所定労働時間と法定労働時間における残業時間の考え方の違い

所定労働時間と法定労働時間の違いとは? 残業の考え方や注意点を解説

※2024年3月15日更新

事業主には、従業員の労働時間を適切に把握・管理する義務があります。労働時間を算出する際に混同しやすいのが“所定労働時間”と“法定労働時間”です。

企業の人事・労務担当者のなかには、「所定労働時間と法定労働時間の定義は何なのか」「所定労働時間と法定労働時間で残業の考え方に違いはあるのか」などと気になる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、所定労働時間と法定労働時間の違いや残業の考え方、法定労働時間を超える残業を行わせる際の注意点について解説します。


目次[非表示]

  1. 所定労働時間と法定労働時間の違い
  2. 残業の考え方
  3. 法定労働時間を超える残業を行わせる場合の注意点
  4. 労働時間を正確に把握することが重要
  5. まとめ


所定労働時間と法定労働時間の違い

所定労働時間と法定労働時間は、労働時間の定義や決め方に違いがあります。


▼所定労働時間と法定労働時間の違い


意味

労働時間の決め方

所定労働時間

企業が定めた労働時間

企業の就業規則に則る

法定労働時間

法律で定められた労働時間の上限

労働基準法に則る


所定労働時間とは、各企業の就業規則で定めた労働時間のことです。所定労働時間に該当するのは、始業時刻から就業時刻までの時間から、休憩時間を差し引いた労働時間です。


▼所定労働時間が9~18時(実働8時間)の場合の勤務例

時間区分

勤務例

勤務時間

9~12時、13~18時

休憩時間

12~13時


企業によって規定する時間は異なりますが、法令の範囲内で定める必要があるため、所定労働時間が法定労働時間を超えることはありません。

一方、法定労働時間とは、労働基準法で定められている労働時間の上限を指します。所定労働時間と同様に、労働時間のなかに休憩時間は含まれません。

労働基準法』第32条では、原則として1週間の労働時間は40時間、1日の労働時間は8時間が限度と定められています。


▼労働基準法第32条

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
②使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

引用元:e-Gov法令検索『労働基準法


出典:厚生労働省『労働時間・休日』/e-Gov法令検索『労働基準法



残業の考え方

所定労働時間と法定労働時間では、残業の考え方が異なります。


▼所定労働時間と法定労働時間の残業の考え方

所定労働時間と法定労働時間の残業の考え方


所定労働時間における残業

所定労働時間を基準とした残業には、法定内残業と法定外残業の2つがあります。

法定内残業は、法定労働時間の範囲内で企業が定めた所定労働時間を超えた労働時間を指します。法定外残業は、所定労働時間だけでなく法定労働時間も超えた労働時間を指します。法定外残業については“時間外労働”とも呼ばれます。


▼所定労働時間が6時間の場合における残業の具体例


所定労働時間

実際の労働時間

法定内残業時間

法定外残業時間

例1

9~16時
(休憩1時間)

9~18時
(休憩1時間)

2時間

0時間

例2

9~16時
(休憩1時間)

9~20時
(休憩1時間)

2時間

2時間


上記では、法定外残業時間が発生している例2の場合において、2時間分の割増賃金を支払う必要があります。例1の場合は、所定労働時間を超えた2時間分は法定内残業時間となるため、割増賃金の支払い義務はありません。


法定労働時間における残業

法定労働時間を基準とした残業は、法定労働時間を超えた労働時間を指します。労働基準法に基づく残業(時間外労働)は、1日8時間の法定労働時間を超えるかどうかで判断されます。


▼法定労働時間が8時間の場合おける残業の具体例

法定労働時間

実際の労働時間

法定内残業時間

法定外残業時間

9~18時
(休憩1時間)

9~20時
(休憩1時間)

0時間

2時間


9~20時(休憩1時間)で勤務すると、実労働時間は10時間となり法定外残業時間が2時間発生します。そのため、2時間分の割増賃金を支払う必要があります。

なお、労働基準法における残業時間については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

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出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説



法定労働時間を超える残業を行わせる場合の注意点

企業は従業員に対して、法定労働時間を超える残業を無条件に行わせることはできません。法定外残業を行わせる際は、法令上の規定を遵守する必要があります。


36協定の締結・届出を行う

1日8時間もしくは1週40時間の原則的な法定労働時間を超えて残業を行わせる場合には、労働基準法第36条で定められた労使協定の締結・届出が必要です。この労使協定を“36(サブロク)協定”と呼びます。毎週1回あるいは4週を通して4日以上の法定休日を超えて働かせる場合も同様の扱いとなります。


