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年収103万円以下でも源泉徴収票は必要? 2025年度税制改正と「年収の壁」を解説

2026年4月10日更新

年収103万円以下のアルバイト・パートであっても、源泉徴収票の発行は法律上の義務です。源泉徴収の有無にかかわらず、給与を支払うすべての従業員に交付する必要があります。

2025年度の税制改正では所得税の非課税ラインが103万円から引き上げられました。また、社会保険の壁(106万円・130万円)についても、2026年中に見直しが予定されており、最新情報の確認が必要です。そのため、企業の人事・労務担当者は「税金の壁」と「社会保険の壁」を分けて理解・対応することが重要です。

この記事では、源泉徴収票の発行義務や年末調整の考え方に加え、税制改正による「年収の壁」の変化と実務対応のポイントを解説します。

目次[非表示]

  1. 年収103万円以下の源泉徴収票の発行義務
  2. 【例外】年収103万円以下でも年末調整が必要になるケース
  3. 源泉徴収票の作成に必要な情報
  4. 【2025年税制改正】「年収の壁」はどう変わった?
  5. 企業の実務対応で押さえるべきポイント
  6. よくある質問(FAQ)
  7. まとめ

年収103万円以下の源泉徴収票の発行義務

正社員だけでなく、年収が103万円以下のアルバイト・パートにも、源泉徴収票の発行が必要です。ただし、基本的には年末調整を実施する必要はありません。

1年間に支払われた給与や、源泉徴収された所得税の額が記載された“給与所得の源泉徴収票”は、源泉徴収の有無にかかわらず、すべての従業員に交付する義務があります。

給与の支払いを受けた従業員は、年末調整を行うことによって、その年の所得税の納税が完了します。所得税が課税されるのは、年収が非課税ラインを超える場合です。2024年までは103万円が基準でしたが、2025年度の税制改正により、恒久的な非課税ラインは123万円に引き上げられました(2025年は時限特例により実質160万円)。非課税ライン以下の場合、所得税は課税されません。

つまり、年収が非課税ライン以下(2025年は実質160万円以下、恒久措置では123万円以下)のアルバイト・パートは、原則として年末調整の必要性は低いものの、扶養控除等申告書の提出状況などによっては実施が必要になるケースもあります。

「所得税がかからないから源泉徴収票も不要」と誤解されがちですが、所得税がかからない場合でも、ほかの収入と合算すると課税所得が発生する場合があるため、源泉徴収票の発行手続きは必要です。

※年末調整とは、従業員に支払った給与から源泉徴収した所得税の合計額と、本来従業員が1年間に収める必要のある税額を年末に精算する手続きのこと。

出典:国税庁『No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等』『No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか』『No.2665 年末調整の対象となる人』『源泉徴収義務者(給与の支払者)の方へ(令和7年分)

【例外】年収103万円以下でも年末調整が必要になるケース

年収103万円以下のアルバイト・パートは、基本的に年末調整は不要ですが、例外となるケースもあります。

なお、2025年度の税制改正により所得税の非課税ラインは123万円(2025年は特例で160万円)に引き上げられていますが、以下の例外ルールは引き続き適用されます。

①給与所得者の扶養控除等申告書を提出している

所得税法』第190条では、給与所得者の扶養控除等申告書を提出した人は、年末調整を実施する義務があると定められています。

第百九十条 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、第一号に規定するその年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が二千万円以下であるものに対し、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合(その居住者がその後その年十二月三十一日までの間に当該支払者以外の者に当該申告書を提出すると見込まれる場合を除く。)において、同号に掲げる所得税の額の合計額がその年最後に給与等の支払をする時の現況により計算した第二号に掲げる税額に比し過不足があるときは、その超過額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当し、その不足額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収してその徴収の日の属する月の翌月十日までに国に納付しなければならない。

引用元:e-Gov法令検索『所得税法』第190条

アルバイト・パートであっても、扶養控除等申告書を事業者に提出しており、以下に該当する場合には、年末調整を行う必要があります。

▼年末調整の対象となる人

  • 1年を通じて勤務している人
  • 年の途中で就職して、年末まで勤務している人
  • 年の途中で退職している人のうち、以下に該当する人
  • 死亡または著しい心身の障がいのため退職した人
  • 12月中の給与支払いを受けたあとに退職した人
  • 本年中に支払いを受ける給与の総額が123万円以下の人
  • 年途中で海外支店へ転勤して、非居住者となった人

