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残業して頑張る、は時代遅れ!時間外労働削減に向けた各社の取り組みについて

働き方改革が叫ばれるようになり、長時間労働の是正や時間外労働の削減に取り組む必要が出てきたという企業は少なくありません。

しかし具体的な取り組みとなると難しく、業務量が多いのにどうすれば削減できるのか、サービスの質を落とさず取り組むには...と悩んでしまうところです。

今回は、時間外労働の現状を踏まえ、その問題や取り組みについてご紹介します。


目次[非表示]

  1. 時間外労働の現状
  2. 時間外労働が引き起こす問題
  3. 時間外労働削減の取り組み例
  4. まとめ


時間外労働の現状

(引用:厚生労働省|我が国における時間外労働の現状


平均年間総実労働時間は減少の一途をたどり、現在では1734時間となっていますが、これは平成8年ごろから定着したパートタイム労働を含んだデータで、実質的には一般労働者の総労働時間は変化していないと考えられています。

(引用:厚生労働省|我が国における時間外労働の現状


平均所定外労働時間は平成21年に大きく落ち込みましたが、平成27年現在、それまでのピークであった平成18年の132時間と同じく132時間です。

日本は週40時間以上の時間外労働を行っている比率が高く、問題視されています。

特に30代男性の場合、過労死ラインである週60時間以上の時間外労働を行っている割合は16%にものぼり、過労死や心身の負荷による自殺が社会問題となっています。


時間外労働が引き起こす問題

時間外労働は、従業員の健康や、サービスの質の低下や業績低迷にもつながる重要な問題です。


企業側に起きる問題

現在では、「時間外労働が多い企業=社員を大切にしない企業」というマイナスイメージがつくようになりました。

こういった評判は、顧客や採用したい人材が離れる一因となり、新規採用が難しくなると人手不足に陥りやすくなります。定着した社員にとっては大きな負担になり、生産効率が下がって業績が低迷する、といった事態や、耐えかねて退職する社員が続出するといったケースが起きています。


従業員側に起きる弊害

従業員側にとっては、長時間労働は非常に大きなリスクとなります。

余裕がないため突発的なトラブルに対応できなくなり、穴を埋めるために残った社員にさらに仕事が回され、ますます時間外労働が増加する悪循環に陥るケースもよく見られます。

心身ともに大きな負担がかかるため、体調を崩しやすく、若くしての過労死や自殺の原因となります。


時間外労働削減の取り組み例

このように、企業と従業員のどちらにとっても時間外労働はハイリスクな働き方であるため、削減していかなくてはなりません。ここではその実際の取り組み例をご紹介します。


残業の事前申請と実施状況の管理

A社は運送業を主力とする、社員400名程度の企業です。

このA社では、始業時と就業前のミーティングで残業予定者の業務内容と退社予定時間を確認するシステムを導入しました。ここでは急ぎの業務でなければ翌日に回す、他の社員に仕事を割り振る、などの調整を行っています。

また、毎月2回残業実績を集計し、管理部門へ報告も行います。残業が多い部門は理由も合わせて報告することで、どのような実態なのかを把握しつつ、残業を増やさないような管理が実現しました。


顧客を巻き込んだ業務効率化や改善

自社のコストが増加すれば、顧客が支払う費用にも影響します。

そのため、A社では自社のコスト削減や業務効率化とともに、顧客にとってもコスト削減になるような提案を行いました。たとえば、顧客とやり取りする書類の様式を統一してもらえるよう依頼し、内容の整理や確認のための時間の削減を進めています。

顧客の要望にはできる限り応える必要があるため、それだけに双方コスト削減になるような提案を行い、長時間労働の是正と顧客の要望を両立させることが目標です。


多能工化を進めて業務を平準化

特定の社員しかできない業務があると、その社員に業務が集中するため、長時間労働や時間外労働の原因となります。この改善のため、A社は計画的な多能工化を進めており、業務の多い社員の仕事を部門管理者が他の社員に振り分けるようにしています。

また、各部門で必要な能力や資格を整理し、必要な教育だけでなく人材ローテーションも実施しました。

その結果、特定の社員に業務が集中することがなくなり、長時間労働の抑制につなげることに成功しました。


各自が毎週1日ノー残業デーを設定

B社は、運送業を主力とする社員9名の企業です。

小規模な企業で人間関係が密になっているため、以前は他の社員がいると帰りにくく感じていた社員も、制度化されることで気兼ねなく定時で帰れるようになりました。

ノー残業デーの設定により重複して人手不足にならないように、共通ファイルに記入してお互いに確認と調整を可能にしています。この制度は週ごとにノー残業デーを決められるため、業務の進捗状況やプライベートな予定に合わせやすいのが特徴です。


業務効率向上の目標を設定

B社では半年に一度、各自が「業務上の課題をどうしたら良いか」「何を変えれば業務効率化できるか」を考え、業務効率向上のための目標を設定しています。

単なる目標だけでなく、具体的な手段と達成可否の判断基準などを記載した計画書を作成し、1か月に1回レポートを作成して上司に提出します。

このように具体的な取り組みは、社員一人ひとりが自分のアイデア一つで主体的に業務改善できるという意識を持てるため、仕事に対する姿勢が向上する結果となりました。


残業の事前申請制度の導入と実施状況の管理

C社は食料品製造業の企業です。

C社では、残業する場合は管理職に申請書を提出する必要があります。管理職は残業が必要かどうかを判断し、不要な場合は翌日に回すよう指導します。このフォームには「理由」「時間」「業務内容」が記入されており、管理職に対しては、この機会に部下の業務内容や進捗を把握し、適切なコミュニケーションを図るよう徹底しました。

