
シフト制の休みはどう管理する? 急な休み希望への対応策と注意点
※2025年6月13日更新
シフト制を採用している職場では、その日に必要な人員数とスタッフの希望を踏まえて休みを設定します。しかし、病気や急用などの理由によってシフトを確定したあとにスタッフから休みの連絡がくるケースがあります。
急な休み希望によって欠員が発生すると、現場の業務が回らなくなりサービス品質の低下を招いたり、ほかのスタッフへの業務負担につながったりする可能性があります。
職場でシフトを作成・管理している担当者(以下、シフト管理者)のなかには、スタッフの急な休み希望にどのように対処すればよいのか、頭を悩ませている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、シフト制における休みの付与方法や急な休み希望への対応策、欠員に柔軟に対応するための体制づくりのポイントについて解説します。
目次[非表示]
シフト制で休みを設定・管理する方法
シフト制には主に3つの種類があり、休みを設定・管理する方法が異なります。
①自由シフト制
自由シフト制は、働く時間や曜日が固定されておらず、スタッフの希望を基に勤務日・休日を設定する方法です。
スタッフにとっては学業やプライベートの予定に合わせて柔軟にシフトを組めることから、働きやすい環境を提供できるという利点があります。しかし、“毎週○曜日”“第2・第4週の○曜日”といったように、曜日・週で休みが固定されていないため、シフトの調整に労力がかかりやすくなります。
また、スタッフ同士で休み希望が重複する可能性があるため、すべての希望を叶えることは難しいといえます。
②固定シフト制
固定シフト制は、働く曜日・時間が固定されており、基本的に同じ曜日・時間に勤務日と休日を設定する方法です。
スタッフは決まった時間に働けるため、プライベートの予定を立てやすいほか、生活リズムを整えられる利点があります。シフト管理者にとっても、基本的に人員調整をする必要がないため、シフトの作成がしやすくなります。
ただし、スタッフの出勤予定日に急な休み希望が出されると、欠員を補填するための代わりの人員を確保するのが難しくなります。固定シフトでは決められたパターンで働くことを前提としているため、自由シフト制よりも急な欠員に対応しづらいといえます。
③完全シフト制
完全シフト制は、働く時間帯や曜日などを定めた勤務パターンを複数用意して、スタッフの希望に応じて勤務枠に組み込む方法です。早番・遅番・夜勤といったように働く時間帯を2~4つの区分に分けて交代制で運用します。
スタッフは週または月ごとに出勤する曜日・時間帯を選択できるため、プライベートの予定を立てやすい利点があります。ただし、生活リズムが不規則になりやすいことから、シフト管理者はスタッフの生活時間や睡眠時間を考慮して休日を設定する必要があります。
特に早朝・深夜勤務が発生する場合には、休日の設定をはじめとする労務管理が煩雑になりやすく、シフト管理者の負担につながる可能性があります。
シフトの確定後に休み希望を申し出られた際の対応策
シフトの確定後にスタッフから急な休み希望を申し出られた場合には、欠員を補填するための対応が必要です。
対応策① | ヘルプを要請する
体調不良やけが、家庭の急用などによって当日または前日に休み希望の連絡があった場合には、シフト管理者や責任者が迅速にヘルプを要請する必要があります。
▼ヘルプを要請する方法
- 社内のスタッフに電話やメールで出勤の可否を確認する
- チャットツールや社内SNSで出勤可能なスタッフを募集する
- 系列店舗や本社に連絡して、代わりのスタッフを調達できないか相談する
なお、午後10〜午前5時までの深夜帯のシフトでヘルプを要請する場合は、スタッフの年齢が満18歳以上かどうかを確認する必要があります。
▼労働基準法第61条
(深夜業)
第六十一条 使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によつて使用する満十六才以上の男性については、この限りでない。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
また、ヘルプの要請によって人員を確保できなかった場合には、出勤時刻の前後で働くスタッフに声をかけて、残業ができないか相談をする方法もあります。
ただし、残業を行わせるには36協定の締結や労働条件通知書への明記などの一定の要件を満たす必要があることに注意が必要です。
▼労働基準法第36条
(時間外及び休日の労働)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
なお、労働基準法に基づく残業のルールについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:e-Gov法令検索『労働基準法』
