アルバイトの労働基準法って?雇用の前に知っておきたい適用範囲や定義
雇用形態を問わず、労働基準法で定められた決まりがあります。
雇用形態がアルバイトだからといってないがしろにして良いわけではありません。
また、労働基準法をしっかりと把握したうえで企業や店舗を運営していくことで、従業員も気持ち良く働けるようになり、定着率の改善にもつながっていきます。
今回は、労働基準法で定められるアルバイトについての内容をまとめていきます。
アルバイトにも労働基準法はあるの?
前述した通り、アルバイトにも労働基準法は適用されます。
労働基準法では対象となる労働者を、
「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」
と定めています。アルバイト(短時間労働者)ももちろん「労働者」に該当し、労働基準法が適用されます。
また、労働基準法では満18歳末満の年少者(高校生等)を守るさまざまな仕組みも定められています。
第56条1項に「使用者は、児童が満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了するまで、使用してはならない」と定められていて、このため一般的に中学生は就業できないとされているのです。
ただ、労働基準監督署の特別な許可を得れば15歳未満でも就業できる場合があります。
(参照:厚生労働省│アルバイトを雇う際、始める前に知っておきたいポイント)
労働基準法における「アルバイトの労働時間」
法定労働時間
労働時間についても、年齢によって決まりが異なります。
18歳未満の労働者は、22時から5時までのいわゆる「深夜労働」が原則禁止とされています。18歳以上のアルバイト労働者についても過剰労働から労働者を守る仕組みが定められていて、
- 1週間で40時間以上(休憩を除く)
- 1日で8時間以上(休憩を除く)
の労働が禁止されています。
時間外労働
また、近年なにかと話題になる、時間外労働、いわゆる「残業」については原則として、
- 1か月で45時間以内
- 1年で360時間以内
と定められています。
割増賃金
ただ、上記の内容はすべて「原則」として決まっているもので、業種や職種の特性によってこの範囲に収まらない場合もあるでしょう。その場合の決まりも存在します。
雇用主は、法定労働時間を越えて労働をさせた場合に「通常賃金の25%以上割増しした賃金」を支払う義務があります。仮に通常時給が1,000円の場合、法定時間外労働分の時給1,250円以上の支払いが必要です。
休憩時間
労働者への休憩時間についても労働基準法で定められています。
休憩時間は法律で「労働者の権利として労働から離れることを保障されている時間」と定義されていて、アルバイトの場合、
- 6時間以上勤務の場合、45分以上の休憩
を取る権利があります。
労働基準法における「アルバイトの有給休暇」
有給休暇の条件って?
アルバイトにも「有給休暇」を取得する権利があります。
以下の条件を満たしていれば、正社員、契約社員、パート、アルバイトなど雇用形態を問わず、有給休暇を取得することができます。
- 週1日以上もしくは年間48日以上勤務している
- 雇用された日から6か月以上継続勤務している
- 決められた労働日数の8割以上を出勤している
有給休暇は上記の条件を満たしたうえで、労働時間も考慮し労働者に与えられます。
たとえば、1週間の労働時間が30時間を超える場合には、初年度で年間10日の有給休暇が付与されます。
初回に付与されてから翌々年までは1年ごとに1日ずつ、それ以降は1年ごとに2日ずつ増やした日数を勤続年数に応じて取得できます。ただし、取得できる有給休暇の日数は無限に増え続けるわけではなく、最大で20日間が上限とされています。
1年間で消化しなかった有給休暇については翌年まで繰り越すことができますが、翌々年以降に繰り越すことはできません。アルバイトの心身の健康のためにも、有給休暇を利用できる環境を整えましょう。
どれくらい支払えばいい?
有給期間に支払われる賃金の算出方法は、
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常賃金
- 過去3か月の平均賃金
- 健康保険の標準報酬(日額)
の3種類から雇用主が選択します。
健康保険協会が定める標準報酬については、設定方法や注意など、下記にも書かれていますので確認しておきましょう。
(参照:全国健康保険協会|標準報酬月額の決め方)
労働基準法における「アルバイトの解雇」
雇用主が労働者を解雇するには、「社会の常識を鑑みた正当な理由」が必要です。
「気に入らないから」「仕事ができないから」などのあいまいな理由で解雇することはできません。
労働基準法において、会社は就業規則で事前に「労働者を解雇する条件」を記載しておかなければならない決まりになっています。
また、就業規則に記載があり、正当な理由があったとしても、雇用主は、少なくとも30日前に労働者に対して「解雇の予告」をする必要があります。
解雇予告を行わない場合や日数を短縮したい場合、「短縮した期間分の平均賃金(解雇予告手当)」を労働者に支払う必要があります。
上記が行われていない解雇は、少なくとも解雇を通知してから30日を経過するか、所定の解雇予告手当が支払われるまでは無効とされます。
(参照:東京労働局│労働基準法のあらまし)
まとめ
アルバイトを雇用する際、労働基準法をしっかり理解しておくことはとても重要です。
「アルバイトだから平気」という考えは危険であり、労働基準法を遵守できていないことは「従業員が満足できる環境」を整えられないことにもつながります。
従業員の満足度の低下にともないサービスの質も低下ということにならないためにも、法律で定められる内容を把握したうえで、それに沿った社内の決まりを整備していきましょう。
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