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介護業界の人材不足を招く原因とは? 改善に向けた3つの対策

※2024年3月8日更新

介護業界では、慢性的な人材不足の問題を抱えています。多様化・複雑化する介護ニーズに対応していくには、介護人材の確保を促進するための取り組みや限られた人材で効率よく業務を行うための環境づくりが求められます。

介護施設の人事・労務担当者のなかには、「人材不足を招いている原因を知り、職場の改善につなげたい」「人材を確保するためにできることがないか知りたい」などとお考えの方もいるのではないでしょうか。

この記事では、介護業界における人材不足の現状と背景、原因を踏まえて、介護現場の人材不足を改善するための対策について解説します。


目次[非表示]

  1. 介護業界における人材不足の現状
  2. 介護業界で人材不足が深刻化している背景
  3. 介護業界の人材不足を招いている原因
  4. 介護現場の人材不足を改善するための対策
  5. 働きやすいシフトで職場の魅力を向上!
  6. まとめ


介護業界における人材不足の現状

近年、介護サービス事業所における人材不足感は、介護職員・訪問介護職員ともに上昇傾向にあります。


▼介護職員の人材不足感

介護職員の人材不足感

画像引用元:厚生労働省『介護人材の処遇改善等


▼訪問介護職員の人材不足感

訪問介護職員の人材不足感

画像引用元:厚生労働省『介護人材の処遇改善等


2022年度における介護サービス事業所への調査によると、介護職員は35.9%、訪問介護職員は58.9%が不足していると回答しています。

職種別でみても、施設内で従事する介護職員と訪問介護職員は、ほかの職種と比べて「大いに不足」「不足」している事業所が多いことが分かります。


▼【職種別】従業員の過不足状況

【職種別】従業員の過不足状況

画像引用元:厚生労働省『介護人材の処遇改善等


また、2021年から2023年にかけて行われた第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数によると、2025年度に約32万人、2040年度に約69万人が不足すると推計されています。


▼第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数に関する推計

第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数に関する推計

画像引用元:厚生労働省『介護人材の処遇改善等


介護施設の人材不足が深刻化すると、必要な介護サービスを提供できなくなるほか、事業の継続が難しくなることも懸念されます。

出典:厚生労働省『介護人材の処遇改善等



介護業界で人材不足が深刻化している背景

介護業界の人材不足が深刻化する背景には、少子高齢化による高齢者人口の増加とそれに伴う介護需要の高まりが挙げられます。

近年、国内の少子高齢化が進行しており、働き手となる生産年齢人口は減少している一方で、65歳以上の人口は増加しています。


▼高齢化の推移と将来推計

高齢化の推移と将来推計

画像引用元:内閣府『令和5年版 高齢社会白書(全体版) 第1節 1 高齢化の現状と将来像


2022年10月1日時点での総人口は1億2,495万人となっており、そのうち65歳以上の人口が占める割合(高齢化率)は29.0%に達しています。今後も高齢化率は上昇していくと考えられており、2037年には33.3%となり国民の3人に1人が高齢者になると見込まれています。

また、2000年から20年間において、要介護・要支援認定者は約3倍、介護サービスの利用者は約3.3倍に増加しています。


▼要介護・要支援認定者と介護サービス利用者の増加

要介護・要支援認定者と介護サービス利用者の増加

画像引用元:厚生労働省『介護分野をめぐる状況について


国内における介護職員数は長期的に増加傾向にあるものの、高齢者の増加によって介護需要が高まっていることから、人材不足が起きていると考えられます。

出典:内閣府『令和5年版 高齢社会白書(全体版) 第1節 1 高齢化の現状と将来像』/厚生労働省『介護分野をめぐる状況について



介護業界の人材不足を招いている原因

介護業界の人材不足を招いている原因には、人材確保や入社後の定着率に問題があることが考えられます。


①採用の難しさ

厚生労働省の『介護人材の処遇改善等』によると、人材不足の課題を持つ介護サービス事業所の約9割が「採用が困難である」と回答しています。

介護関係の職種は、ほかの全職業と比べて有効求人倍率が高い水準で推移しており、人材採用の難易度が高くなっています。


▼介護関係職種と全職業の有効求人倍率の推移

介護関係職種と全職業の有効求人倍率の推移

画像引用元:厚生労働省『介護人材の処遇改善等


また、入所型の施設や居住系の介護現場では、ほかのサービス事業所と比較して「入社後の定着率が低く困っている」という声も見られています。


▼介護関係職種における従業員の定着率

介護関係職種における従業員の定着率

画像引用元:厚生労働省『介護人材の処遇改善等


新たな採用が難しいうえに、一部の職種では定着率が低いことから介護現場での人材不足を招いているといえます。

出典:厚生労働省『介護人材の処遇改善等


②仕事内容へのネガティブなイメージ

介護の仕事内容に対してネガティブなイメージがあることも、介護現場の人材不足を招いている原因の一つと考えられます。

厚生労働省が発表した『福祉・介護に関する意識調査結果とイメージの変化』によると、介護の仕事内容に対してポジティブなイメージがある一方で、ネガティブなイメージを持つ人が一定数いることが報告されています。