ただし、1年間に支払う給与総額が2,000万円を超える場合や、災害減免法による減免の適用を受けている場合は、年末調整の対象外となります。

出典:国税庁『No.2665 年末調整の対象となる人』/e-Gov法令検索『所得税法

②給与が8万8,000円を超えている月がある

その年のうち、1ヶ月の給与が8万8,000円を超える月がひと月でもある場合には、年末調整が必要となります。

所得税が給与から源泉徴収される基準は、ひと月で8万8,000円以上の給与支払いがある場合です。

アルバイト・パートで、その年の1〜12月に8万8,000円以上の給与を支払う月がある場合には、源泉徴収が行われているため、年末調整による精算が必要になります。

扶養控除等申告書の提出を忘れると、月の給与額にかかわらず源泉徴収されてしまううえ、年末調整も行われません。従業員への提出案内を徹底しましょう。

出典:国税庁『令和8年分 源泉徴収税額表

源泉徴収票の作成に必要な情報

給与所得の源泉徴収票は、税務署への提出要否にかかわらず、給与を支払うすべての従業員に作成・交付が必要です。

源泉徴収票を作成する際は、従業員の給与や控除に関する以下の情報が必要になります。

▼源泉徴収票の作成に必要な情報

項目
内容
主な情報
  • その年に確定した給与の支払い金額
  • 源泉徴収税額
  • 給与から控除した社会保険料の金額
年末調整をした場合のみ
  • 基礎控除の額
  • 給与所得控除後の金額、所得控除の合計額
  • 配偶者特別控除の額
  • 所得金額調整控除額


なお、税務署への提出要否と記載事項の詳細については、国税庁のWebサイトをご確認ください。

No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等

給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引

出典:国税庁『給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引』『No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等

【2025年税制改正】「年収の壁」はどう変わった?

2025年度の税制改正により、アルバイト・パートの税務処理に関わる「年収の壁」が大きく見直されました。ここでは、人事・労務担当者が押さえるべき改正内容を整理します。

103万円の壁は「なくなった」わけではない

「103万円の壁が廃止された」という報道を目にすることがありますが、正確には103万円という基準が消えたわけではありません。改正により変わったのは、所得税の非課税ラインを構成する「基礎控除」と「給与所得控除」の金額です。

項目

改正前

(〜2024年)

改正後

(2025年〜)

変更幅

基礎控除(本則)

48万円

58万円

+10万円

給与所得控除

(最低額)

55万円

65万円

+10万円

非課税ライン

(恒久)

103万円

123万円

+20万円

改正前の基礎控除は最大48万円でしたが、58万円まで引き上げられたうえで、さらに低・中所得者については控除額が上乗せされます。

この恒久的な改正により、扶養控除・配偶者控除の対象となる年収上限も103万円から123万円に引き上げられています。

出典:国税庁『令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)』/首相官邸ホームページ『いわゆる「年収の壁」対策

2025年の時限特例|非課税ラインは実質160万円に

2025年分の所得税については、恒久措置に加えて時限的な特例措置が設けられています。

給与収入が約200万円以下(正確には200万3,999円以下)の場合、基礎控除に37万円の上乗せ措置が適用され、基礎控除は最大95万円となります。給与所得控除65万円と合わせると、2025年の実質的な非課税ラインは160万円です。

▼2025年分の非課税ラインの構成

  • 給与所得控除:65万円
  • 基礎控除(本則):58万円
  • 基礎控除(特例上乗せ):37万円
  • 合計:160万円

出典:国税庁『令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)

2026年以降|178万円への引き上げが決定

2025年12月26日に決定された令和8年度税制改正大綱により、2026年分の所得税から非課税ラインが178万円に引き上げられることが決まりました。

項目

2025年

2026年〜(予定)

基礎控除(本則)

58万円

62万円

基礎控除(特例上乗せ)

+37万円

+42万円

給与所得控除(最低額)

65万円

69万円

基礎控除

(追加特例※所得に応じて変動)

-

489万円以下:+42万円

489万円超:+5万円

※令和8・9年分(2026・2027年)

非課税ライン(特例込)

160万円

178万円

物価上昇に連動して基礎控除と給与所得控除がそれぞれ4万円引き上げられ、さらに特例措置も拡大されます。また、2026年以降は、基礎控除に加えて特例による加算があり、さらに所得金額に応じて追加の加算が適用されます。

出典:財務省『令和8年度税制改正の大綱の概要

特定親族特別控除の新設(19〜22歳向け)

2025年の改正では、19〜22歳の大学生・専門学生を対象とした「特定親族特別控除」が新設されました。

従来は学生アルバイトの年収が103万円を超えると親の扶養控除(63万円)が一気になくなっていましたが、改正後は123万円〜150万円まで満額63万円の控除が維持され、150万円を超えても188万円まで段階的に控除が減少する仕組みになっています。

特定親族特別控除額

画像引用元:国税庁『令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A

学生アルバイトを多く雇用する企業では、従業員やその保護者からの問い合わせが増える可能性があるため、制度の概要を把握しておくことが重要です。

出典:国税庁『令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A』/首相官邸ホームページ『いわゆる「年収の壁」対策

社会保険の壁は維持されているが、見直しが進行中

税制改正で「年収の壁」が引き上げられた一方で、社会保険の壁(106万円・130万円)については、現時点では大きな枠組みの変更はありません。ただし、2026年にかけて制度の見直しが予定されており、今後変更される可能性があります。

