
扶養の収入上限はいくら?税制・社会保険の年収の壁を一覧で解説
※2026年9月8日更新
「扶養の範囲内で働きたい」と考えている従業員にとって、収入上限となる「年収の壁」は、働き方を考えるうえで押さえておきたいポイントです。扶養には、大きく分けて「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があり、それぞれ収入の基準や、基準を超えた場合の影響が異なります。
近年は、扶養や働き方に関わる制度の見直しが続いています。2025年の税制改正では、従来の「103万円の壁」が123万円へ引き上げられましたが、2026年度税制改正によって、配偶者や扶養親族に関する収入基準がさらに見直されました。また、社会保険では「106万円の壁」にあたる賃金要件の撤廃も予定されています。
この記事では、人事・労務担当者やシフト管理担当者に向けて、2026年時点の主な「年収の壁」を整理したうえで、税制上・社会保険上の扶養の収入基準や今後の制度変更について解説します。
※本記事は2026年9月時点の制度内容を基に作成しています。今後の法改正などにより、収入基準や適用要件が変更される場合があります。
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扶養とは?「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の違い
「扶養」には、大きく分けて「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つがあります。どちらも家族を扶養する際に関わる制度ですが、対象となる制度や収入の基準、扶養から外れた場合の影響が異なります。
▼「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の違い
項目 | 税制上の扶養 | 社会保険上の扶養 |
関係する制度 | 所得税・住民税 | 健康保険・年金 |
主な仕組み | 配偶者控除・扶養控除など | 健康保険の被扶養者・国民年金の第3号被保険者など |
主な影響 | 扶養する側の税負担に関係する | 扶養される側の社会保険料負担に関係する |
基準を超えた場合 | 控除額が減る、または控除を受けられなくなる場合がある | 自身で社会保険料を負担する場合がある |
税制上の扶養
税制上の扶養とは、配偶者控除や扶養控除などを通じて、一定の要件を満たす家族がいる場合に、扶養する側の所得税や住民税の負担が軽減される仕組みです。
収入が一定の基準を超えると、控除額が減ったり、控除を受けられなくなったりする場合があります。
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養とは、一定の収入要件などを満たす家族が、健康保険料を自分で負担せずに「被扶養者」として健康保険に加入できる仕組みです。
また、配偶者の場合は、一定の要件を満たすことで国民年金の第3号被保険者となり、自分で国民年金保険料を納める必要がなくなる場合があります。
このように、同じ「扶養」でも、税制上の扶養と社会保険上の扶養では制度の目的や基準が異なります。「扶養の範囲内で働きたい」という従業員の希望に対応する際は、税金だけでなく社会保険の基準も併せて確認することが大切です。
【税制上の扶養】配偶者・扶養親族の収入上限
2026年度税制改正では、基礎控除や給与所得控除の見直しに伴い、配偶者や扶養親族に関する所得要件も変更されました。
給与収入のみの場合、配偶者控除や扶養控除に関わる「136万円」、配偶者特別控除を最大38万円受けられる「169万円」、本人の所得税に関わる「178万円」、配偶者特別控除の対象上限となる「207万円」などが主な基準となります。
136万円の壁|配偶者控除・扶養控除
2026年分から、配偶者控除の対象となる配偶者や扶養控除の対象となる扶養親族の所得要件が引き上げられました。
給与収入のみの場合、収入が136万円以下であれば、ほかの要件を満たすことで、配偶者は配偶者控除、扶養親族は扶養控除の対象となります。2025年分の123万円以下から、収入基準が引き上げられた形です。
これは、扶養親族や同一生計配偶者の合計所得金額の要件が58万円以下から62万円以下に引き上げられたことに加え、給与所得控除が見直されたことによるものです。
配偶者控除の場合、納税者本人は所得要件などを満たすことで最大38万円の控除を受けられます。ただし、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除の対象外です。