▼介護サービスの職業に関するポジティブなイメージ

介護サービスの職業に関するポジティブなイメージ

画像引用元:厚生労働省『福祉・介護に関する意識調査結果とイメージの変化


▼介護サービスの職業に関するネガティブなイメージ

介護サービスの職業に関するネガティブなイメージ

画像引用元:厚生労働省『福祉・介護に関する意識調査結果とイメージの変化


介護の職業では、「体力的にきつい」「精神的にきつい」「大変そう」などの意見が散見されており、新たな人材の採用や業界への参入の障壁になっていることが考えられます。

人材確保を促進するには、介護の職業に対する正しい理解の促進とイメージの向上を図ることが重要です。

出典:厚生労働省『福祉・介護に関する意識調査結果とイメージの変化


③職場環境や待遇面の不満

職場環境や待遇面に不満があることによって職員が離職してしまい、人材不足を招いている可能性も考えられます。

厚生労働省の『介護人材の処遇改善等』によると、介護関係職種を退職した理由として主に以下が挙げられています。


▼介護関係職種を退職した理由

  • 人間関係に問題があった
  • 施設や事業所の理念や運営の在り方に不満があった
  • ほかにいい仕事・職場があった
  • 収入が少なかった


そのほかにも、結婚・出産・育児のため、家族の介護のためなど、仕事と生活の両立が難しくなったことで離職した人も見られています。

また、厚生労働省の『介護人材の確保・介護現場の革新』によると、離職した介護職員の約6割が勤続3年未満で仕事を辞めており、小規模の事業所ほど勤続年数が短い傾向にあります。


▼【事業所規模別】離職した介護職員の勤続年数

【事業所規模別】離職した介護職員の勤続年数

画像引用元:厚生労働省『介護人材の確保・介護現場の革新


職場環境や待遇面への不満、仕事と生活との両立が困難なことによる介護職員の離職を防ぐには、職場環境・労働条件の改善が求められます。

出典:厚生労働省『介護人材の処遇改善等』『介護人材の確保・介護現場の革新




介護現場の人材不足を改善するための対策

介護現場における人材不足の問題を解消するには、新たな人材確保を促進するとともに、介護職員が働きやすい職場へと労働環境の改善を図ることがポイントです。


①多様な人材の雇用・育成

人材不足を解消するには、介護職の経験者や有資格者だけを採用の対象とせず、多様な人材を確保するための仕組みを整えることが重要です。

幅広い属性を持つ人材を対象として採用活動と育成を促進することで、労働力の確保につながります。また、介護業界の未経験者に対する育成体制を整えることによって、介護分野へ参入するハードルを下げられます。


▼多様な人材の雇用・育成に向けた取り組み例

  • 基礎研修や職場体験を実施して、未経験者の採用を促進する
  • 自治体が実施する介護施設ボランティア活動の受入施設に登録して、ボランティア人材を受け入れる
  • 国の支援事業を活用して外国人労働者の雇用を積極的に行う
  • 国の助成金を活用して介護職の職業訓練を実施する


②介護ロボット・ICT化による業務効率化

介護現場の人材不足に対応するには、限られた職員でより効率的に業務を行えるように、介護ロボットの導入や事務作業のICT化を進めることがポイントです。

近年、さまざまな機能を持つ介護ロボットが開発されています。介護ロボットとは、パワーアシストで介護者の肉体的負担を軽減したり、トイレ内の自立した動作を支援したりなど、ロボット技術を応用した介護機器を指します。介護ロボットを用いることで、介護の質を維持しながら職員の体力的な負担を軽減できます。

また、ツール・システムを活用して、データの一元管理と各種フォーマットの統一を行うと、情報共有や事務作業の効率化につながります。これまでアナログで行っていた業務をICT化することで、業務時間の短縮・省人化を図れます。

このように介護職員の業務負荷を軽減できれば、身体的・精神的な負担を理由にした離職を防ぐことも期待できます。


▼介護ロボット・ICT化の例

  • パワーアシストロボットを用いてベッド移動の介助を行う
  • 排泄予測機能のついたロボットで、適切なタイミングでトイレへ誘導して排泄介助の負担を軽減する
  • シフト管理システムを導入して、シフト作成の工数を削減する
  • 介護施設管理システムを導入して、入居者・スケジュール・請求などを一元管理する
  • オンラインツールでケアマネジメントを行う