▼労働基準法第36条

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

引用元:e-Gov法令検索『労働基準法


36協定では、残業を行う業務や労働時間の上限を定めて、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

また、36協定の締結・届出を行ったとしても、原則として月45時間・年360時間の限度時間が定められています。臨時的な特別の事情がない限り、限度時間を超えて残業を行わせることはできません。

なお、36協定の締結・届出に関するルールについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

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出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』/e-Gov法令検索『労働基準法


時間外労働の上限規制を遵守する

36協定による法定外残業の限度時間は、原則として月45時間・年360時間と定められています。臨時的な特別な事情があり、特別条項つきの36協定を締結する場合のみ、これを超えて働くことが可能です。

ただし、特別条項つきの36協定であっても必ず超えてはならない時間外労働の上限規制が設けられています。


▼時間外労働の上限

  • 時間外労働は年間720時間以内
  • 月当たりの時間外労働と休日労働の合計は100時間未満
  • 2~6ヶ月の平均がすべて1ヶ月当たり80時間以内
  • 月45時間を超える時間外労働の限度は年間6ヶ月


▼時間外労働における上限規制のイメージ

時間外労働における上限規制のイメージ

画像引用元:厚生労働省『労働時間制度の概要等について


時間外労働の上限規制を超えると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。なお、時間外労働の上限規制は、一部の事業・業務で猶予期間が設けられており、2024年4月1日からの適用となります。

なお、シフト勤務に関する労働基準法と注意点については、こちらの記事で解説しています。

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出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』『労働時間制度の概要等について


割増賃金を支払う

法定外残業を行った場合、時間外労働や休日労働に対する割増賃金の支払いが義務づけられています。


▼時間外労働・休日労働の割増賃金

種類

支払う条件

割増率

時間外労働

法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき

25%以上

時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間、1年360時間など)を超えたとき

25%以上
(25%を超える努力義務)

時間外労働が1ヶ月60時間を超えたとき

50%以上

休日労働

法定休日(週1日)に勤務させたとき

35%以上

東京労働局『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編』を基に作成


1日8時間・週40時間を超える労働には賃金の25%以上、法定休日の労働には賃金の35%以上の割増賃金を支払う必要があります。


▼例:時給1,000円で9時間の労働を行った場合

項目

計算式

基本給

1,000(円)×8(時間)=8,000(円)

割増賃金

1,000(円)×1(時間)×1.25(法定外残業の割増賃金)=1,250(円)

一日当たりの支払額

8,000(円)+1,250(円)=9,250(円)


法定内残業については、法律による割増賃金の支払い義務はありません。ただし、就業規則によって労使間で定めていれば、法定内残業に独自の割増賃金が発生する場合もあります。

なお、時間外手当の計算方法や注意点についてはこちらの記事で解説しています。

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出典:東京労働局『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編



労働時間を正確に把握することが重要

法令に基づいた労務管理を徹底するには、従業員一人ひとりの労働時間を正確に把握する必要があります。

タイムカードや勤怠管理システムで勤怠状況を記録するとともに、シフト作成の段階で残業時間と法令違反の有無を確認することが重要です。

従業員の労働時間を確認しながらシフトを調整すれば、長時間の残業を防げるほか、法令違反を未然に防げます。

シフト管理システムの『シフオプ』なら、シフトの作成時に労働時間や時間外労働を自動で算出して可視化できます。また、法令違反のリスクがあるシフトに対して警告が表示されるため、「給与計算の際に法令上の上限を超える残業が発覚した」といったトラブルも防げます。

シフオプの詳しい機能については、こちらをご確認ください。

  機能紹介 | シフト管理のシフオプ 機能紹介。「シフオプ」はリクルートが提供する、シフト管理システムです。直感的に操作できる編集画面と多彩な機能、きめ細やかな設定で、 企業の規模や形態に合わせて柔軟にご利用いただけます。 https://www.shifop.jp/function/



まとめ

この記事では、所定労働時間と法定労働時間について以下の内容を解説しました。


  • 所定労働時間と法定労働時間の違い
  • 残業の考え方
  • 法定労働時間を超える残業を行わせる場合の注意点
  • 労働時間の管理に役立つシフト管理システム


労働基準法における残業は、法定労働時間を超えるかどうかで判断されます。法定労働時間を超える残業は法定外残業(時間外労働)と呼ばれ、労使間での36協定の締結・届出と割増賃金の支払いが必要になります。

また、労使間の合意があっても超えられない法定外残業の上限が設けられているため、従業員一人ひとりの労働時間を正確に把握・管理することが重要です。

シフト管理システムの『シフオプ』を活用すると、シフトを作成する段階で各従業員の残業時間や法令違反の有無を確認できます。法令違反のリスクがあるシフトを修正したり、残業時間が多い従業員の出勤日数を調整したりすることで、労務コンプライアンスの強化につながります。

詳しくは、こちらの資料をご覧ください。

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