出典:国税庁『源泉所得税の改正のあらまし』『No.1191 配偶者控除』
169万円の壁|配偶者特別控除を最大38万円受けられる上限
配偶者の給与収入が136万円を超えると、配偶者控除の対象から外れ、配偶者特別控除の対象となります。
2026年分では、配偶者の給与収入が169万円以下であれば、納税者本人の所得要件などを満たすことで、最大38万円の控除を受けられます。つまり、136万円以下では配偶者控除、136万円を超えて169万円以下では配偶者特別控除によって、最大38万円の控除額が維持されます。
169万円を超えると、配偶者特別控除の金額は収入に応じて段階的に減少します。そのため、169万円は、配偶者特別控除を最大38万円受けられる収入の上限として、一つの目安となります。
出典:国税庁『源泉所得税の改正のあらまし』『No.1195 配偶者特別控除』
178万円の壁|本人に所得税がかかり始める目安
2026年度税制改正では、所得税の基礎控除と給与所得控除も引き上げられました。
給与収入のみでほかに所得がない場合、給与収入が178万円以下であれば、原則として本人に所得税はかかりません。
ただし、178万円は配偶者控除や扶養控除の対象となるかどうかを判断する基準ではありません。「本人に所得税がかかるかどうか」と「税制上の扶養に入れるかどうか」は、分けて考える必要があります。
出典:財務省『令和8年度税制改正』
207万円の壁|配偶者特別控除の対象上限
配偶者の給与収入が169万円を超えると、配偶者特別控除の控除額は段階的に減少します。
2026年分では、給与収入のみの場合、配偶者特別控除の対象となる配偶者の給与収入は207万円以下です。207万円を超えると、配偶者特別控除の対象外となります。
2025年分は201万5,999円以下が対象だったため、2026年分から対象となる収入の範囲が広がっています。
出典:国税庁『源泉所得税の改正のあらまし』
19歳以上23歳未満の扶養親族は「159万円・197万円」が目安
19歳以上23歳未満の親族については、「特定扶養親族」と「特定親族特別控除」の収入基準を確認する必要があります。
2026年分では、給与収入が136万円以下の場合、ほかの要件を満たせば特定扶養親族として63万円の扶養控除を受けられます。
給与収入が136万円を超えても159万円以下であれば、「特定親族特別控除」によって63万円の控除を受けられます。159万円を超えると控除額が段階的に減少し、197万円を超えると特定親族特別控除の対象外となります。
なお、これらは税制上の基準です。社会保険では、19歳以上23歳未満の被扶養者について「年間収入150万円未満」という別の収入要件が設けられています。
出典:国税庁『源泉所得税の改正のあらまし』/厚生労働省『「年収の壁」への対応』
【社会保険上の扶養】収入上限のポイント
社会保険上の扶養を考える際は、「106万円の壁」と「130万円の壁」が主な基準となります。
「106万円の壁」は、一定の条件を満たす短時間労働者が勤務先の社会保険に加入する基準です。一方、「130万円の壁」は、社会保険上の被扶養者として認定されるための収入基準を指します。
それぞれ意味や適用条件が異なるため、分けて確認することが大切です。
106万円の壁
一定の条件を満たす短時間労働者は、勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)への加入対象となります。
2026年時点では、主に以下の要件をすべて満たす場合が対象です。
従業員数51人以上の企業に勤務している
週の所定労働時間が20時間以上
所定内賃金が月額8万8,000円以上(年収約106万円)
2ヶ月を超える雇用の見込みがある
学生ではない
企業規模については、厚生年金保険の被保険者数を基準に判定されます。
社会保険に加入すると保険料の負担が発生するため、従業員の手取り額が減る場合があります。一方で、厚生年金への加入によって将来受け取る年金額の増加につながるほか、健康保険の傷病手当金や出産手当金などの保障を受けられるメリットがあります。
なお、月額8万8,000円以上という賃金要件は撤廃される予定です。これにより、いわゆる「106万円の壁」はなくなり、週の所定労働時間などを基準に社会保険への加入対象が判断されるようになります。
出典:首相官邸ホームページ『いわゆる「年収の壁」対策』
130万円の壁
勤務先の社会保険への加入要件に該当しない場合、原則として年間収入130万円未満であることが、社会保険の被扶養者として認定されるための収入要件の一つとなります。
