
これも労働基準法違反?! アルバイト雇用時に気をつけたい労働基準法
雇用形態がアルバイトやパートであっても、雇用契約を締結する以上、労働基準法をしっかりと守らなければなりません。
労働条件や賃金、休日の付与などの適切な対応ができていないと、法律違反となり企業が罰則を受けることになります。
ここでは、うっかり見落としてしまいがちな、アルバイトやパートに対しての労働基準法違反について、詳しく紹介します。
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労働基準法はすべての使用者・労働者に適用される
一般的に使用者と労働者が対等になることは難しく、どうしても使用者側が優位になってしまいがちです。
民法においては、契約の自由という権利において、好きなように契約を結べます。しかし、ときとして労働者を虐げるような契約になってしまうこともあります。労働基準法とは、そのような弱者になってしまいがちな労働者を守るために制定された法律です。
労働基準法では、労働契約・賃金・労働時間、安全衛生・災害補償・就業規則など、労働条件の最低基準を定めています。
労働契約において、労働基準(労働条件に関する最低基準)に満たない条件で契約を結んでいた場合、その労働契約の内容は無効となり、労働基準法が自動的に適用されることとなります。
このように、労働者の権利は最低限度保証されています。
経営者が従業員を雇用するにあたり、労働基準法遵守を意識していることは当然といえます。
しかし、アルバイトやパートタイマーなどを多く抱える企業では、管理が行き届かず、気づかないうちに法令違反が起きているケースも。労働基準法は、正社員だけではなくすべての労働者に適用されるため、アルバイトやパートタイマーであっても正社員と同じ対応が必要です。
会社の規模が大きくなるほど従業員一人ひとりの管理が難しくなるため、危険を見落とさないよう、しっかりとした労務管理体制が必要です。
アルバイトに対する労働基準法違反~給与編~
アルバイトに対する賃金について、労働基準法違反になる一例を紹介します。
最低賃金を下回る時給設定
最低賃金法 第4条1項
使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
(出典:厚生労働省「最低賃金制度とは」)
日本では“最低賃金法”という法律があり、1時間当たりの最低賃金を都道府県ごとに制定しています。この額よりも低い賃金を設定することはできないほか、最低賃金額より低い賃金を設定すると、労働者と使用者の双方に合意がある場合でも、法律で無効となり、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされます。違反した場合は、50万円以下の罰金が科せられます。
最低賃金は毎年更新されるものですが、契約当時から時給を変えていない場合には、いつのまにか最低賃金を下回っている可能性があるため注意が必要です。
限度を超えた減給制裁
就業規則に減給に関する定めがあり、減給の対象となる行為が明確化されている場合は、限度内での賃金の減給措置が認められています。
労働基準法 第91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
(出典:厚生労働省「労働基準法」)
ただし、限度を超えた減給制裁は当然法律違反となります。常識の範囲を超える減給制裁は設定しないよう注意しましょう。
時間外手当の付与漏れ
労働基準法 第37条(一部抜粋)
労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
(出典:厚生労働省「労働基準法」)
使用者は、法定時間外労働(1日8時間、1週40時間 ※特別措置事業場は1週44時間)を超える時間外労働を行わせた場合に、2割5分以上の割増賃金の支払いが義務付けられています。
また、1か月60時間を超える法定時間外労働には、5割以上の割増賃金を支払わなければなりません。
なお、その他の割増賃金には、22時~午前5時までの深夜労働に2割5分以上、法定休日労働に3割5分以上と定められています。
アルバイトやパートタイマーを雇用する職場ではシフト制も多いため、一人ひとりの勤務時間を把握することが難しく、気づかないうちに法定時間外労働が起きている可能性があります。割増賃金を適切に支払うためには、労働時間を正しく記録することはもちろん、シフト作成時から法定時間外労働が起きないよう調整することが重要です。
アルバイトに対する労働基準法違反~社内規定編~
企業には労働者の就業に関する規律や労働条件を定めた、就業規則という規定があります。賃金や休日など必ず明記が必要な項目のほかに、企業によって定められるルールがあります。
ただし、この就業規則は必ず労働基準法を遵守した内容でなければなりません。
労働基準法に反した就業規則は無効となるほか、法律違反として罰則を受けることもあります。
就業規則は、従業員保護の観点だけでなく、万が一労使間でトラブルが起きた場合に、どちらかが不利にならないためにも重要な取り決めです。自社の就業規則が違反していないか、再確認してみましょう。
罰金制度の導入
労働基準法 第16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
(出典:厚生労働省「労働基準法」)
仕事上のミスや退職に対して、違約金や損害賠償額の予定を決めることは禁止されています。罰金の事由として禁止されている一例には、ノルマを達成できなかったこと、勤務中に物を破損したこと、雇用期間内に退職したことに対する罰金などが挙げられます。このような事例が起きた場合でも、使用者は従業員に罰金を取ることはできません。
