アルバイト・パートの雇用契約書とは? 労働条件通知書の違いとともに解説
アルバイト・パートを雇用するときに必要な書類の一つに、“雇用契約書”があります。
雇用契約書とは、雇用者と労働者の間で雇用契約を締結するための書面です。雇用契約書とよく混同されやすい書面に、“労働条件通知書”があります。
アルバイト・パートを雇用しようと考えている職場では、「雇用契約書は必要なのか」「労働条件通知書との違いは何か」と疑問に思う担当者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、雇用契約書の概要や必要性、労働条件通知書との違いについて解説します。
雇用契約書とは
雇用契約書とは、雇用条件を明らかにするために雇用者と労働者の間で交わす書類のことです。
民法上で定められた雇用とは、労働者が労働を約束して、雇用者が労働に対して賃金の支払いを約束することを指します。これに基づいて、雇用者と労働者の二者間で契約の合意がなされたことを客観的に証明するものが、雇用契約書です。
雇用契約書は、法律においては作成・交付が義務づけられていませんが、『労働契約法』第4条第2項では、労働契約の内容に関して以下のように明記されています。
▼労働契約法第4条第2項
労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
引用元:e-Gov法令検索『労働契約法』第4条第2項
労働契約に関する労使間の争いを避けるには、双方合意のうえで契約が成立したことを証明できるように、雇用契約書を作成して署名・捺印で残すことが重要です。
なお、雇用契約書は、正社員だけでなく、アルバイト・パートを雇用する際にも交付が必要です。
アルバイト・パートの雇用時に必要な書類については、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
出典:e-Gov法令検索『労働契約法』
雇用契約書が必要な理由
雇用契約書は、雇用者と労働者の間で労働契約に関する齟齬をなくして、トラブルを未然に防ぐために必要です。
もしも入社後に労使間で認識の違いが生じれば、トラブルに発展して雇用者・労働者ともに損失につながるリスクがあります。
このようなリスクを避けるためには、雇用条件に関して労使ともに合意があったことを客観的に証明する雇用契約書を作成して保存しておくことが重要です。
なお、雇用契約書のほかに、労働条件通知書もあり、『労働条件通知書兼雇用契約書』としてまとめることもできます。
雇用契約書と労働条件通知書との違い
雇用契約書と労働条件通知書は、法律の規定や書面への記載内容、労使間の合意といった3つの点で違いがあります。
▼雇用契約書と労働条件通知書の違い
雇用契約書 |
労働条件通知書 |
|
法的効力の有無 |
なし |
あり |
書面への記載事項 |
義務づけなし |
義務づけあり |
労使間の合意の有無 |
あり |
なし |
ここでは、それぞれの違いについて詳しく解説します。
法的効力の有無
雇用契約書は、法律による規定がないため、作成・交付しなくても雇用者が罰則を受けることはありません。
一方、労働条件通知書は『労働基準法』第15条および『労働基準法施行規則』第5条で作成・交付が義務づけられています。違反した場合には罰金が科せられるため注意が必要です。
▼労働基準法第15条
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』第15条
▼労働基準法施行規則第5条第4項
④ 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。
一 ファクシミリを利用してする送信の方法
二 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法施行規則』第5条第4項
労働条件通知書については、労働者が希望した場合であれば、メールやFAX、SNSでの通知も可能です。
ただし、労働者が同意していないにもかかわらず書面以外の方法で通知した場合には、最高30万以下の罰金が科せられます。
出典:e-Gov法令検索『労働基準法』『労働基準法施行規則』
書面への記載事項
雇用契約書には決まった記載項目はありませんが、労働条件通知書には記載が義務づけられている事項があります。
労働条件通知書で記載が義務づけられている項目は、以下のとおりです。
▼労働基準法上・パートタイム・有期雇用労働法上の明示事項
法令 |
明示事項 |
労働基準法上 |
|
パートタイム・有期雇用労働法上 |
|
厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』を基に作成
雇用契約書と労働条件通知書を兼ねる場合には、労働条件通知書の記載事項を網羅することが必要です。
なお、労働条件通知書の例については、厚生労働省が提供している『一般労働者用モデル労働条件通知書(常用、有期雇用型)』をご確認ください。
出典:厚生労働省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』
労使間の合意の有無
雇用契約書は労使間の合意が必要ですが、労働条件通知書の場合は必要ありません。
雇用契約書は、労働契約に労使間の合意があったことを書面で記すことが目的です。これに対して労働条件通知書は、労働条件の明示が目的のため、雇用者から一方的に通知ができるほか、労働者の署名は不要です。
ただし、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねる場合は、署名・捺印欄を設ける必要があります。
まとめ
この記事では、雇用契約書について以下の内容を解説しました。
- 雇用契約書とは何か
- 雇用契約書が必要な理由
- 労働条件通知書との違い
雇用契約書は、雇用者・労働者の双方に労働契約の合意があることを署名・押印によって証明する書面です。法律で義務づけられてはいませんが、労使間のトラブルを回避するためには作成・交付することが望まれます。
混同されやすい労働条件通知書は、法律によって作成・交付が義務づけられています。雇用契約書のような署名捺印は不要ですが、法律で定められた記載事項を守る必要があります。
雇用契約書と労働条件通知書は、個別に作成してもよいですが、労働条件通知書 兼 雇用契約書としてまとめて作成することも可能です。
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こちらの記事では、労働条件通知書の交付のほかに、アルバイト・パートの雇用時に注意する点について詳しく解説しています。併せてご覧ください。