この取り組みによって時間外労働の実態が把握できるようになり、優先順位づけをすることで時間外労働の削減に成功しています。


トップダウンで業務改善の取り組みを推進

C社では整理・整頓・清掃・清潔・しつけを意味する「5S」を推進しています。

具体的に何をすれば良いかを知らない社員が多かったため、活動を引っ張る立場である管理職に教育を実施して理解を深めさせ、トップダウンで5Sを推進しました。

実効性を上げるため、5S推進プロジェクトメンバーが、1か月に1回課と工程に分けてパトロールして実施状況を確認します。パトロールでは全25項目、1項目4点の計100点で定量的な評価を行います。

これにより、職場がきれいになって働きやすくなり、必要な道具もすぐ取り出せるため時間の削減にもつながりました。


残業の事前申請制度の導入と実施状況の管理

D社は食肉加工業の企業です。

D社では、残業する場合は「自己申告表」による事前申請を行い、残業後は実績を表に記入し、一人ひとりの実態を可視化させます。管理職は日々の生産計画と申告表に基づき、コストパフォーマンスの観点から適正かどうかを判断します。

また、社員の労働時間の集計結果は管理部門経由で毎月社長に報告されるため、社長や管理部門からは是正勧告や対応策の報告を求めるなど、トップダウンでの時間外労働削減に取り組みました。


評価と報奨制度との連動

管理職の人事考課には「部下の時間外労働」の項目があり、管理職の評価だけでなく年2回の賞与と翌年度の給与にも反映されます。このため管理職は社員一人一人の把握だけでなく、具体的な削減目標を立てるなど、時間外労働削減の実効性が高まりました。

また、社員の時間外労働が月80時間超となる場合は伺い書が必要で、この伺い書を年3回以上提出する場合は改善措置を取るよう指示がされます。

このようにある程度明確な基準があるため、現場の事情に合わせた措置が取りやすいのも特徴です。


業務の平準化に向けた業務ローテーション

E社は宿泊業の企業です。E社では特定の社員に業務集中して長時間労働が発生しないよう、担当業務をローテーションする制度を導入しました。

その結果、現状の担当業務以外でもサポートができるため、業務量を平準化することに成功しました。特に宿泊業は自社の取り組みだけでは時間外労働をコントロールしづらい面があるため、社員のスキルを高めて平準化する取り組みが有効です。


残業の事前申請制度

決まった書式で時間外労働の事前申請を行わせたところ、実態が管理しやすくなっただけでなく社員側に「事前申請しなければ残業はできない」という意識が生まれました。

ただし、現場ではチェックインが集中したときなどの急な残業がどうしてもあるため、現状では事務職員を中心に時間管理意識の向上につながっています。


パートやアルバイトの能力を向上させる仕組み

F社は飲食業の企業です。ファミレスを展開しており、数少ない社員に業務集中しないようパートやアルバイトの能力の向上によって業務の平準化に取り組みました。

具体的にはパートやアルバイトが担う作業をリストアップし、作業ごとの習熟度をチェックリストにし、作業ができたかどうか教育する先輩がチェックします。さらに、みなが見える場所に掲示して、誰でも情報を共有できるようにしました。

この習熟度は時給に直結するためモチベーションも高く、結果として店長以外の正社員にはほぼ時間外労働が発生しなくなりました。


パートやアルバイトからの業務改善の提案

F社では、教育を通して働くパートやアルバイトの意識を高めたところ、より効率的な作業方法を自主的に提案してくれる場面が増えました。

店舗ごとの工夫だけでなく、店舗で実践して有効であると確認できた場合は社員が本部に報告するため、最終的に企業全体で採用されるケースもあります。

この結果、作業がスムーズに進められるようになり、ミスも減って余計な手間が削減され、全体の労働時間削減へとつなげることができました。


時間外労働に関して労使で協議

G社は印刷業の企業です。G社には労働組合があるため、企業と組合間での労使協議を毎月実施するという取り組みを導入しました。

会社の一方的な施策ではなく、社員目線から本当に必要な制度が取り入れられた例として水曜日のノー残業デーがあります。やむを得ず残業する場合は、振替申請を行うなどのフォローも整備され、形骸化しないように努めました。

このノー残業デーをきっかけとして、社員側にも「仕事を早く終わらせる」という意識が浸透し、効率良く業務を進めるだけでなく、ワークライフバランスが向上して社員のモチベーションがアップしています。


計画的な従業員教育による能力向上

G社ではISO9001(品質マネジメントシステム)の認証取得を通し、能力向上による時間外労働削減も目的として、各部署で「業務力量表」を作成しました。この表は各個人がどの業務をできるのか記入する形となっているため、正確な自己認識とスキルアップが目指せます。また、この表をもとに管理職と社員が相談して、今後の教育計画を自身で立案させるようにもしました。これにより、新たなステップへの挑戦機会が必要なのか、再教育が必要かなどの判断が効率的に行えます。

これらの取り組みによって、現状の能力とその向上度合いが可視化され、教育する側と受ける側双方でのロスをなくすことにつながりました。


まとめ

業界や規模によって問題点の背景やつまずくポイントは異なりますが、どの企業でも可視化や計画化、意識改革といった具体策を積極的に取り組んでいます。これらの取り組みを参考に、自社でもぜひ具体的な取り組みを行ってください。


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