年間収入が130万円以上となり、被扶養者の要件を満たさなくなった場合は、勤務先の社会保険に加入するか、国民年金・国民健康保険に加入して自身で保険料を負担することになります。
ただし、19歳以上23歳未満の被扶養者(配偶者を除く)については、年間収入要件が150万円未満に引き上げられています。
また、2026年4月からは、被扶養者の認定における年間収入の確認方法も見直されました。給与収入のみでほかの収入が見込まれない場合、労働条件通知書などに記載された賃金から見込まれる年間収入が130万円未満で、そのほかの要件も満たしていれば、原則として被扶養者として認定されます。
出典:日本年金機構『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き』/首相官邸ホームページ『いわゆる「年収の壁」対策』
【一覧表】年収の壁を一目で比較
ここまでに解説した主な収入基準について、種類と影響を一覧表で整理しました。従業員から扶養や働き方について相談を受ける際は、税制と社会保険のどちらの基準なのかを確認することがポイントです。
年収の壁 | 種類 | 超えた場合の影響 |
106万円 | 社会保険 | 一定の勤務先・労働条件を満たす場合、厚生年金・健康保険への加入対象となる。賃金要件は撤廃予定 |
130万円 | 社会保険 | 原則として社会保険上の被扶養者から外れる収入基準 |
136万円 | 税制 | 給与収入のみの場合、配偶者控除の対象となる配偶者や、扶養控除の対象となる扶養親族の収入の目安 |
150万円未満 | 社会保険 | 19歳以上23歳未満の被扶養者(配偶者を除く)の年間収入要件 |
159万円 | 税制 | 19歳以上23歳未満の特定親族特別控除を63万円受けられる給与収入の上限 |
169万円 | 税制 | 配偶者特別控除を最大38万円受けられる給与収入の上限 |
178万円 | 所得税 | 給与収入のみでほかに所得がない場合、本人に所得税がかからない収入の目安 |
197万円 | 税制 | 19歳以上23歳未満の特定親族特別控除の対象となる収入の上限 |
207万円 | 税制 | 配偶者特別控除の対象となる配偶者の給与収入の上限 |
※税制上の金額は、給与収入のみの場合を前提とした目安です。適用される控除額は、納税者本人や配偶者・親族の所得状況などによって異なります。
年収の壁・支援強化パッケージとは?
「年収の壁・支援強化パッケージ」は、年収の壁を意識して働く時間を抑える「働き控え」への対応として、2023年10月から実施されている支援策です。
社会保険上の「106万円の壁」や「130万円の壁」への対応を中心に、従業員が年収の壁を意識せずに働きやすい環境づくりを支援しています。
130万円の壁への対応|事業主証明の仕組み
繁忙期の残業などによって一時的に収入が増え、年収130万円以上となった場合でも、事業主の証明を活用することで、引き続き被扶養者として認定される場合があります。
事業主が一時的な収入増加であることを証明し、保険者が被扶養者に該当するかを判断します。この仕組みによる被扶養者認定は、同一の人について原則として連続2回まで利用できます。
ただし、基本給の増額など恒常的な収入増加が見込まれる場合や、ほかの被扶養者認定の要件を満たさない場合は対象となりません。
出典:厚生労働省『「年収の壁」への当面の対応策』『「年収の壁・支援強化パッケージ」』
106万円の壁への対応|キャリアアップ助成金
短時間労働者が新たに社会保険へ加入すると、社会保険料の負担によって手取り収入が減る場合があります。こうした負担を意識した働き控えへの対応として、社会保険への加入と収入増加の取り組みを行う事業主を支援するキャリアアップ助成金が設けられています。
2026年3月31日までに対象となる取り組みを行った場合は「社会保険適用時処遇改善コース」、2026年4月1日以降に新たに取り組む場合は「短時間労働者労働時間延長支援コース」を活用できます。
助成金は従業員本人ではなく、要件を満たす取り組みを行った事業主に支給されます。企業が労働時間の延長や賃上げなどに取り組む際の負担軽減につながる制度です。
出典:厚生労働省『事業主の皆さまへ 年収の壁対策 労働者1人につき最大75万円助成します!』『キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)』
2026年以降の社会保険制度の変更点
2025年の年金制度改正により、短時間労働者への社会保険の適用範囲は段階的に拡大します。人事・労務担当者は、いつ・どのような変更が行われるのかを確認し、対象となる従業員への案内や勤務時間の管理に備えておく必要があります。
