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アルバイトの給与計算を正しく行う流れと注意点

※2024年1月25日更新

雇用主は、従業員一人ひとりの労働時間を把握して正しい給与を支払う必要があります。給与計算に間違いがあり未払いが発生すると、労働基準法第24条の違反となってしまい罰金の対象となる可能性があるため、注意が必要です。


▼労働基準法第24条

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

引用元:e-Gov法令検索『労働基準法


しかし、アルバイトによって勤務する時間帯・曜日や時給が異なるため、「労働時間の計算に時間がかかる」「計算ミスが発生してしまう」などの問題に悩まれている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、給与計算を行う基本的な流れと注意点について解説します。

出典:e-Gov法令検索『労働基準法


目次[非表示]

  1. アルバイトの給与計算を行う流れ
  2. 給与計算を行う際の注意点
  3. 正しい給与計算はシステムの活用が有効
  4. まとめ


アルバイトの給与計算を行う流れ

アルバイトの給与計算を行う際には、基本給に加えて各種手当の有無や、社会保険料と税金について確認する必要があります。


①時給を基に基本給を計算する

従業員の時給を基に、給与計算の締め日までの労働時間に対する基本給を計算します。


▼基本給を計算する手順

  1. 各従業員の時給を確認する
  2. 各従業員の労働時間を集計する
  3. 労働時間と時給を乗算して基本給を算出する


▼計算例

従業員の時給が1,200円で1ヶ月の労働時間が140時間の場合、基本給は[1,200円×140時間=16万8,000円]となります。


なお、従業員の労働時間を集計する際は、勤怠情報が記録されたタイムカードや勤怠システムのデータなどの客観的な実績を確認する必要があります。


②総支給額を計算する

労働時間に対する基本給を算出できたら、各種手当を含めた総支給額を計算します。総支給額とは、基本給に手当や交通費などを含めた額のことです。社会保険料や税金を引く前の合計金額となります。


▼計算例

時間外労働や深夜労働などの手当がなく、交通費8,000円のみを支給する場合の総支給額は、[16万8,000円(基本給)+8,000円(交通費)=17万6,000円]となります。


③社会保険料と税金を計算する

総支給額を計算したあとは、社会保険料と源泉徴収を行う税金を計算します。

社会保険料とは、健康保険料と厚生年金保険料を合計した金額のことで、企業と従業員で保険料を半分ずつ負担します。アルバイトでも一定の年収と所定労働時間を超える労働者には、社会保険に加入することが事業者に義務づけられています。


▼社会保険の適用条件

社会保険の適用条件

画像引用元:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし


また、年収が103万円以上(1ヶ月当たりの給与額が8万8,000円以上)になる場合には、所得税の課税対象となり、毎月の給与から源泉徴収を行う必要があります。源泉徴収の対象となる課税所得には、基本給のほか賞与や時間外労働手当、深夜手当などが含まれます。


▼社会保険料と税金を計算する流れ

  1. 社会保険料に加入している場合は社会保険料を計算する
  2. 総支給額から社会保険料の従業員負担分を引く
  3. 2の金額に対して、給与所得の源泉徴収税額表を基に税額を計算する


社会保険料は、標準報酬月額に各保険料率を乗じて算出します。標準月額報酬は、3ヶ月の給与の平均額を1~32(厚生年金)の等級に区分した標準報酬等級から確認できます。例えば、3ヶ月の給与の平均額が15万円になる場合、標準報酬等級は12、標準月額報酬は15万円となります。

健康保険の保険料率は都道府県によって異なりますが、厚生年金保険については全国一律です。全国健康保険協会に加入している従業員の社会保険料は、次のように計算します。


▼社会保険料の計算例

計算項目

計算式

健康保険料

15万円×10.0%(東京都)÷2=7,500円

厚生年金保険料

15万円×18.3%(一律)÷2=1万3,725円

合計

7,500円+13,725円=2万1,225円

※全国健康保険協会『令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表』を基に計算


また、源泉徴収額は、その月の総支給額から社会保険料を控除した金額の3.063%に相当する金額と定められています。国税庁の『給与所得の源泉徴収税額表』から確認することが可能です。


▼源泉徴収額の計算例

その月の総支給額が17万6,000円、社会保険料が2万1,225円の場合、[10万4,000円-2万1,225円=15万4,775円]となり、税額は9,300円となります。


出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』/国税庁『第1 源泉徴収制度について』『給与所得の源泉徴収税額表(令和5年分)


④差引支給額を計算する

最後に、総支給額から社会保険料と税額を差し引いて支給額を計算します。

総支給額が17万6,000円、社会保険料が2万1,225円、税額が9,300円の場合の支給額は、以下のとおりです。


▼計算例

17万6,000円-(2万1,225円+9,300円)=14万5,475円


なお、給与から控除する項目には、上記のほかにも雇用保険料と介護保険料の従業員負担分があります。雇用保険料は、事業の種類によって保険料が異なり、毎年見直しが行われます。介護保険料については40歳以上の従業員が対象となります。

