者、満60歳以上の労働者については上限5年とされています。
有期労働契約は、パートタイム労働や派遣労働などの非正規社員の労働形態に多い労働契約です。このような従業員を雇い入れる際は、契約期間を必要以上に細かく設定しないような配慮が求められます。
出典:厚生労働省『労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール』『労働契約法改正のあらまし』
労働契約・就業規則の変更
従業員との労働契約を変更する場合には、労働者と使用者の両者が合意する必要があります。就業規則に定める労働条件を下回る、または労働者にとって不利益となる条件に変更することはできません。
また、就業規則を変更する際、常時10人以上の労働者を有する事業場の場合は、所轄の労働基準監督署長へ届け出ます。
なお、有期労働契約に関する事項を変更する場合には、有期雇用労働者の過半数の代表であると認められる労働者の意見を聞くように努めることが求められます。
出典:厚生労働省『労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール』『モデル就業規則』
解雇予告
従業員の解雇については、社会の常識に照らして客観的・合理的な理由がなければ認められません。たとえ合理的な理由があったとしても、労働者を解雇する際は30日前に予告することが定められています。
従業員が業務上の失敗をしたり、業務態度に問題があったりしても、すぐに解雇が認められるわけではないことに注意が必要です。
解雇が正当なものか認められるには、労働者の落ち度や行為の内容、会社が被った被害などの事情が考慮されます。
なお、予告なく解雇する場合には、30日以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
出典:厚生労働省『労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール』『労働契約の終了に関するルール』
まとめ
この記事では、労働基準法で定められたルールについて、以下の内容を解説しました。
- 労働基準法の概要
- 賃金の支払い
- 労働時間・休日・休憩
- 時間外労働・休日労働
- 割増賃金
- 年次有給休暇
- 労働契約・就業規則・解雇
労働基準法では、労働時間や休日、時間外労働、賃金などさまざまなルールが定められています。法令違反を防ぎ、従業員が安心して働ける職場をつくるためには、適切な労務管理が欠かせません。
なかでも労働時間や時間外労働、年次有給休暇などに関するルールは、シフト作成時に確認しておくことが重要です。
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