
企業コンプライアンスと内部統制。強化する方法と気をつけるポイント
※2023年9月8日更新
近年、企業経営のあり方が変化してきています。利益を追求することにのみ重きを置いていた時代は終わり、企業の活動は社会的責任を果たすことにも目が向けられるようになりました。そのカギとなるのが企業コンプライアンスと内部統制です。
企業コンプライアンスを重視した経営を行っていくには、組織の内部統制を図るための取り組みが欠かせません。企業の担当者さまのなかには「企業コンプライアンスと内部統制にはどのような関係性があるのか」「何から取り組めばよいのか」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、企業コンプライアンスと内部統制の基礎知識や取り組む方法について解説します。
目次[非表示]
企業コンプライアンスとは
コンプライアンスとは、法令遵守を意味する言葉です。企業においては、国が定めた法律を遵守することにとどまらず、社会的な良識や倫理規範、就業規則、道徳、マナーを守る意味が含まれています。
近年、企業が社会に与える影響は大きくなっており、社会を構成する一員として人権や環境などに配慮した行動をとることが社会的責任として強く求められています。
また、さまざまな不祥事に対して社会から厳しい目を向けられるようになっている状況下では、企業活動の透明性を高めてステークホルダーの信頼を得ていくことも重要とされています。このような背景から、企業コンプライアンスを徹底するための取り組みが重要とされています。
企業コンプライアンスと内部統制の関係性
内部統制とは、目的に応じて組織を整備して健全に業務を遂行するための仕組みを指します。企業における利益の追求に加えて、企業コンプライアンスを徹底するための手段として内部統制が必要になります。
内部統制には、企業の事業活動を支援する4つの目的と、その目的を達成するために必要とされる6つの基本的要素があります。
▼内部統制の4つの目的
- 業務の有効性および効率性
- 財務報告の信頼性
- 事業活動にかかわる法令等の遵守
- 資産の保全
▼内部統制の基本的要素
要素 |
内容 |
1.統制環境 |
組織の意識や行動、姿勢などの内部統制を行うための基盤 |
2.リスクの評価と対応 |
組織目標の達成を阻害するリスクの識別・分析・評価するプロセスを構築する |
3.統制活動 |
経営者の命令・指示が適切に実行されるために、職務の方針を決定して、権限や職責などを明確にする |
4.情報と伝達 |
職務に必要な情報について、組織内外や関係者が相互に正しく識別・処理・共有できる仕組みを確保する |
5.モニタリング |
内部統制が機能していることを継続的に監視・評価するプロセスを構築する |
6.IT(情報技術)への対応 |
内部統制の有効性を確保するためにITの効率的な活用と保守運用ができる環境を整備する |
内部統制による企業コンプライアンス強化のメリット
内部統制に取り組んで企業コンプライアンスを強化すると、企業にさまざまなメリットがもたらされることが期待できます。
①健全で効率的な経営を実現しやすくなる
1つ目のメリットは、健全で効率的な経営を実現しやすくなることです。
内部統制によって職務の方針や各従業員の役割を明確にしたり、IT活用によって情報共有ができる体制を構築したりすることで、ワークフローが改善されて業務の効率化を図れます。
また、組織の行動規範や業務マニュアルを整備して、ルールに則った職務の運用とチェック体制を実現できると、従業員による内部不正を防ぐことも可能です。
②消費者や投資家による信頼の獲得につながる
2つ目のメリットは、社会的な信頼の獲得につながることです。
企業コンプライアンスを徹底することは、社会的責任を果たしている企業として社会的な評価につながります。また、内部統制の取り組みを通じて財務報告の信頼性を確保すると、消費者や投資家などの利害関係者からの信頼を得ることにもつながると考えられます。
③働きやすい職場環境を構築できる
3つ目のメリットは、働きやすい職場環境を構築できることです。
内部統制の取り組みによって企業コンプライアンスの強化を図ることで、サービス残業やハラスメントが抑制されると考えられます。
また、雇用・昇進・給与などの人的資源に関する方針を定めて、能力を最大限に発揮できたり、適正な人事評価を受けられたりする仕組みを整えることは、従業員のモチベーション向上にもつながります。
このように従業員にとって働きやすい職場環境を構築することは、人材の定着や優秀な人材の確保にも結びつくと考えられます。
内部統制の取り組みで気をつけるポイント
内部統制によって企業コンプライアンスを徹底することは、企業と従業員にとってさまざまなメリットが期待できますが、いくつか気をつけるポイントもあります。
