タイムカードの押し忘れを防ぐ4つの対策法。原因や企業へのリスクとは
※2024年3月1日更新
企業には、労働者の労働時間を正確に管理するために、労働日ごとの始業・終業時刻を客観的に把握する義務が定められています。
勤怠管理にタイムカードを採用している職場では、押し忘れによって従業員の正しい労働時間を把握できなくなるケースがあります。
法令に基づいた適切な労務管理・給与管理を行うためには、タイムカードの押し忘れを防ぎ、労働時間を正確に記録することが重要です。
企業の人事労務担当者のなかには、「タイムカードの押し忘れが頻繁に起きてしまう」「どのような対策が有効なのかを知りたい」などとお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、タイムカードの押し忘れが起こる原因や企業へのリスク、具体的な対策法について解説します。
目次[非表示]
タイムカードの押し忘れが起こる原因
タイムカードの押し忘れが起こる主な原因には、以下が挙げられます。
▼タイムカード押し忘れの原因
- 仕事の準備やスケジュール確認に気を取られる
- 出退勤時に目に入りにくい場所にタイムレコーダーが置かれている
- タイムレコーダーの数が少ない
出勤時には、仕事の準備をしたり、その日のスケジュールを確認したりすることに気を取られやすくなります。タイムレコーダーがオフィスや店舗の入り口になく、出退勤時に目に入りにくい場所に置かれている場合には、打刻を忘れやすくなると考えられます。
また、タイムレコーダーの数が少ない場合、出退勤の時間帯に混雑しやすくなります。「後から打刻をしよう」と混雑を避けて後回しにすることで、そのまま押し忘れてしまうケースがあります。
タイムカードの押し忘れによる企業へのリスク
タイムカードは、企業が従業員の労働時間を管理するうえで欠かせません。タイムカードの押し忘れがあった場合には、さまざまなリスクにつながります。
正確な労働時間が分からなくなる
タイムカードの押し忘れがあると、人事労務担当者が従業員の正確な労働時間を把握できません。
正確な労働時間を把握できていない場合、法令に違反する長時間労働が行われたり、給与の計算間違いが発生したりして、労務違反に関するトラブルにつながる可能性があります。
人事労務担当者の負担になる
タイムカードの押し忘れが発生した際には、正確な労働時間を把握するために人事労務担当者が本人の出退勤時刻を調べて事実確認を行う必要があります。
頻繁にタイムカードの押し忘れが発生すると事実確認に労力・時間がかかり、人事労務担当者が対応する本来の業務に支障をきたす可能性があります。
残業代の未払いが発生する可能性がある
残業時間を正確に把握できていないことによって、残業代の未払いが発生する可能性があります。残業代の未払いは、以下のリスクにつながります。
▼残業代未払いのリスク
- 従業員から訴訟される可能性がある
- 外部に公表されると企業のイメージ低下を招く
退職した従業員に未払い分の残業代を請求された場合には、未払いの残業代を支払うだけでなく、付加金や遅延損害金が発生することもあります。また、残業代の未払いによるトラブルは、自社の社会的な信用にも影響します。
従業員がタイムカードを押し忘れたときに企業が行う対応
従業員がタイムカードを押し忘れたときには、正しい始業・就業時刻へと修正を行うとともに、今後繰り返さないための措置を検討します。
タイムカードに手書きで修正してもらう
従業員から「タイムカードを押し忘れた」と報告があった際に、本人の手書きによって出退勤の時間を自己申告してもらう方法があります。
この際、本人の自己申告によって把握した労働時間が正しいかどうかについては、必要に応じて実態調査を実施して確認・修正を行います。
▼実態調査に用いる情報の例
- オフィスへの入館記録
- オフィスや店舗などの監視カメラの映像
- パソコンや業務システムの使用時間 など
始末書を書いてもらう
タイムカードを押し忘れた従業員への個別対応として、始末書を書いてもらうことが考えられます。
始末書とは、従業員がトラブルやミス、規則違反などを起こした際に企業へと提出する書類です。問題の事実関係を明らかにして、反省の意思や再発防止のための行動改善について記載してもらいます。
▼始末書に記載する項目
- 問題の事実
- 問題が起きた背景
- 反省の意
- 今後の対策
従業員に始末書を書いてもらうことで、タイムカードの押し忘れに対する意識の改善につながると期待できます。
就業規則に基づいて減給を行う
タイムカードの押し忘れを繰り返す従業員に対しては、減給処分を行うことも考えられます。ただし、減給を行う場合には、あらかじめ就業規則に減給するケースや減給額を明確に定めておくことが必要です。
減給額については、『労働基準法』第91条において限度額が定められています。
▼労働基準法第91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
また、タイムカードを押し忘れた日時を欠勤扱いにしたり、罰金を定めたりする行為は法令違反に当たるため、行わないように注意が必要です。
▼労働基準法第24条
