人手不足が深刻な4つの業界。その現状や要因について解説

人手不足が深刻な4つの業界。その現状や要因について解説

※2019年2月12日公開の記事に修正を加えています。


現在、多くの企業が人手不足の課題を抱えていますが、業界によって状況は異なります。

人材管理を行う立場にいる企業担当者の方は、業界での人手不足の現状や傾向を把握したうえで、人材採用・定着化に向けた適切な対策を講じる必要があります。

今回は、特に人手不足が深刻化している4つの業界について紹介します。

企業の人手不足対策については、こちらの記事もご確認ください。

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目次[非表示]

  1. 【業界別】人手不足の現状
  2. ①医療・福祉業界
  3. ②建設業界
  4. ③運送業界
  5. ④宿泊・飲食業界
  6. まとめ


【業界別】人手不足の現状

厚生労働省の『労働経済動向調査』に基づいて、人手不足の現状を解説します。

2022年5月の業界別の労働者過不足判断D.I.()(Diffusion Index:ディフユージョン・インデックス)は、2019年11月調査と比較して以下のように変化しています。


【業界別】人手不足の現状

厚生労働省『労働経済動向調査(令和4年5月)の概況』を基に作成


【業界別】人手不足の現状

厚生労働省『労働経済動向調査(令和4年5月)の概況』を基に作成


2022年5月現在、人手不足が特に深刻化している業界は、医療・福祉業界、建設業界、運送業界です。2019年11月の調査と比べてD.I.値が上がり、人手不足が進行している業界は、医療・福祉業界、製造業の2つという結果となっています。

また、2022年5月時点でのパートタイム労働者の過不足状況は、以下のとおりです。


【業界別】人手不足の現状

厚生労働省『労働経済動向調査(令和4年5月)の概況』を基に作成


この結果では、宿泊・飲食サービス業界、そのほかのサービス業界などでパートタイム労働者が不足していることが分かります。

人手不足が深刻化すると、長時間労働や労働負荷が発生するリスクがあるほか、従業員満足度が上がらずに離職につながる可能性があります。このような人手不足を解消するためには、業務効率化によって生産性の向上を図るだけでなく、従業員が働きやすい職場環境を整備することが重要です。

次に、人手不足が深刻となっている4つの業界について詳しく解説します。

※D.I.は変化の方向性を表す指標のこと。労働者過不足判断D.I.は、労働者数が“不足”と回答した事業所の割合から、“過剰”と回答した事業所の割合を差し引いた値。

出典:厚生労働省『労働経済動向調査(令和4年5月)の概況』『労働経済動向調査(2020年5月)の概況



①医療・福祉業界

医療・福祉業界における人手不足の原因には、少子高齢化の進行による医療・介護需要の拡大、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の流行に伴う医療体制の逼迫(ひっぱく)が挙げられます。

医療・介護業界では、上記の理由により需要が増加する一方で、全体的な医師不足や地域的な偏在も課題となっています。

ほかの産業と比較しても、未充足求人がある事業所の割合は医療・福祉業界がもっとも多くなっています。


①医療・福祉業界

厚生労働省『労働経済動向調査(令和4年5月)の概況』を基に作成


医療機関によっては、救急・集中治療のために昼夜を問わず医療を提供する体制を整備する必要があります。各診療科では、通常の業務に加えて急な外来・手術によって夜間での治療対応が必要になるケースも考えられます。このような医療提供体制は、現場での長時間労働が発生する一因となっています。

特にコロナ禍においては、院内における感染防止対策の徹底やウイルス検査の実施などによって現場の負担が増えて、人手不足につながっているケースも見られています。

また、介護業界においては、要介護認定者数が増加する一方で、介護施設職員の定着率は低く、労働力の確保や専門職人材の育成も課題の一つとされています。

このような医療・介護需要の拡大と人手不足に対応するためには、ICT・ロボット等などの最新技術を活用して、生産性向上や働き方改革を進めていくことが重要です。また、厚生労働省の雇用管理改善支援策などの国の施策を利用することも必要と考えられます。

出典:厚生労働省『労働経済動向調査(令和4年5月)の概況』『介護労働の現状』/首相官邸『次世代ヘルスケア』/総務省『令和3年 情報通信白書のポイント』『令和2年 情報通信白書のポイント』/内閣府『令和4年度高齢者白書



②建設業界

建設業界では、建設業就業者の高齢化や若者離れによって人手不足が深刻化しています。2020年時点において、建設業就業者の約3割が55歳以上となっており、他産業と比べて高齢化が進んでいます。

