
アルバイトの年末調整はしないとどうなる? 注意点を解説
※2023年4月18日更新
年末が近づくとやってくる年末調整。
正社員として働く場合は、会社が年末調整を行うのが一般的ですが、アルバイトの場合、年末調整の仕組みはどのようになっているのでしょうか。
アルバイトを雇っている店長や採用を担当している方のなかには、「アルバイトは年末調整の対象になるのか」「ほかと掛け持ちしているアルバイトの場合はどのように対処するのか」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、年末調整をしないとどうなるのか、対象となる人・ならない人の条件、アルバイトの年末調整を行う際の注意点について解説します。
年末調整は社員だけ?アルバイトにも必要?
年末調整は、従業員の給与から源泉徴収した所得税と、本来国に納める所得税の過不足を精算する手続きです。従業員に支払う給与が一定額を超えると“所得税”という税金が発生して、国に納める義務があります。
所得税は年換算して計算されるため、あくまで概算となっており、従業員が本来納める所得税額と一致しないことが通常です。正しい所得税を計算するためには、年末に1年の給与総額を割り出して、過不足がないか清算する必要があります。
給与から毎月天引きしていた所得税が不足していた場合は追加で徴収して、反対に多く徴収し過ぎた分は従業員に返金される仕組みとなっています。
会社から給与が支払われる限り、正社員もアルバイトも同様のため、アルバイトであっても基本的には年末調整の対象になります。
次の章で、具体的に年末調整の対象となる人・対象にならない人について説明します。
出典:国税庁『Ⅱ年末調整とは』『No.2665 年末調整の対象となる人』
年末調整の対象となる条件
アルバイトの年収額が103万円を超える場合や、給与支払いの際に源泉徴収をしている場合には、年末調整の対象となります。
また、年末調整を行うタイミングには、12月末と年途中の2つのパターンがあり、それぞれ対象となる人が異なります。
▼年末調整の対象となる人
⑴ 1年を通じて勤務している人
⑵ 年の中途で就職し、年末まで勤務している人
⑶ 年の中途で退職した人のうち、次の人
① 死亡により退職した人
② 著しい心身の障害のため退職した人で、その退職の時期からみて、本年中に再就職ができないと見込まれる人
③ 12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人
④ いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人
(退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払を受けると見込まれる場合を除きます。)
引用元:国税庁『Ⅱ年末調整とは』
所得税は、年収が103万円を超える場合に課税されます。アルバイトの年収が103万円を超える場合は所得税が源泉徴収されるため、年末調整が必要です。
なお、年末調整の対象となるアルバイトがいる場合は、『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』と『給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書』を渡して、必要事項を記入して提出を求めます。
出典:国税庁『Ⅱ年末調整とは』『No.2665 年末調整の対象となる人』『給与所得の源泉徴収税額表(令和4年分)』『[手続名]給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告』/厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
年末調整の対象とならない条件
アルバイトの年収額が103万円未満で、なおかつ毎月の給与から源泉徴収が行われたことが一度もない場合には、年末調整は必要ありません。
また、ほかのアルバイトを掛け持ちしていて、別の会社で『扶養控除等(異動)申告書』を申告している場合や、年末までに同申告書を提出していない場合も、年末調整の対象ではありません。
▼年末調整の対象とならない人
⑴ 左欄に掲げる人のうち、本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人
⑵ 左欄に掲げる人のうち、災害により被害を受けて、「災害被害者に対する租税の減免、 徴収猶予等に関する法律」の規定により、本年分の給与に対する源泉所得税及び復興特別 所得税の徴収猶予又は還付を受けた人
⑶ 2か所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与の支払者に扶養控除等(異動) 申告書を提出している人や、年末調整を行うときまでに扶養控除等(異動)申告書を提出していない人(月額表又は日額表の乙欄適用 者)
⑷ 年の中途で退職した人で、左欄の⑶に該当しない人
⑸ 非居住者
⑹ 継続して同一の雇用主に雇用されないいわゆる日雇労働者など(日額表の丙欄適用者)
引用元:国税庁『Ⅱ年末調整とは』
上記に挙げられている“左欄”とは、“年末調整の対象となる条件”を指します。
家族の扶養に入っているアルバイト(被扶養配偶者)の場合、年収額が103万円未満であれば、所得税は非課税になります。
この所得税の課税対象となるラインは“103万円の壁”と呼ばれています。年末調整の実施の有無に関わるため、企業はアルバイトの収入額を適切に管理することが重要です。
なお、学生アルバイトの103万円の壁について、こちらの記事で解説しています。
出典:国税庁『Ⅱ年末調整とは』『No.2665 年末調整の対象となる人』/厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
アルバイトの年末調整を行う際に注意するポイント
アルバイトの年末調整を行う際には、いくつか注意点があります。
年収が103万円未満でも必要になるケースがある
年末調整は、年収額が103万円未満の場合でも必要になるケースがあります。
1ヶ月の給与が8万8,000円以上になる場合、給与から源泉徴収が行われます。年収額が103万円未満になる場合でも、月給が8万8,000円以上の月があり、一度でも源泉徴収をした従業員に対しては年末調整が必要です。
出典:国税庁『給与所得の源泉徴収税額表(令和4年分)』
年末調整ができるのは1社のみ
年末調整ができるのは、1社のみと定められています。
アルバイトで働く人のなかには2か所以上の仕事を掛け持ちしている人がいますが、その場合は、より年収が多く支払われている会社で年末調整を行います。
年末調整を行わない会社で天引きされた源泉所得税については、従業員個人で確定申告を行い、所得税を清算します。
保険料控除の申請が必要になる
アルバイトの年末調整を行う際、その従業員が生命保険に加入している場合は保険料控除申請も必要です。
対象の控除がある場合は『給与所得者の保険料控除申告書』の書面に記入してもらいます。
出典:国税庁『各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)』
年末調整をしないとどうなる?
年末調整の対象となる従業員に対して、会社が年末調整を実施しなかった場合には、以下のような問題につながります。
▼年末調整をしないことによる問題
- 従業員が所得税の還付を受けられない
- 従業員の住民税が高くなる可能性がある
- 会社側に罰則が科せられるおそれがある
給与から源泉徴収を行っているにもかかわらず、年末調整を実施しなかった場合は、所得税の過払い分が還付されなくなります。
また、住民税は課税所得金額を基に算出されるため、翌年の住民税が高くなる可能性もあります。
さらに『所得税法』第190条では、事業者に年末調整を義務づけています。源泉徴収を行いながら年末調整を行わない場合は、10年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。
出典:e-Gov法令検索『所得税法』
まとめ
この記事では、アルバイトの年末調整について以下の内容を解説しました。
- 年末調整の対象となる条件
- アルバイトの年末調整を行う際の注意点
- 年末調整をしない場合の問題
アルバイトの年収額や源泉徴収の有無などによって、年末調整が必要になるケースが異なります。法令に基づいて年末調整を実施するために、従業員の給与額や扶養の状態について把握・管理しておくことが重要です。
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