出典:厚生労働省『介護保険制度について



給与計算を行う際の注意点

給与計算を行う際は、割増賃金と労働時間の数え方に注意が必要です。


割増賃金を計算する

時間外労働や休日労働、深夜労働を行った場合には、一定割合以上の割増賃金を支払う必要があります。


▼割増賃金の種類と割増率

種類

支払い条件

割増率

時間外手当

法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき

25%以上

時間外労働が1ヶ月60時間を超えたとき

50%以上

休日手当

法定休日(1週間に1日または4週間に4日以上)に働いたとき

35%以上

深夜手当

22時から翌日5時までの間に働いたとき

25%以上


法定労働時間とは、労働基準法で定められている原則となる労働時間を指しており、企業が独自に定める所定労働時間とは異なります。仮に所定労働時間が7時間の場合に1時間の残業が発生しても、1日8時間の法定労働時間を超えないため、割増賃金は発生しません。

また、深夜に時間外労働をした場合には、深夜手当と時間外手当を合わせた50%以上の割増賃金を支払う必要があります。休日労働が深夜に当たる場合には、休日労働手当と深夜手当を合わせた60%以上の割増賃金が発生します。

例えば、時給が1,200円、勤務時間が13~22時(休憩1時間)のシフトで23時まで働いた場合の割増賃金は、次のようになります。


▼計算例

手順

計算式

1.基本の賃金

1,200円×9時間=1万800円

2.時間外手当+深夜手当

9,600円×(25%+25%)=4,800円

3.1日の支給額

1万800円+4,800円=1万5,600円


22~23時までの勤務時間は、時間外労働と深夜労働の両方に当てはまることから、時給の50%以上の割増賃金が発生することになります。

出典:厚生労働省 東京労働局『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編』/厚生労働省 鳥取労働局『割増賃金の基礎となる賃金とは?


労働時間とみなされる作業がないか確認する

給与計算では、従業員の労働時間を正しく計算することが重要です。業務に従事している時間だけでなく、客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれている場合には労働時間と見なされるため、賃金を支払う必要があります。


▼労働時間とみなされる作業

  • 営業時間外の準備・片づけ
  • 研修やミーティング
  • 休憩中の来客・電話対応
  • 営業時間中の手待ち時間



正しい給与計算はシステムの活用が有効

従業員の労働時間を把握して正しく給与計算を行うには、システムを活用することが有効です。

手作業で労働時間を集計・計算する場合、労力と時間がかかるほか、ヒューマンエラーが発生する可能性があります。特にシフト制の職場では、アルバイト一人ひとりの勤務時間帯が曜日や週ごとに異なるため、給与計算が煩雑化しやすいと考えられます。

計算のミスや割増賃金の未払いなどのトラブルを防ぐには、自動で集計・計算ができるシステムを活用することが有効です。

シフト管理システムの『シフオプ』を活用すると、シフトを作成する際に各従業員の労働時間を自動で計算して可視化できます。作成したシフトデータを出力して、ほかの給与システムや勤怠システムなどに取り込むことも可能です。


▼シフオプの導入効果

シフオプの導入効果


また、シフトを作成する段階で時間外労働や深夜労働の状況を把握しやすくなるほか、法令違反のリスクがあるシフトにはアラートが表示されるため、「給与計算のときに残業が発覚した」というトラブルも防止できます。

詳しい機能は、こちらからご確認ください。

  機能紹介 | シフト管理のシフオプ 機能紹介。「シフオプ」はリクルートが提供する、シフト管理システムです。直感的に操作できる編集画面と多彩な機能、きめ細やかな設定で、 企業の規模や形態に合わせて柔軟にご利用いただけます。 https://www.shifop.jp/function/



まとめ

この記事では、アルバイトの給与計算について以下の内容を解説しました。


  • 給与計算の流れ
  • 給与計算を行うときの注意点
  • 正しい給与計算に役立つシステム


アルバイトの給与計算を行う際は、従業員一人ひとりの労働時間や手当、社会保険料、税金を正しく計算する必要があります。

シフト制の職場では、従業員によって勤務する時間帯や曜日、時給が異なるため、手作業で労働時間を集計したり、賃金を計算したりすることに労力がかかります。効率的かつミスのない給与計算を行うには、労働時間を可視化して管理できるシフト管理システムの活用がおすすめです。

シフオプ』は、シフトの収集・作成・共有をオンラインで行えるクラウド型のシフト管理システムです。シフトを作成する際には、1日や1週間、1ヶ月などの区切りで労働時間を把握できるため、法令を遵守したシフトを作成しやすくなります。
また、ほかの給与管理システムとのデータ連携ができることから、手作業で集計・計算する際に起こりやすいヒューマンエラーも防げます。詳しくは、こちらから資料をダウンロードしていただけます。

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