勤務形態の種類 | 企業側・従業員側でどのようなメリット・デメリットがある?

勤務形態の5つの種類。多様な働き方を導入する際の労務管理のポイント

※2024年2月2日更新

近年、働き方改革の実現や人手不足の解消に向けて、多様な勤務形態の導入が推進されています。

従業員が働きやすく、プライベートと両立しやすい勤務形態を導入することは、生産性の向上や離職の防止にもつながると期待されています。

勤務形態の見直しや新制度の導入を検討している人事・労務担当者のなかには、「どのような勤務形態があるのか」「労務管理をどのように行えばよいのか」と気になる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、勤務形態と雇用形態の違いや代表的な勤務形態の種類、労務管理を行うポイントについて解説します。


目次[非表示]

  1. 勤務形態とは
  2. 雇用形態との違い
  3. 代表的な勤務形態の種類
  4. 多様な勤務形態を導入する際の労務管理のポイント
  5. まとめ


勤務形態とは

勤務形態とは、従業員の働く時間帯や頻度を決めた型のことです。シフトの決め方や交代制による勤務時間帯の種類など、従業員の働き方を指します。

少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や働く人のニーズの多様化、仕事と家庭生活の両立などの課題に対応するには、個々の事情に応じて柔軟に働き方を選択できる職場づくりが求められます。

多様かつ柔軟に働ける勤務形態を取り入れることによって、人材の確保をはじめ、子育てや介護などと両立しながら就業を継続できます。また、効率的・自律的な働き方ができるようになると、ワークライフバランスを確保しやすくなり、従業員の働きやすさや満足度の向上につながると期待できます。



雇用形態との違い

雇用形態とは、企業と従業員が交わす雇用契約の種類を指します。勤務形態と雇用形態では、区分の仕方に違いがあります。

勤務形態は、働く時間帯や頻度によって区分されます。これに対して雇用形態は、正規雇用と非正規雇用、直接雇用と間接雇用のように、企業との雇用契約上の関係性で区分されます。


▼代表的な雇用形態

雇用形態

説明

正社員

労働契約の雇用期間に定めがない雇用形態

契約社員

労働契約で雇用期間が定められている雇用形態

アルバイト・パートタイム労働者

1週間の所定労働時間が同じ事業所の正社員と比較して短い雇用形態

派遣社員

派遣元となる人材派遣会社が雇用主となり、企業と労働者派遣契約を交わして労働者を派遣する雇用形態



代表的な勤務形態の種類

企業に導入されている勤務形態には、主に5つの種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の職種や業務の特性、従業員のニーズに応じて導入することが重要です。


①固定労働時間制

固定労働時間制は、法定労働時間の範囲内において就業規則で定めた勤務時間帯に働く勤務形態のことです。

労働基準法』第32条では、原則となる法定労働時間が1日8時間・週40時間と定められています。固定労働時間制の働き方では、この法定労働時間のなかで企業が始業・終業時刻を定めて、毎日固定の時間に勤務します。


▼企業側のメリット・デメリット

項目

内容

メリット

  • 勤務時間帯が固定されているため、勤怠管理や給与計算を行いやすい
  • 人件費の管理がしやすくなる

デメリット

  • 急な欠勤が出た場合の人員確保が難しい
  • 繁忙期の人員調整や業務スケジュールの策定が難しい


▼従業員側のメリット・デメリット

項目

内容

メリット

  • 毎日規則的に働けるため、プライベートの予定を立てやすい
  • 収入が安定しやすい

デメリット

  • 出勤日が決まっているため、急な休みを取りにくい
  • フルタイムで働ける場合に限られる


出典:厚生労働省『労働時間・休日


②シフト勤務制

シフト勤務制は、企業の営業時間内で一定の勤務パターンを組み合わせて、従業員が交代制で働く勤務形態です。

一般的に、1日の稼働時間が長い飲食店やサービス業、工場などで採用されています。シフトのパターンには、固定シフト制や希望シフト制、交代制などが挙げられます。


▼企業側のメリット・デメリット

項目

内容

メリット

  • 営業時間を長く設定できる(早朝や深夜など)
  • 短時間での勤務を希望する学生や主婦・主夫なども募集しやすい

デメリット

  • 人員調整や休み希望の反映が必要になり、シフト作成に労力がかかる
  • 希望シフト制の場合、シフトが埋まらずに人員不足が発生する可能性がある

▼従業員側のメリット・デメリット

項目

内容

メリット

プライベートの予定に合わせて出勤日時を決めやすい
事前に申請すれば、まとまった休みを取りやすい

デメリット

シフトが決まっていない期間は先の予定を立てにくい
土日勤務や深夜勤務がある場合は、生活が不規則になりやすい


③フレックスタイム制

フレックスタイム制は、一定の期間で定めた総労働時間の範囲内で、従業員が始業・終業時刻を自由に決定できる勤務形態です。

総労働時間は、3ヶ月以内の一定期間(清算期間)を平均して、あらかじめ定めた総労働時間を超えない範囲で設定します。また、必ず出社しなければならない“コアタイム”を定めることも可能です。