対応策② | 振替出勤を提案する
固定シフト制や完全シフト制では、突然の都合のほかにも決められたシフトに対して「来週はシフトどおりに出勤できない」と相談されるケースがあります。
シフトどおりに出勤ができないと相談された場合には、振替出勤を提案して勤務日と休日を入れ替えて働いてくれるスタッフを探すことも一つの対応策です。
休み希望に関するシフト作成の注意点
急な休み希望でシフトの調整が必要になった際、シフト管理者の対応によってスタッフとのトラブルにつながる可能性があります。シフトの調整を行う際は、以下の点に注意が必要です。
公平に休みを取れるようにする
シフトを作成する際は、各スタッフが公平に休みを取れるようにシフトの調整を行うことが求められます。
スタッフ全員の休み希望を反映することは難しいですが、特定の従業員だけが希望した休みを取れるような偏りが続くと、ほかのスタッフの不満につながります。
各スタッフの希望が公平に反映されるように優先順位を入れ替えながら調整することが有効です。
休み希望の基本ルールを事前に策定しておく
休み希望について基本となる社内ルールを事前に策定しておくことで、公平なシフトが組みやすくなります。
▼休み希望に関するルールの例
- 特定の日数連続で勤務した次の日は休みにする
- 1ヶ月における休みのうち、1日は土日祝日を含める など
一定の基準が設けられることで、シフト作成の効率化にもつながります。
スタッフ自身に代わりの人を見つけてもらうことは避ける
スタッフから「出勤日を休みにしてほしい」と相談があった際に、「自分で代わりの人を見つけてきて」と指示したり、代わりの人が見つからない場合に承認をしなかったりする行為は避ける必要があります。
労働契約において雇用されているスタッフは会社の業務命令に従う義務が発生しますが、内容に合理性がない業務命令には従う義務はないとされています。
▼業務命令に関するルール
労働契約を結ぶことに伴って、会社の業務命令に従う義務も発生します。業
務命令の内容は、出勤時刻の遵守、毎日の仕事の進め方から残業の指示、職種
や勤務場所の変更、出張・応援から出向等々、会社での生活全般に及びます。
この業務命令は、その命令の内容について責任と権限を持ち、労働者を管理
する立場にある人が発します。労働者は業務命令に従う義務があり、もし、正
当な理由がないのにこの命令に従わなければ、就業規則の定めに従って懲戒処
分されることもあり得ます。
ただ、業務命令ならどのようなものでも従わなければならないというもので
はありません。労働基準法などの法律に違反する内容のものや、労働契約・就
業規則の内容に反するもの、それに従うことによって大きな不利益を被るもの
など内容に合理性がない業務命令に従う義務はないとされています。
引用元:厚生労働省 労働基準局 監督課『知っておきたい働くときのルールについて』
急な休み希望を申し出られた場合でも、代わりの人がいるかどうかにかかわらず承認をする対応が求められます。
出典:厚生労働省 労働基準局 監督課『知っておきたい働くときのルールについて』
振替出勤を依頼する際は割増賃金に気をつける
急な休み希望があった際に振替出勤を依頼する際、労働基準法による割増賃金が発生するケースがあります。
▼労働基準法第37条
(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
振替出勤では、あらかじめ決めた休日と労働日を入れ替えて働くことになるため、“休日労働”の扱いにはならず割増賃金も発生しません。
▼休日の振り替えについて
「休日の振り替え」とは、予め休日と定められていた日を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日とすることを言います。これにより、予め休日と定められた日が「労働日」となり、そのかわりとして振り替えられた日が「休日」となります。従って、もともとの休日に労働させた日については「休日労働」とはならず、休日労働に対する割増賃金の支払義務も発生しません。
引用元:厚生労働省『振替休日と代休の違いは何か。』
一方で、週をまたいで休日と労働日を入れ替えた場合には、1週間の労働時間が40時間以上になる場合には法定労働時間を超えることから、時間外労働に対する割増賃金が発生します。
▼労働基準法第32条
(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
なお、欠員が出たシフトに代わりに入ってくれるスタッフが見つかり、本来休みだった日に休日労働をさせた場合には、休日労働に対する割増賃金が発生することになります。