③職場環境・待遇の改善

介護職員の採用促進と定着率向上を図るには、働きやすい職場環境をつくることと、業務負荷や能力に見合った適正な待遇へと見直すことも重要です。

魅力的かつ働きやすい職場に改善することで、入職希望者の増加や定着率の向上が期待できます。また、入社後の定着率が高まれば、新規または中途採用にかかるコストや教育コストの削減も期待できます。


▼魅力的かつ働きやすい職場に改善するための取り組み例

項目

取り組み例

待遇の改善

  • 経験やスキルなどの人事評価に応じた給与基準を設ける
  • 有資格者への手当を付与する
  • 有給休暇を計画的に付与する(年単位の計画表作成やグループ交代制など)

キャリアアップの支援

  • 介護研修や資格取得の推奨制度を設けて、受講費用の一部を負担する
  • 職員の目標や能力・役割に応じたキャリアパスを構築する

多様な働き方の支援

  • 介護施設内や提携事業所で保育施設を提供する
  • 介護助手や副業・兼業による雇用制度を導入する
  • 短時間勤務や週休3日制などの柔軟な勤務形態を導入する

環境面の魅力向上

  • 職員の悩み相談窓口を設置する
  • 介護職員同士の交流会を開催または参加して、仕事のやりがいや仲間知識の醸成を促す
  • シフト作成のルールを設けて、不平不満が出ないようにする



働きやすいシフトで職場の魅力を向上!

職員にとって魅力的な職場環境をつくり、採用の促進や人材の定着化につなげるには、シフトの作成方法を見直すこともポイントの一つです。

人材不足の課題を持つ介護施設では、一人ひとりの業務量が増えて長時間労働が発生したり、希望休を取りにくくなったりする可能性があります。このような環境は、職員の心身への負担や不満につながりやすくなります。

働きやすい職場環境へと改善を図るには、職員の希望に合わせた公平なシフトを作成することが重要です。紙媒体や表計算ソフトでシフトを作成している場合、出勤日・労働時間の調整に時間がかかるほか、法令違反につながるシフトを組んでしまう可能性があります。

法令を遵守しつつ効率的にシフトを作成するには、シフト管理システムの活用がおすすめです。『シフオプ』は、シフトの収集・作成・共有をオンラインで行えるクラウド型のシフト管理システムです。


▼シフオプを活用するメリット

  • シフト作成に要する時間を短縮して管理者の負担を軽減できる
  • 法令違反のリスクがあるシフトへの警告表示によって、コンプライアンスを強化できる
  • シフトの締め切り連絡やシフト共有を自動で送信できる
  • 職員のシフトがモデルシフトに反映されるため、希望休を調整しやすくなる


シフト管理の方法を見直すことで、管理者と職員の双方にメリットが生まれます。個々の希望や事情に合わせて柔軟に働ける職場へと改善できれば、定着率の向上、入職希望者の増加につながり、人材不足の解消に結びつくと期待できます。

なお、介護職のシフト表を作成するコツについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

  【介護職編】シフト表作成で時短する3つのコツ 介護職におけるシフト管理は、さまざまなルールを考慮する必要があるため、ほかの職種と比べて難しいといわれています。 高齢化が進んでいる今、介護業界は慢性的な人材不足となっており、スタッフを確保するためにも、より希望に添ったシフト管理が求められています。 本記事では、介護職のシフトによくあるパターンやシフト作成の難しさ、効率的に作成するコツについて紹介します。 シフオプ



まとめ

この記事では、介護業界の人材不足について以下の内容を解説しました。


  • 介護業界における人材不足の現状
  • 人材不足が深刻化している背景
  • 介護現場の人材不足を招いている原因
  • 介護現場の人材不足を改善するための対策


介護業界は、慢性的な人材不足の問題に直面しており、今後も職員が不足していくことが予測されています。高齢化が進むなか、介護を必要とする人やその家族を支えていくには、介護を担う人材の確保と定着化を促進することが重要です。

そのためには、多様な人材の雇用・育成に取り組むとともに、介護ロボットやICT化によって業務の効率化を図ったり、職場環境・待遇を改善して働きやすさを向上したりする対策が求められます。

なかでも職員の出勤日・休日を決めるシフトは、働きやすさに直結しやすい要素と考えられます。長時間労働を防ぎつつ、希望休を取得しやすい公平なシフトを作成するには、『シフオプ』の活用が有効です。

詳しくは、こちらの資料をご確認ください。

  シフオプ│資料請求・お問い合わせフォーム https://form.k3r.jp/rjb_shift/01


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