年収の壁

制度区分

改正の有無

約110万円

住民税

100万円→110万円に引き上げ

106万円

社会保険

現時点では維持(今後見直し予定あり)

123万円

所得税(扶養控除)

103万円→123万円に引き上げ

130万円

社会保険

現時点では維持(今後見直し予定あり)

160万円

所得税

(本人・2025年)

103万円→160万円に引き上げ

178万円

所得税

(本人・2026年〜)

160万円→178万円に引き上げ

税制上の「壁」は見直されていますが、社会保険の「106万円・130万円の壁」については現時点では維持されています。ただし、2026年中の制度改正が予定されているため、今後の動向も踏まえて整理して伝える必要があります。

企業の実務対応で押さえるべきポイント

税制改正を踏まえ、人事・労務担当者が実務で対応すべきポイントを整理します。

扶養控除等申告書の確認フローを見直す

基礎控除額や給与所得控除額が変更されたことに伴い、2025年分以降の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の確認フローを見直す必要があります。

特に以下の点を確認しましょう。

  • 扶養親族の所得要件が「48万円以下」から「58万円以下」に変更されている
  • 配偶者控除の対象年収が123万円以下に拡大されている
  • 基礎控除申告書に特定親族特別控除申告書が追加されている

シフト管理と給与管理の連携を強化する

従業員が「103万円以内に抑えたい」と希望するケースが減ることで、パート・アルバイトの労働時間が増え、シフトの柔軟性が高まる可能性があります。

一方で、社会保険の壁(106万円・130万円)は変わらないため、年収が106万円や130万円を超えないようにシフトを調整したいという従業員のニーズは引き続き存在します。

シフト管理システムと給与管理システムを連携させ、従業員ごとの累計給与額をリアルタイムで把握できる体制を整えることが重要です。

従業員への説明を準備する

「103万円の壁がなくなったと聞いたのですが、もっと働いても大丈夫ですか?」こうした質問に正確に答えられるよう、税金の壁と社会保険の壁の違いを整理しておきましょう。

従業員から質問を受けた際に説明すべきポイントは以下のとおりです。

  • 所得税の非課税ラインは2025年から160万円(2026年から178万円)に引き上げ
  • 扶養控除の対象年収は123万円以下に拡大
  • 社会保険の加入基準(106万円・130万円)は変更なし
  • 社会保険に加入すると、企業側にも保険料負担が発生する

よくある質問(FAQ)

Q.年収103万円以下のアルバイトに源泉徴収票を発行しないとどうなりますか?

A. 所得税法に基づく法的義務のため、発行しない場合は税務調査で指摘を受ける可能性があります。従業員が確定申告や扶養控除の確認で必要とするケースもあるため、必ず発行してください。

Q.2025年の税制改正で「103万円の壁」はなくなったのですか?

A.103万円という数字自体がなくなったわけではありません。恒久的な非課税ラインは123万円に、時限特例を含めると2025年は160万円に引き上げられました。扶養控除の基準は123万円です。

Q.月給8万8,000円を超える月がある場合、年収が103万円以下でも源泉徴収されますか?

A.はい。扶養控除等申告書を提出済みの場合、月額8万8,000円以上で源泉徴収が行われます。年収が103万円以下であれば年末調整で全額還付されますが、精算手続きとしての年末調整は必要です。

Q.社会保険の「106万円の壁」「130万円の壁」は変わりましたか?

A.税制改正の枠組みでは変更されていませんが、社会保険制度の改正として見直しが進んでいます。106万円の壁については賃金要件の撤廃が予定されており、130万円の壁についても2026年4月から判定基準が緩和されます。税金の壁と社会保険の壁は根拠となる制度が異なるため、それぞれの最新動向を確認することが重要です。

Q.2026年から178万円の壁になると、企業の源泉徴収事務はどう変わりますか?

A.2026年度は年末調整で1年分の減税が反映される形となり、毎月の源泉徴収額への反映は2027年1月分からです。給与計算システムの更新スケジュールを確認しておきましょう。

Q.学生アルバイトの「特定親族特別控除」とは何ですか?

A.19〜22歳の扶養親族を対象に2025年から新設された制度です。年収150万円まで満額63万円の控除が適用され、188万円まで段階的に控除が減少します。学生の働き控えを緩和する目的で設けられました。

まとめ

この記事では、アルバイト・パートの源泉徴収票と2025年税制改正について、以下の内容を解説しました。

  • 年収103万円以下の源泉徴収票の発行義務
  • 年収103万円以下でも年末調整が必要になるケース
  • 源泉徴収票の作成に必要な情報
  • 【2025年税制改正】「年収の壁」はどう変わった?
  • 企業の実務対応で押さえるべきポイント
  • よくある質問(FAQ)

税制改正により「年収の壁」は大きく変わりましたが、源泉徴収票の発行義務や年末調整の基本的な仕組みは変わりません。企業の人事・労務担当者の方は、日頃からアルバイト・パートの給与額を管理し、法令に基づいた適切な処理を行うことが重要です。

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