その一方で、29歳以下の若年層は約1割にとどまっており、次世代の担い手確保や技術継承が重要な課題となっています。


▼建設業就業者の高齢化の進行

建設業就業者の高齢化の進行

画像引用元:国土交通省『建設業の働き方改革の現状と課題


このような建設業の人手不足が発生している原因の一つには、働き方に関する負担が挙げられます。

建設業はほかの産業と比べて実労働時間・出勤日数が多く、技術者の4割が4週4休以下で就業している状況です。


▼建設業における年間実労働時間・月間出勤日数


年間実労働時間(2020年度)
月間出勤日数(2020年度) 
産業計
1621時間
17.6日
建設業
1985時間
20.3日

国土交通省『建設産業の展望と今後の産業政策』/厚生労働省『毎月勤労統計調査 令和2年度分結果確報』を基に作成


上記のように、建設業では、全産業と比べると年間の実労働時間が364時間、月間出勤日数は2.7日多くなっています。

さらに、多重下請け構造によって、残業や長時間労働が発生しやすいことも若者離れにつながる一因と考えられます。

建設業での将来の担い手を確保するには、従業員が働きやすい労働環境をつくるための処遇改善や週休2日の導入、働き方改革の推進による長時間労働の削減が必要です。

出典:厚生労働省『毎月勤労統計調査 令和3年度分結果確報』/国土交通省『建設業の働き方改革の現状と課題』『建設産業の展望と今後の産業政策



③運送業界

運送業界では、物流現場におけるトラックドライバーの不足が深刻化しています。

2019年時点において、トラックドライバーが不足している企業は約70%です。また、全職業平均と比べて有効求人倍率は2倍ほど高くなっており、人材募集をしても集まりにくい状態が続いています。


▼トラック運転者の有効求人倍率

トラック運転者の有効求人倍率

画像引用元:厚生労働省 トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト『トラック運転者不足の実態


ドライバーが不足する要因の一つとして、全産業と比べて厳しい労働環境にあることが挙げられます。

トラック運送事業における労働時間は、全職業平均よりも2割ほど長く、年間賃金については1~2割弱低くなっています。


▼トラック運転者の年間労働時間

トラック運転者の年間労働時間

画像引用元:厚生労働省 トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト『トラック運転者不足の実態


▼トラック運転者の年間所得額

トラック運転者の年間所得額

画像引用元:厚生労働省 トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト『トラック運転者不足の実態


そういったなか、コロナ禍でのEC(Electronic Commerce:電子商取引)市場規模の拡大や巣ごもり消費によって通販需要は増加傾向にあり、今後はさらにトラックドライバーの労働需給が逼迫する可能性があります。


▼宅配便の取扱い個数

宅配便の取扱い個数

画像引用元:厚生労働省 トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト『トラック運転者不足の実態


物流現場の人手不足に対応するためには、機械化・デジタル化を通じて物流の効率化やオペレーションの改善を図り、働き方改革を促進させることが重要です。

出典:国土交通省『最近の物流政策について』『物流標準化と物流現場の現状』『総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)』/厚生労働省 トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト『トラック運転者不足の実態



④宿泊・飲食業界

宿泊・飲食業界における人手不足の原因には、処遇の問題が挙げられます。

2020年の産業別の月平均労働時間数において、ほかの産業では100時間を超えていますが、宿泊・飲食業界については88.8時間となっています。


④宿泊・飲食業界

総務省統計局『第19章 労働・賃金 19-12』を基に作成


平均賃金においては、他業界と比べると50万円程度低くなっています。


▼2021年 宿泊業・飲食サービス業の平均賃金


業界全体
宿泊業・飲食サービス業
男女計平均賃金
307.4万円
257.6万円
男性平均賃金
337.2万円
286.8万円
女性平均賃金
253.6万円
215.0万円

厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況』を基に作成


また、宿泊・飲食業界はパートタイム労働者の人手不足も目立っています。

厚生労働省の『労働経済動向調査』によると、2022年5月時点での過不足判断D.Iは50となっており、全産業でもっとも高い状況です。


④宿泊・飲食業界

厚生労働省『労働経済動向調査(令和4年5月)の概況』を基に作成


宿泊・飲食業界の人手不足に対応するためには、従業員の処遇改善が必要と考えられます。

出典:厚生労働省『労働経済動向調査(令和4年5月)の概況』『令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況』/総務省統計局『第19章 労働・賃金



まとめ

この記事では、人手不足が深刻化している業界について、以下の項目で解説しました。


  • 医療・福祉業界
  • 建設業界
  • 運送業界
  • 宿泊・飲食業界


人手不足が発生すると、長時間労働や業務負担の増加、労働環境の悪化などにつながりやすくなります。人手不足に対応するには、ICT活用や労働環境の改善を行い、人材の確保・定着化を図ることが重要です。

また、医療・介護業界や建設業、運送業など人手不足が懸念される職場では、長時間労働や不規則な労働時間になりやすいため、従業員の適切な労務管理が欠かせません。

シフト管理システムの『シフオプ』では、法令違反のシフトに対して自動でアラートが表示される機能が備わっています。法律に抵触するような残業を未然に防げるほか、長時間労働者に対して労働時間を調節することが可能です。

企業の人手不足を解消するための一歩として、労務管理の強化を図ってみてはいかがでしょうか。シフオプの機能紹介について、詳しくはこちらをご確認ください。

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