ノルマの設定
上述したように、目標ノルマに達成しなかった場合に罰金を支払うよう定めることは禁止されています。また、罰金以外の手段として、売れなかった商品を従業員に自腹で買い取るよう強いる行為も法律違反となる場合があります。
企業が従業員に買い取りを命じ、一方的に給与から天引きした場合などは、“賃金全額払いの原則”に違法するものとして、以下の法律に違反します。
労働基準法 第24条(一部抜粋)
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
(出典:厚生労働省「労働基準法」)
遅刻、欠勤のペナルティー
使用者が行う従業員の労働に対する不利益措置として、“懲戒処分”が挙げられます。
遅刻や欠勤などが続く従業員に対して、懲戒処分としてペナルティーを課すことは可能なのでしょうか。
労働基準法第89条において義務付けられている就業規則ですが、この記載内容に含まれるものとして、“表彰、制裁に関する事項”があります。
表彰とは、企業の業績に貢献した際などに賞状や賞金を授与するものであり、制裁とは従業員が故意や過失で企業に損害を与えた場合や、正当な理由なく欠勤や遅刻が続いた場合などに情状に応じて懲戒を行う制度です。
ただし、懲戒処分を命じるためにはその理由や自由を就業規則に明記しなければならないため、明記がない場合には懲戒処分としてペナルティーを課すことはできません。
また、懲戒できる事由に労基法上の制限はないため、懲戒事由に客観的な合理性がない場合には、懲戒権の濫用と判断されるケースもあります。(以下条文)
労働契約法 第15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
(出典:厚生労働省「労働契約法」)
減給や出勤停止ではなく、罰掃除などのペナルティーについては、業務命令として認められる場合があります。ただし、業務の内容や労働者の不利益などを考慮して裁量権の濫用と認められる場合は違法となるため注意しましょう。(労働契約法第3条)
労働契約法第3条(一部抜粋)
労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
(出典:厚生労働省「労働契約法」)
予告・手当支給のない解雇
労働者に予告なく解雇を言い渡したり、手当を支給しない場合は法律違反となります。
労働基準法 第20条(一部抜粋)
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
(出典:厚生労働省「労働基準法」)
解雇の通知は30日以上前に行わなければならず、30日前に予告がなければ30日分の賃金を支払う義務があります。
有給休暇の付与漏れ
2019年4月から始まった働き方改革によって、有給休暇に関する法律が新たに変わりました。これまで有給休暇の付与は使用者の義務ではありませんでしたが、条件を満たす従業員に対して、付与が義務付けられるようになりました。
また、すべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要です。
(出典:厚生労働省「年次有給休暇の時季指定義務」)
対象者は、半年間継続して雇用している、全労働日の8割以上を出勤している、という2点を満たす労働者のうち、年次有給休暇が10日以上付与される労働者となります。
使用者は労働者の意見を聞き取りし、できるだけ希望を尊重して取得させる必要があるため、「同日に希望者が集中していた業務が回らない」といった特別な理由がない限り、申請を取り下げてしまうことはNGです。
アルバイトに対する労働基準法違反~労働時間編~
時間外労働が日常的に起きている職場では、労働基準法違反のリスクも高まります。
長時間勤務や適切に休日を付与していないという状況は、労働基準法違反とみなされます。
以下では、見落としがちなアルバイトに対する労働基準法違反のなかで、もっとも身近な“労働時間”について解説します。
休憩時間の付与漏れ
時間給で働いているアルバイトの場合、休憩時間をつい見落としてしまうことがあります。労働基準法では、休憩時間について次のように定めています。
労働基準法第 34条1項
使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
(出典:厚生労働省「労働基準法」)
6時間以上8時間未満の連続勤務の場合には最低45分、8時間以上の場合には最低1時間の休憩を与えなければなりません。
従業員が休憩を不要とする場合においても、休憩を付与しない、あるいは短時間しか与えない場合は法律違反となります。
なお、休憩時間には3つの原則があり、労働時間の途中であること、一斉に取得すること、自由に利用できることが定められています。勤務時間の最後に取得することや、いわゆる“手待ち”時間は休憩時間に含まれないため注意しましょう。
労働基準法第 34条2項、3項(一部抜粋)
② 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。
③ 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
(出典:厚生労働省「労働基準法」)
無給の拘束時間
労働時間として該当する場合には、必ず決められた賃金を支払う必要があります。
労働基準法では、次の判例において労働時間が定義されています。
労働時間とは
使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます
(平成12年3月9日最高裁第一小法廷判決 三菱重工長崎造船所事件)。
(出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)