なお、フレックスタイム制を導入する際は、就業規則で規定するとともに、労使協定で所定事項を定める必要があります。


▼企業側のメリット・デメリット

項目

内容

メリット

  • 労働時間を効率的に分配することで、生産性の向上が期待できる
  • 仕事とプライベートを両立しやすい職場となり、定着率の向上につながる

デメリット

  • 労働時間の管理や賃金清算が複雑になりやすい
  • 社内や取引先との連携に支障がでる可能性がある


▼従業員側のメリット・デメリット

項目

内容

メリット

  • プライベートの予定に合わせて出勤日時を決めやすい
  • 事前に申請すれば、まとまった休みを取りやすい

デメリット

  • シフトが決まっていない期間は先の予定を立てにくい
  • 土日勤務や深夜勤務がある場合は、生活が不規則になりやすい


出典:厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き


④変形労働時間制

変形労働時間制は、一定期間を平均して、法定労働時間を超えない範囲で特定の日・週に法定労働時間を超えて労働できる勤務形態です。

一定期間の単位は、1週・1ヶ月・1年に分けられています。いずれの場合も、期間内の総労働時間を労使協定または就業規則で定めて、その枠内で働くことになります。


▼企業側のメリット・デメリット

項目

内容

メリット

  • 繁閑状況に応じて所定労働時間を設定することで残業代を削減できる
  • 適正な人員投入によって、業務の効率化を図れる

デメリット

  • 労働時間の算出や賃金清算などの労務管理が煩雑になりやすい
  • 他部署との間で労働時間のばらつきが生じて、従業員の不満につながる可能性がある


▼従業員側のメリット・デメリット

項目

内容

メリット

  • メリハリのある働き方ができるようになり、ワークライフバランスを維持しやすい
  • 残業を減らせるため、業務負荷による体調不良を防ぎやすい

デメリット

  • 労働時間の変化で生活リズムが崩れることがある
  • 他部署と労働時間が異なる場合、連携が取りにくい


出典:厚生労働省『労働時間・休日


⑤みなし労働時間制

みなし労働時間制は、労働時間の算定が困難な職種において、所定労働時間を労働したものとみなす勤務形態です。

みなし労働時間制には、事業場外みなし労働時間制・専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制の3種類があり、事業場外で働く人や研究開発、企業の経営企画・調査などの職種で導入されています。


▼企業側のメリット・デメリット

項目
内容
メリット
  • 効率的に働く意識が生まれることで、生産性の向上が期待できる
  • 人件費を固定化できるため、経営管理しやすくなる
デメリット
  • 個人の能力や残業の状態などを把握しにくい
  • みなし労働時間に含まれる残業が発生しなかった場合でも、同じ賃金を支払う必要がある


▼従業員側のメリット・デメリット

項目
内容
メリット
  • 自分のペースで仕事をしやすい
  • 効率的に仕事を終わらせると、みなし労働時間よりも早く退勤できる
デメリット
  • みなし労働時間の範囲内では残業代が支払われない
  • サービス残業が発生しやすい


出典:厚生労働省『労働時間・休日



多様な勤務形態を導入する際の労務管理のポイント

多様な勤務形態を導入する際には、労働時間の管理や給与計算が複雑になりやすい課題があります。新たな勤務形態を導入する際は、法令を遵守したうえで効率的に労務管理を行える体制づくりと、システムを活用することがポイントです。

なお、企業コンプライアンスと内部統制については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

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①勤務形態ごとの就業ルールを整備する

新しい勤務形態を導入する場合には、勤務形態ごとの就業ルールを整備して、公平な制度運用と対象者の把握がしやすいようにすることが重要です。

また、一人ひとりの労働時間を把握することが難しくなるため、過重な長時間労働やサービス残業を防ぐための対策も求められます。


▼就業ルールに定めておく内容

  • フレックスタイム制や変形労働時間制などの対象者の条件と対象となる業務
  • 作業内容や成果物などの報告・共有方法
  • 勤務時間を記録する方法
  • 残業時間の申告または申請方法


②勤怠管理やシフト管理ができるシステムを導入する

多様な勤務形態を導入すると、従業員一人ひとりの勤怠状況や労働時間について、管理者が個別に確認・把握することは難しくなります。

法令に基づいた労務管理を行うには、システムを導入して勤怠状況や労働時間を一元管理できるようにすることがポイントです。


▼システムの活用例

  • 勤怠管理システムで出勤・退勤の時刻を記録して、実労働時間をリアルタイムに把握・管理する
  • 業務量やスケジュールを確認しながら、シフト管理システムで各従業員の出勤日・時間帯・労働時間を設定してシフトを組む



まとめ

この記事では、勤務形態について以下の内容を解説しました。


  • 勤務形態と雇用形態の違い
  • 代表的な勤務形態の種類
  • 多様な勤務形態を導入する際の労務管理のポイント


働き方改革が推進される今、個々の事情やニーズに応じて柔軟に働き方を選択できる職場づくりが求められています。働く時間帯を選べる多様な勤務形態を導入すると、人材の確保や業務の効率化、ワークライフバランスの向上などにつながることが期待できます。

勤務形態の種類によってメリット・デメリットがあるため、自社の職種や業務の特性、従業員のニーズに合った働き方を導入することが重要です。

また、多様な勤務形態を導入すると、労働時間の管理や給与計算が煩雑化しやすくなります。法令に則った労務管理を行うために、勤務形態の就業ルールを定めるとともに、システムを活用して勤怠や労働時間を一元管理することがポイントです。

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