内部統制の仕組みを継続的に監視・評価する
内部統制の仕組みを構築したあとは、継続的に運用体制を監視・評価することが重要です。従業員の意識や運用体制に問題がある場合には、内部統制の仕組みが形骸化してしまうリスクがあります。
▼内部統制が形骸化することによるリスク
- 商品・サービスの品質低下が見逃されてしまい、顧客離れやトラブルに発展する
- 企業コンプライアンス違反が黙認されてしまい、従業員のモラルが低下する
- 会社の不誠実な態度に不満を抱く従業員が離職してしまう
内部統制の有効性を維持し続けるためには、仕組みをつくって終わりではなく、適切な運用がされているかを常に監視・評価することが重要です。
従業員との信頼関係を築く
従業員との信頼関係を築くことも、内部統制に取り組むためのポイントの一つです。内部統制は、経営層の命令・指示だけで実現できるものではなく、すべての従業員と価値観や意識、姿勢などの考え方を共有して取り組む必要があります。
現場の課題やニーズを考慮せずに、厳しい行動規範を設けたり、ワークフローの変更などを行ったりすると従業員の反発を生む可能性があります。
経営者層の意向や内部統制の目的を共有したうえで、従業員との相互理解を深めながら内部統制の実現に向けた体制を整備していくことが重要です。
内部統制によって企業コンプライアンスを強化する方法
ここからは、内部統制の取り組みを通して企業コンプライアンスを強化する方法について解説します。
①企業理念や経営方針を整備する
内部統制に取り組むにあたって、企業理念と経営方針を整備します。
企業理念と経営方針は、企業の考え方を反映する重要な要素の一つとなり、倫理規定や行動指針を作成するための基盤となります。
経営者の価値観や意向などを踏まえて企業理念と経営方針を策定することで、それらを実現するための具体的な体制を検討できるようになります。
②従業員への企業コンプライアンス教育を実施する
内部統制を実現するための活動の一つに、従業員への企業コンプライアンス教育が挙げられます。
企業理念と経営方針に基づいた行動規範や業務マニュアルを策定すると、従業員がとる行動が明確になり企業コンプライアンスの遵守につながります。
▼企業コンプライアンス教育の取り組み例
- 職務内容や職位に応じた業務研修を実施する
- 企業コンプライアンスの遵守を啓発するセミナーを実施する
③労務管理を電子化する
労働時間や休日などの労務に関する企業コンプライアンスを遵守するために、ITを活用して労務管理の電子化を行う方法があります。
紙媒体のシフト表やタイムカードなどで労務管理を行っている場合、従業員一人ひとりの労働時間を把握しにくいほか、集計ミスが発生するリスクがあります。これにより、長時間労働に気がつかなかったり、残業代を正しく支払えていなかったりする問題につながりやすくなります。
ITを活用して労務管理を電子化することによって、労働時間や休日数などを一元管理できるようになり、業務の効率化と企業コンプライアンスの遵守を実現できます。
▼ITを活用して労務管理を電子化する方法
- 勤怠管理システムを導入して、打刻の状況を可視化・管理する
- 給与計算システムに勤怠データを取り込んで給与計算を自動化する
- シフト管理システムを導入して、シフト作成時に法令チェックを実施する
なお、シフト勤務に関する労働基準法のルールについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
この記事では、企業コンプライアンスと内部統制について以下の内容を解説しました。
- 企業コンプライアンスの意味
- 企業コンプライアンスと内部統制の関係性
- 内部統制による企業コンプライアンス強化のメリット
- 内部統制の取り組みで気をつけるポイント
- 企業コンプライアンスを強化する方法
企業の社会的責任に対する意識が高まる今、内部統制に取り組み企業コンプライアンスの強化を図ることは重要な経営課題の一つとなっています。
内部統制に取り組む際は、企業理念や経営方針を整備すること、従業員への教育を行うこと、ITを活用して労務管理を電子化することが有効です。
ただし、内部統制の仕組みが形骸化したり、従業員の反発を生んだりするリスクもあります。内部統制の有効性を確保・維持するために、継続的な監視・評価を行うとともに、従業員との信頼関係を構築して意識づけを行うことが重要です。
また、労務に関する企業コンプライアンスの強化にはITの活用がおすすめです。シフト管理システムの『シフオプ』は、シフトの作成時の労務違反をチェックしてアラートを表示したり、労働時間を自動で算出したりする機能が備わっています。
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