そしてこれらは、労働契約や就業規則などによって決めるものではなく、客観的にみて労働者の行為が使用者から義務付けられているものか否かによって判断されます。そのため、就業規則で定めた所定労働時間とは一致しない場合があります。
労働時間に該当する行為には、以下が挙げられています。
① 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を 義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した 後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
② 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められて おり、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間 (いわゆる「手待時間」)
③ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
(出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)
業務就業“前”に行う朝礼や清掃などは、労働時間に当てはまります。
業務に関係する手待ち時間や研修なども同様に含まれるため、無給で働かせることは法律違反となります。
18歳未満の深夜勤務
22時から午前5時までの勤務は深夜勤務とされています。満18歳未満の年少者においては、原則として深夜に働かせてはいけないと定められています。
労働基準法 第61条
使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によつて使用する満十六才以上の男性については、この限りでない。
(出典:厚生労働省「労働基準法」)
なお、満18歳未満の年少者には、就業してはいけない業務が定められているほか、親権者や後見人が変わって労働契約を結ぶことも禁止されています。
労働基準法 第58条
親権者又は後見人は、未成年者に代つて労働契約を締結してはならない。
(出典:厚生労働省「労働基準法」)
連勤による休日不足
シフト制勤務ではシフトの組み方によって連勤が起きやすいため、法定休日がしっかり付与できているか把握する必要があります。
労働基準法 第35条
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
(出典:厚生労働省「労働基準法」)
つまり、週に最低1日、あるいは4週通じて4日以上の休日を付与しなければなりません。従業員が出勤を希望する場合でも働かせることはできないため、シフト作成時には一人ひとりの休日数を把握することが重要です。
違反を防ぐにはシステムの導入が有効 少なくするためには使用者・労働者ともに余裕が必要
ここまでご紹介してきた労働基準法違反は、どのような企業でも起こり得ます。
多くの場合は、業務が回っていないようなバタバタとしているときに起こりやすいです。
たとえば、繁忙期などで人手不足に陥ってしまったり、急な欠勤が発生してしまったりしたときに、気がつかないうちに法に抵触してしまう傾向があります。
もちろん、悪意のないことがほとんどなのですが、強行法規であることから、「知らなかった」「気がつかなかった」は通用しません。普段から労働基準法について勉強するとともに、シフトを作成するときに労働基準法違反を防ぐ対策を講じることが必要です。
その対策のひとつとして、シフト管理システムの導入がおすすめです。
シフト管理システムのシフオプは、希望シフトをベースにシフト調整が効率的にできるほか、シフト作成時で労働基準法に触れる恐れのあるシフトには、自動検知してアラートで知らせる機能があります。法令違反のリスクが高い人には注意喚起、すでに違反している人には警告という文字が一覧表示されるため、法令を遵守したシフト作成が可能になります。
従業員のシフトに対し、“連勤が続いている”、“月の労働時間の上限を超えている”などの状況を個別に確認できるため、労働基準法違反のリスクを回避できます。
月の締め日になって違反に気づいてもあとの祭り。シフト作成時にリスクを把握できることで、適切な労務管理に役立ちます。
スムーズなシフト作成だけではなく、労務管理も強化できることは、シフオプを活用するメリットのひとつです。
労働基準法などの法改正は、時代の変化とともに今後も行われていくでしょう。
法律が変わるたびに情報を入手したり、管理体制を見直すことはとても大変です。その点、シフオプはオンラインでシフト管理ができるクラウド型のサービスのため、最新の法律を反映した労務管理が可能となります。
また、シフト管理については、従業員から不満が出ないよう、そして従業員に無理をさせないように余裕を持ったシフトの組み方を考えることも必要です。余裕を持たせることで、見落としがちな法律違反に気づきやすくなるでしょう。
まとめ
アルバイトやパートタイマーも、正式な契約によって締結された従業員です。正社員と同じように、労働基準法によって守られています。
労働基準法では、労働時間や給与、休憩など、雇用に関するあらゆる事柄に対して基準が定められており、いずれかの管理がおろそかになってしまうと抵触リスクが高まります。
労働基準法違反は忙しいときに起こりやすいですが、どれだけ小さな違反であっても違反は違反。システムなどを導入し、余裕を持ったシフトを組むように心掛け、法律違反を未然に防ぐようにしましょう。
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