スタッフに振替出勤を依頼する際の休日の取り扱いや割増賃金については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:e-Gov法令検索『労働基準法』/厚生労働省『振替休日と代休の違いは何か。』
急な休み希望に柔軟に対応するためのポイント
体調不良や家庭の事情などによって出勤できなくなることは、誰にでも起こり得ます。シフト管理者は、急な休みに備えて柔軟にフォローできる体制を整えておくことが重要です。
①スタッフや他店舗と円滑に連絡を取れる体制を整える
スタッフやほかの店舗と円滑に連絡を取れる体制を整えることで、急な休み希望があった場合に代わりの人員を探しやすくなります。
欠員が発生した際に、電話でスタッフ一人ひとりに連絡をするのは時間と労力がかかります。スタッフ全員に一斉連絡を行い、簡単にメッセージのやり取りができるように、チャットツールを活用することが有効です。
また、日頃からスタッフとのコミュニケーションを取り、お互いに助け合う関係づくりをしておくと、急な出勤要請にも承諾してもらえる可能性があります。
②余裕をもって人員を確保しておく
急な欠員に対応するには、余裕を持ってスタッフを確保しておくことも重要です。
柔軟なスケジュールで働ける人材や属性の異なる人材を確保すると、欠員が発生した場合にシフトに入ってもらいやすくなると考えられます。最低勤務日数の希望や勤務可能な時間帯を確認したうえで人材採用を行うことがポイントです。
ただし、採用活動にはコストがかかるほか、余剰人員が発生すると人件費の増加につながるおそれがあります。採用活動の適正化を図るには、時期による繫閑状況や曜日・時間帯別の必要な人員数を把握しておくことが必要です。
③普段からスタッフのシフトに対する希望を把握しておく
各スタッフのシフトに対する希望を把握しておくこともポイントの一つです。
一人ひとりが希望する勤務時間や働き方を聞いておくことで、急な休み希望が出た場合に代わりの人員になり得るスタッフを探しやすくなります。
▼シフトに対する希望の例
- シフトに入りやすい曜日・時間帯
- シフトの増減に関する希望(もっとシフトに入りたい、働く時間帯を増やしたい など)
④シフトの共有が円滑に行える体制を構築する
急な休み希望に柔軟に対応するには、シフトの共有を円滑に行えるようにしておくことが欠かせません。
シフトの共有が円滑に行えない状態でシフトを変更すると、出勤日や時間の認識ミスによるトラブルにつながる可能性があります。
シフトの共有をアナログからデジタルに移行することで、リアルタイムなシフトの情報を迅速に共有できるようになります。
なお、シフトの共有についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
急なシフト変更に対応できる体制を整えるには“シフオプ”が有効
スタッフから急な休み希望を申し出られると、ヘルプの要請やシフトの修正などが必要になり、シフト管理者の負担につながってしまいます。
シフトの変更に柔軟に対応できる体制を整えるには、シフト管理システムの“シフオプ”の活用がおすすめです。『シフオプ』は、シフトの収集・作成・共有をオンラインで完結できるシステムです。
急な休み希望への対応に役立つさまざまな機能が備わっており、シフト管理者の業務効率化や負担の軽減を図れます。
▼急な休み希望への対応に役立つシフオプの機能
機能 |
できること |
ヘルプ募集 |
スタッフへの一斉送信でヘルプの募集を行い、スタッフはオンライン上で返事を行える |
複数店舗管理 |
複数の店舗でシフトの情報を共有して、人員の過不足状況を確認したり、店舗間でヘルプの募集を行ったりできる |
メッセージ機能 |
システム上でコミュニケーションを取り、欠勤の相談対応や代わりのスタッフへの出勤依頼を行える |
そのほかの機能については、こちらをご確認ください。
まとめ
この記事では、シフトの休み希望について以下の内容を解説しました。
- シフト制で休みを設定・管理する方法
- シフトの確定後に休み希望を申し出られた際の対応策
- 休み希望に関するシフト作成の注意点
- 急な休み希望に柔軟に対応するためのポイント
- シフト変更に柔軟に対応できるシフト管理システム
シフト制を採用している職場において、シフトの確定後に急な休み希望を申し出られると、欠員を補填するためのヘルプの要請や振替出勤の提案などの対応が必要になります。
スタッフ自身で代わりに出勤してくれる人を見つけるように指示したり、人手が足りないからといって承認をしなかったりする対応は認められないため、日頃から柔軟にフォローできる体制を整えておくことが重要です。
シフト管理システムの『シフオプ』を活用すれば、システム上でスタッフやほかの店舗にヘルプを要請したり、代わりのスタッフに出勤を依頼するメッセージを送ったりできるため、迅速に欠員の補填を行えます。
詳しい内容については、こちらからお問い合わせください。