106万円の壁の撤廃
短時間労働者が社会保険に加入する際の賃金要件「月額8万8,000円以上(年収約106万円)」は、撤廃される予定です。
賃金要件の撤廃後は、年収106万円未満であっても、「週の所定労働時間が20時間以上」などの要件を満たす場合は社会保険の加入対象となります。
そのため、今後の勤務管理では、年収だけでなく「週20時間」という労働時間の基準も確認する必要があります。
出典:厚生労働省『社会保険の加入対象の拡大について』
企業規模要件の段階的撤廃
短時間労働者への社会保険適用に関する企業規模要件も、段階的に縮小され、最終的には撤廃されます。
時期 | 対象となる企業規模 |
現在 | 51人以上 |
2027年10月~ | 36人以上 |
2029年10月~ | 21人以上 |
2032年10月~ | 11人以上 |
2035年10月~ | 企業規模要件を撤廃 |
※企業規模は、厚生年金保険の被保険者数を基準に判定します。
2035年10月には企業規模要件が撤廃され、これまで対象外だった小規模な企業にも社会保険の適用範囲が広がります。
今後、新たに対象となる企業では、社会保険への加入対象となる従業員の把握や本人への案内、勤務時間の管理などが必要になります。自社がいつ対象となるのかを確認し、制度変更に対応できる体制を整えておくことがポイントです。
出典:厚生労働省『パート・アルバイトの方への社会保険の適用について』/日本年金機構『短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内』
扶養の収入上限に関するよくある質問(FAQ)
Q.従業員が一時的に130万円を超えそうな場合、どう対応すればよいですか?
繁忙期の残業などによる一時的な収入増であれば、「年収の壁・支援強化パッケージ」の事業主証明を活用できる場合があります。
事業主が一時的な収入増であることを証明し、保険者が被扶養者に該当するかを判断します。この仕組みによる被扶養者認定は、同一の人について原則として連続2回まで利用できます。
また、2026年4月からは、労働条件通知書などから見込まれる年間収入をもとに被扶養者を認定する取り扱いも始まっています。対象となる従業員がいる場合は、それぞれの制度の要件を確認する必要があります。
Q.掛け持ちで複数の勤務先がある場合、年収の壁はどう判定されますか?
税制上の扶養については、複数の勤務先から給与を受け取っている場合、それらを合算した所得を基に判定します。
一方、短時間労働者に対する社会保険の加入要件は、原則として勤務先ごとに判定されます。ただし、複数の勤務先でそれぞれ社会保険の加入要件を満たす場合は、所定の手続きが必要です。
社会保険上の被扶養者に該当するかを判断する際も、自社からの給与だけでなく、ほかの収入を含めて確認する必要があります。掛け持ちで働く従業員から相談を受ける場合は、自社の給与額だけでは判断できない点に注意が必要です。
Q.2026年度税制改正で、シフト管理の実務はどう変わりますか?
2026年分から、給与収入のみの場合、配偶者控除や扶養控除に関わる収入基準が123万円から136万円へ引き上げられました。そのため、これまで123万円などを目安に勤務時間を調整していた従業員から、働き方や収入について相談を受けるケースも考えられます。
ただし、税制上の基準が変わっても、社会保険には130万円などの別の収入基準があります。また、社会保険の106万円の壁にあたる賃金要件も撤廃される予定です。
一律の金額を「扶養内で働ける上限」として案内するのではなく、税制上の扶養なのか、社会保険上の扶養なのかを確認したうえで、従業員が希望する働き方や収入の目安を確認することがポイントです。
まとめ
この記事では、扶養の収入上限について解説しました。
扶養に関する収入基準は、税制と社会保険で異なるだけでなく、制度改正によって見直しが続いています。人事・労務担当者やシフト管理担当者は、それぞれの基準の違いを把握したうえで、従業員が希望する働き方や収入の目安を確認することが大切です。
一方、従業員ごとに希望する収入や勤務時間が異なると、それぞれの条件を考慮しながらシフトを作成・調整する担当者の負担が大きくなることもあります。特に多くの従業員が働く職場では、勤務状況を把握しながら必要な人員を確保できるよう、シフト管理を効率化する仕組みを整えることも重要です。
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