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
▼労働基準法第16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』
出典:e-Gov法令検索『労働基準法』
タイムカードの押し忘れを防ぐ対策法
タイムカードの押し忘れを防ぐには、打刻方法を見直したり、打刻に対する意識を高めたりする対策法が考えられます。
①出入り口付近にタイムレコーダーを設置する
オフィスや店舗の出入り口付近にタイムレコーダーを設置することで、出退勤の際に従業員の目にとまりやすくなります。
パソコンや書類などにタイムレコーダーが埋もれないように、目立つ場所に壁掛けにしたり、専用棚を設けたりする方法も有効です。
従業員の視界に入りやすい場所にタイムレコーダーを設置すると、ほかの作業に気を取られてしまうことによる押し忘れを防げます。
②始業前・終業後にタイムカードをチェックする
打刻の有無をチェックする担当者を決めて始業前・終業前にタイムカードを確認することで、押し忘れを防止できます。
担当者によるチェックを行うことで、打刻漏れがあった際にその場で修正対応ができるようになります。この対策法は、始業・終業時刻が同じ固定勤務や決まったシフトパターンで働く職場において採用しやすいといえます。
日替わりや週替わりでチェックの担当者を決めて、タイムカードを確認する立場を経験させることで、打刻に対する意識の向上にもつながります。
③早出・残業の事前申請制度を導入する
早出や残業を行う際に、事前申請制度を導入する方法があります。
事前申請制度を導入することで、申請があった従業員のタイムカードが適切に打刻されているか、申請内容と異なる点がないかなどを管理者があとからチェックできます。
また、事前に管理者へ申請してもらうことで、管理者がいない状況でも労働時間を把握できるようになり、残業代の正しい計算が行えるようになります。
④打刻方法をデジタル化する
タイムカードによる打刻方法をデジタル化することも一つの手段です。
▼デジタル化した打刻方法の例
種類 |
具体例 |
ICカード |
従業員を識別できるICカードによる打刻 |
勤怠管理システム |
指紋認証やパソコンのシステムへの打刻、 スマートフォン用アプリケーションでのGPSによる打刻 など |
打刻方法をデジタル化することで、紙媒体のタイムカードよりもスムーズに打刻を行えます。出勤・退社の時間帯にタイムレコーダー周辺が混雑するのを防げるため、押し忘れの防止につながります。
また、打刻の際に従業員自身の指紋やアカウント情報を要求することで、不正な打刻を防ぐ効果も期待できます。
パソコンまたはスマートフォンなどから打刻できるシステムを利用すれば、外回りや在宅勤務をする従業員の勤怠状況をリアルタイムで把握することが可能です。
労働時間の把握には日々のシフト管理も重要
法令に基づいた労務管理を行うには、勤怠の記録だけでなくシフトを作成する段階から労働時間を管理することが重要です。
シフト制を採用している現場では、従業員によって勤務する曜日・時間帯が異なるため、労働時間の管理が煩雑化しやすくなります。シフトを作成する際は、従業員一人ひとりの労働時間が法令を遵守しているかどうかを確認する必要があります。
労務管理に沿ったシフト管理を行うには、『シフオプ』の活用がおすすめです。
シフオプは、オンラインでシフトの収集・作成・共有ができるシフト管理システムです。シフトの作成時に労務違反のリスクをチェックして、問題がある場合にはアラートが自動で表示されます。これにより、残業や長時間労働、深夜労働などの状況を把握したうえでシフトの調整を行えます。
また、作成したシフトデータは、ほかの勤怠管理システムに取り込むことも可能です。シフトの内容と実際の労働時間が異なっていないか突き合わせを行えるため、タイムカードの押し忘れを早期発見・修正できます。
シフオプの詳しい機能については、こちらをご確認ください。
まとめ
この記事では、タイムカードの押し忘れについて以下の内容を解説しました。
- タイムカードの押し忘れが起こる原因
- タイムカードの押し忘れによる企業へのリスク
- 従業員がタイムカードを押し忘れたときに企業が行う対応
- タイムカードの押し忘れを防ぐ対策法
- 日々のシフト管理の重要性
タイムカードの押し忘れが起こると、正確な労働時間が分からなくなり、労務違反に関するトラブルにつながるリスクがあるほか、修正・事実確認のために人事労務担当者の負担が増加しやすくなります。
このような問題を防ぐには、タイムレコーダーの設置場所を変えたり、担当者によるタイムカードのチェック体制を整備したり、打刻方法をデジタル化したりする対策が有効といえます。
また、労務違反を防ぐには、勤怠の記録だけでなく日々のシフト管理によって労働時間を把握することも重要です。
シフト作成システムの『シフオプ』には、従業員一人ひとりの出勤日や労働時間を可視化して、リスクの高いシフトにアラートを表示する機能が備わっているため、労務違反を未然に防げます。ほかの勤怠システムとの連携にも対応しており、労働時間の実態を把握するのに役立ちます。
詳しくは、こちらの資料をご覧ください。